良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ゴジラ FINAL WARS』(2004)アクションゴジラの可能性は?

 『ゴジラ FINAL WARS』は2004年の作品で『ゴジラVSデストロイア』が公開されてから9年、『ゴジラ ミレニアム』が突如公開されてから5年後に公開されました。  監督はアクション系に手腕を発揮していた北村龍平が起用され、それなりに話題を呼んでいました。VSシリーズもデストロイア戦で終了し、平成ゴジラが溶けてなくなりましたが、生き残ったジュニアを使い、新ゴジラとして登場させたのでしょうか。  それはともかく、1999年のミレニアムはたいして話題にもならず、ファンも醒めた目で見ていたヘドラ後の頃のアウェイ感が甦っていたような記憶があります。  ゴジラ映画に限らず、特撮映画の要点は本編の出来、つまり人間ドラマの完成度で決まります。ここに説得力があると見ごたえのある作品になりやすく、そこが適当だと怪獣相撲映像になってしまう。  会議シーンが異常に多い『シン・ゴジラ』は子供にとっては難解でつまらない作品に映ったでしょうが、大人世代には受けました。その結果としての日本アカデミー賞の受賞だったのでしょう。  今回の北村版アクション・ゴジラへの賛否はあるでしょうが、見せ方の一つの視点をファンに提供したのは間違いなく、功績と言っても良いでしょう。もちろん好き嫌いはあり、個人的には好きではない。しかしだからといって否定をしたくはない。
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 ゾンビ映画でも昔はヨタヨタしてしつこく気持ち悪いだけだったゾンビが今では圧倒的な走力を持って人間に襲い掛かってくる時代に突入しています。足が長めの造型でないとスピーディな動きは難しいでしょうから、今回は妥協点としての長い尻尾による尻尾ラリアート攻撃に落ち着いたのだろうか。  リアリティがあるのはエメリッヒやジュラシック・シリーズでのクリーチャーのスタイルなのでしょうが、ゴジラ映画は歌舞伎のような伝統芸能の粋に達しているので、正直どうも馴染めない。エメリッヒ版ゴジラもチョイ役ですぐに退治されますが、ちょこっと出演しています。  コメディ要素も強く、アンギラスがサッカーボールのようになり、ゴジラゴールキーパーのような動きをしているのはナンセンスで笑いそうになりました。昔から対へドラ戦で放射能を吹きながら後ろ向きで飛んだり、「シェー!」とやってみたりもしているのでダメ出しはしたくない。  そんな昭和からのゴジラ後期のファンが楽しめる部分を呈示したのが北村龍平監督だったのだろうか。今回は『怪獣総進撃』、またの名前を『ゴジラ電撃大作戦』を思い出させてくれるような顔見世興行に徹して欲しかった気もします。  VSシリーズの『ゴジラVSデストロイア』まではなんだかんだと言いながらも、1984年度版からの繋がりがあり、スーパーXやサイキック部隊の小高恵美、高嶋兄弟の活躍もあったので対G作戦を楽しみにしていました。  しかしながら、『ゴジラ2000 ミレニアム』は設定はどこかに消し飛んでいましたし、この作品にも過去への尊敬の念は見られません。北村監督はおそらくただアクション映画を撮りたかっただけで、特撮は二の次だったのではないか。
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 一応はX星人の設定がありますが、ミステリアスだった水野久美(せっかく本人が出ているのに!)に該当する役割はなく、残念でした。  ギミックのひとつに妖星ゴラスの登場もあり、期待できそうな要素はあるのですが、節操の無い悪ふざけにしか思えないマトリックス的な不自然でしかないアクションシーンはまったく機能しているようには見えない。  母船である巨大UFOとの攻防戦はそのまま『インディペンデンス・デイ』ですし、小型戦闘機が母船内部に入って行って炉心を爆撃するシーンはスターウォーズ・シリーズの伝統芸能です。  ちなみにボスキャラの北村一輝TOKIO松岡との闘いはパルパティン皇帝とルーク・スカイウォーカーを思い出しましたし、戦闘中に覚醒して金色に光るに至っては思わず、「スーパーサイヤ人かよ!」と突っ込みそうになりました。  昔、一度は見ているのですが、まったくディティールを覚えていないのはこの前に見たばかりの『ゴジラ2000 ミレニアム』のときと同じです。  せっかくの顔見世興行の実際の様子は酷く、北村がなぜかゴジラの通り道に一体ずつ懐かしの東宝怪獣を配置して対処させる戦力の逐次投入という愚かな策を取ります。
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 しかも怪獣たちの使い方が雑で、クモンガ、ガイガンゴジラモスラに二敗する)、カマキラス、エメリッヒのゴジラキングシーサー(スラッとしています)、アンギラス(でっかいアルマジロ君でした)、ラドン、エビラ(人間の銃撃でやられてしまう)、マンダ(懐かしのドン・フライによりやられてしまう)など魅力の半分も出さずに退治されてしまう。  またミニラまで登場し、泉谷しげるらと軽トラ(人間の言葉を理解し、ジェスチャーで意思を伝え、荷台ではなく、座席に乗り込んでいるというシュールなインサートまである)で戦場に向かっていく。  ラスボス的に出てくるギドラも圧倒的な強さを見せるわけではなく、やられてしまう。怪獣映画だが、作品の大部分を占めるのは妙に間延びして緊迫感のない格闘アクションばかりで、スローモーションやワイヤーワークばかりが目についてしまう。  お芝居としては新日、UWFパンクラスで活躍した船木誠勝の演技の方がショーン・コスギを上回るという新たな発見がありました。  怪獣の扱いの雑さと微妙なアクション場面の連続が散漫に映る原因でもありますが、これまで何度もこちらで書いてきたように、たとえ傑作ではなかったとしても、ゴジラ映画のない正月よりはあったほうが楽しく過ごせます。  ヤイヤイダメ出しをしながらも、嬉しくてしかたがないという底の本音を読んだ方には分かっていただけると幸いです。なんだかんだ言っても、アメリカ版の『キングコング対ゴジラ』には期待してしまいますもの。  キングギドラモスラとコングがどう戦うのかは興味があります。舞台を南シナ海に移し、勝手に軍事基地化する悪逆な共産党をコングやゴジラが壊滅させることを願っております。サブタイトルは南海の大決闘でしょうね。
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総合評価 48点