『恐怖のエアポート』(1971)機内食で悶絶!ラムorチキン?
1970年代のテレムービーにはたまに驚くほど秀逸な作品があり、有名どころでは『激突!』『ある勇気の物語!孤独のマラソンランナー』などがあります。カルト的な作品では『殺人ブルドーザー』もありますね。
この作品をはじめて見たのは小学生の頃の東京12チャンネルだったと思います。『アストロノーツ』などとともによくプロ野球などの雨傘番組として放映されていました。
毎度語っていますが、現在のCS環境の素晴らしさはファンにとっては申し分ありませんが、お金がない中高生だった僕らには12チャンが与えてくれた雑多な番組は千本ノックのように映画を見るトレーニングになっていました。
ちなみに同じ作品を何度も視聴者に見せるテクニック、つまり邦題を変更する力技を駆使しており、『大空の恐怖』『恐怖のエアポート/墜落飛行・スカイハイからの脱出』と引っかけの術が使われています。
この作品も知名度は低いでしょうし、若いファンにはなじみがないでしょうが、大向こうを唸らせるような派手な演出はいっさい無く、実際に起こったら乗客全員の生命にかかわる事案を前面に押し立てて作品をシンプルに構築していきます。
監督はバーナード・コワルスキーで『怪奇!吸血人間スネーク』『吸血怪獣ヒルゴンの猛襲』などのステキなホラーや刑事コロンボシリーズの数本を担当しています。彼にとってもこの作品はベストに入るのではないでしょうか。
小型旅客機を恐怖に陥れる原因はグロテスクなエイリアンではない。ちょっとのことでギャアギャア騒ぐ迷惑なクレーマーでもない。もちろん過激派のハイジャッカ―でも、凶悪犯でもありません。
ただプロスポーツ(アメフトだったかな?)の応援に行くヨッパライ集団のオッサンたちが大半の酒臭い機内です。まあ、現在では十分にハラスメントに触れるメンツではあります。
それは食中毒を引き起こす機内食なのです。つまり“ぴーぴー”が原因で機長と副機長が気を失ってしまい、“たまたま”乗っていたベトナム帰りのヘリコプターの操縦士(ダグ・マクルーア)が皆の危機を救う。
こうしてあらすじを書いていると「なんだ。つまらないそうだ。」と思うでしょうが、上映時間が70分強と短いことで筋が引き締まっていて、演出も無駄がなくスピーディなために見応えがあります。
現在では航空機に搭乗するパイロットは正と副では違うメニューを選ぶように取り決めがあるようですが、アレルギーとか好き嫌いがある場合は、もしくは宗教上の理由で食べられるかどうかも多様性が各人にあるでしょうから、難しくなっているかもしれません。
本家のエアポート映画がどんどん間が抜けて行き、怪作『エアポート’80』で頂点に達しますが、このテレフューチャーは製作費の少なさ(テレビ用番組なので当然。)や認知度ではほぼ知られていないでしょうが、映画としてのスピリット、つまり面白いものを見せようとする気概はこちらに軍配が上がります。
その昔、ロマンポルノは若手監督の登竜門として機能していたのと同様で、映画を撮りたい若者にとっての試金石となっていたのでしょう。
レンタルで気軽に見ることが出来ますので、TSUTAYAさんやGEOさんに出かけてみましょう。ついでに色々と物色して、まだ見ぬ強豪に出会いましょう。
総合評価 85点