『グリル梵』大好きだったお店に二十年ぶりに行きました。
ブログ開始以来、映画の話をひたすら書いてきましたが、映画の舞台になっているお店の話はしたことがなかったので今回はそんな話を書いていきます。
おそらくは室内シーンのみでしょうが、大好きなお店の話です。本日は二十年ぶりに大阪の新世界のある洋食レストランにお昼を食べに行ってきました。
そもそも昨晩、蚊のせいで眠れなくなり、何気にストビューを見ていたら、かつて食べに行ったことのあるお店がまだ営業していることを知り、無性にヘレカツカレー煮込み(関西ではフィレ肉のことをヘレと言います)を食べたくなったからでした。
さすがに代替わりをして息子さんの代になっていると思っていましたが、なんとマスター(たぶん70代後半か80歳超え!)もまだ現役でお店に出ていて、健在そうで嬉しくなりました。
マスターの奥さんは静養中とのことで心配ではあります。今では息子さんががんばって三代目となり、若奥さんと切り盛りされています。マスターは接客とレジを担当していて、マスコットみたいで微笑ましい光景です。
調べてみると銀座や梅田堂島の方まで進出を果たされているようで息子さんたちが経営しているようです。ここまで書けば、関西の洋食マニアであれば誰でもご存じかと思いますが、お店の名前はグリル梵です。
心斎橋のばらの木とともに大好きな洋食レストランのひとつです。土地勘のない一見さんが迷わずに行くのはかなり難しい立地で営業されていて、かつて通っていた頃は途中の道でよく梵さんの場所を尋ねられ、案内がてら一緒に連れていってあげたこともありました。
そんなお店ではありましたが、転勤や引っ越しを繰り返すと、お店に行くまでの距離が遠くなったり、交通費がかさんだりするとどうしても行きにくくなってしまい、気がつくと二十年もの月日が経っていました。
幸いまだ営業されていたので、有給を取って、本日食べに来ています。近くには『エロ将軍と二十一人の愛妾』『徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑』など今や名画座の定番人気プログラムとなっているカルト作品をバンバン掛けていた、だるまや越源がある路地裏の映画館などの様子を久しぶりに見たいなあと思っていましたが、既に無くなっていてホテルが建っていました。
兵どもが夢の跡に悲しくなります。諸行無常の様を眺めつつ、感慨に耽っていました。まあ、端から見れば、おのぼりさんにしか見えないのだろうなあと自覚しつつの散策です。
かつて通っていたお店は既にほとんど無く、彼らを知っていたであろう街の人々も既に誰もいません。僕が知っていたお店もチラホラ残っていますが、看板だけでシャッターは閉まったままですので、今でも営業を続けられているのかは定かではない。
たしか、グリル梵の休日は水曜メインの不定休だと記憶していました。今回は便利な世の中になり、あらかじめネットで予習して確認すると、6日並びで16日と26日がお休みで、土日に掛かると振り替えられているそうです。
だったら、今回は大丈夫かなあと思いましたが、もしかしたらの臨時休業に備え、串カツだるまか八重勝さん、越源さんもありかなあとぼんやりと考えを巡らせていました。
新今宮の駅から、かつて自分が歩いていた街を通天閣を中心に回ってきましたが、なんだかやけに看板が派手でデカい串カツ屋ばかりになってしまい、労働者の街だった新世界はすでになく、外国人観光客ばかりで情緒は無くなっていました。
それと気づいたのはかつては自転車が行きかい、酔っ払いが白昼でも千鳥足でウロウロしていましたが、仕事が無くなったこの街にはもはや用事がないのか、まったく見かけませんでした。生活感が皆無の街になっています。
前々から営業していた八重勝(今日は工事中でした)、てんぐ、だるま、近江屋、やっこ、越源さんなどは今も健在でしたので頑張って欲しい。
それならばとジャンジャン横丁に足を進めていくとまだこちらは昔から営業されている八重勝やてんぐ、ホルモン道場、千成屋珈琲(閉店したはずですが、復活したようです)などの店舗がまだまだ多く、かつての面影が残っていて、ホッとしました。
梵さんの話に戻します。すり下ろした果物(たしかメロンだったような…)をカレーに加えることでほんのりとした甘味と酸味を出し、果物の甘い香りとスパイシーな香辛料の香りが一体となって鼻と舌に攻めてくるカレーは健在で、どんどん胃袋を満足させて行きます。
サクッとくるパン粉(これはパンをジューサーにかけ、粗い粉状にして衣に使っている。パン粉が絶品!)でくるまれたビフカツは美味しく、付け合わせに頂けるオニオンスープの優しい味は格別で、懐かしく幸せな時間が過ごせました。
だるまもそうですが、パン粉の衣に包まれたカツは各お店によって特徴があり、ぼくはグリル梵さんとだるまさんの衣が大好きだったのです。
二十年ぶりのカレー煮込みを一気に食欲の進むままに食べ続けました。食事をしていて、満腹になりながらも、久しぶりに食べ終わるのが残念な気持ちになりました。味わいつつ、無くなるのが惜しいという矛盾した感情です。
当時大好きだったヘレカツカレー煮込みとライスは基本的には別々に分かれて注文するのですが、昔は多いときには一週間に二回ほど通っていた(食べ物に関してはぼくは贅沢なのです)ため、本来はやっていないカレーライス形式にして、ライスの上に美味しいカレーをかけてくださるなど無理も聞いていただきました。通常はサラダも一緒のお皿で出てくるのですが、カレーライスにしてもらったので今回は別皿で出してもらいました。
今回も無理を言って、昔通りにカレーライスとして盛り付けていただきました。二十年前の頃はお昼時のお客さんのピークを過ぎてから来店して、のんびりと食べていると上品なおかみさんが「さっきハムもらったから、付け合わせにサラダに入れとくから食べてね!」とかおっしゃっていただくなど、毎回楽しく食べていました。良い思い出です。
このお店は映画の撮影にもたびたび使われ、今は亡き若山富三郎のかっこいい写真(『王手』の写真)が飾られていたのを思い出します。食べていた時にもたまに俳優さんや芸能人の方が来ていました。名前を出すのは迷惑がかかるかもしれませんのであえて書きません。
昭和が終わってからすでに三十年近くが経過しており、そろそろ有志でお店が映画に登場しているリストを作るべき時期に来ているかもしれない。登場する映画をご存知の方がいらっしゃいましたら、どんどんみなで情報を共有していきましょう。
名店ですので様々な方が訪れます。ただし撮影中だったり、お忍びで来ていても声掛けしたり、騒がないのが暗黙のルールなのでもし見掛けても、知らないふりや気づかないふりをしていました。
関西の名店と言われるところは俳優さんやスポーツ選手が来店するところが多々ありますが、どこも騒がれるのは他のお客さんにも迷惑でしょうからルールは守りましょう。
さて二十年ぶりに再会したヘレカツカレー煮込みはぼくにとっては懐かしの味で、しみじみと嬉しくなりました。変わらないねえと言いたいところですが、じつは改良が重ねられていているでしょうし、むだに贅沢になってしまったぼくの舌も大いに満足しました。
変わらないねえと言えるのはそれだけお店の方の努力が続けられているからこそなのです。あちらは覚えてはいないでしょうが、ぼくは老夫婦との思い出がよみがえる幸せな午後を過ごさせていただきました。
不思議だったのは三代目の若奥さんがマスターの奥さんに面影がどことなく似ていることで、思わず娘さんですかと声掛けをしました。お店の味に再会するまで二十年もかかってしまいましたが、次回の来店はすぐ先になりそうです。
だってビーフシチューやハンバーグも食べたいしなあ。ヘレカツサンドをお土産にしたいところでしたが、35度を超える猛暑なので今回はお預けにしました。また行くモチベーションを保つにも良いチョイスだったと思います。
味に☆☆☆☆☆
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