『スターウォーズ/最後のジェダイ』(2017)レイア姫の思い出に…
2016年12月27日は初期シリーズで大活躍したレイア姫を演じたキャリー・フィッシャーの命日でもあり、今回のエピソードⅧではエンディングのテロップに「我々の素晴らしい姫君であるキャリー・フィッシャーとの思い出の中に」と流れてきたときにはグッときました。
ディズニーの配慮なのでしょうが、今回はオープニングだけでなく、エンディングでもお約束のディズニー城の映像もなく、音楽が終わると暗転してそのまま終演となりました。
おそらくスターウォーズのマニアへの配慮だったのでしょうが、オープニングはともかく、エンディングには会社として提供をしているわけですから忖度は不必要ではなかろうか。
最近はなかなか年の瀬ということもあり、更新もままならない状態になっております。近況からですが、20年近く前から時々通っていたものの、しばらく足が遠のいていた近所のコーヒー豆の専門店に久しぶりに行ってみたところ、すぐに異変に気がつきました。
老夫婦で切り盛りされていたお店でしたが、奥様がたぶんアルツハイマー病を発症されているようでした。優しいご主人とお店に出ておられましたが、お客さんがくるのが楽しいようで、ぼくにも話しかけてくれました。
昔は通っていた際にいろいろお話をしましたが、子供に帰られたようで覚えておられないようでしたがそれは仕方ない。ご主人も大変でしょうが、なんとか無理をしない範囲でぼくらに美味しいコーヒー豆を届けてほしいものです。
さらに先週は義理の叔父が63歳で亡くなったこともあり、葬儀に参列した関係で実質上の休みが無くなり、なかなか劇場まで足を運べない状況ではありました。
ようやく今日は来れそうだったので、気分転換を兼ねて何を見ようかなと映画館のサイトをチェックしました。なんと言っても、まずはスターウォーズの新作が中心の年末年始ラインナップです。
年末の繁忙と葬儀で忙しく、公開初日に行くことは叶いませんでしたが、出来るだけ早めに観に行くつもりだったので、仕事が終わってからの上映です。
今回の目玉は前回のラストシーンにちょこっとだけ登場したマーク・ハミルでしょう。なんかだいぶふくよかになり、ハムスターみたいな感じになりましたが、かつての面影はかろうじて残っています。
スターウォーズ以降は彼のキャリアは低迷が続き、ザ・シンプソンズにネタとして登場したこともありましたが、今回はホーマー・シンプソンをボディガードとして伴わず、単独でかつてのオビ=ワンと同じような役どころになっており、古くからのファンには感慨深いはずです。
最初にマーク・ハミルが大活躍する『スターウォーズ』を見てからすでに35年(オリジナル第一作目が公開されたころ、小学生の低学年でしたので観に行けませんでした。『帝国の逆襲』は観に行けました)近くも経っていて、小学生だったぼくらも50歳手前に来ています。既に亡くなった友人もいますので、それだけ長い月日が過ぎてきたのでしょう。
前作でハリソン・フォード演じるハン・ソロが殺害され、公開後にはキャリー・フィッシャーが亡くなるなど暗い話題が多く、ファンも寂しい状況でしたので、今や御大と呼ぶにふさわしい立派な体格の代表取締役のようなマーク・ハミルを見るとホッとしました。
作品自体は『帝国の逆襲』と同じく、次回の完結に向けて試練が待ち構える辛い展開にしか成りようがないエピソードの構成です。これはすべてが大団円に向かうためのスパイスなので受け入れざるを得ません。
見どころとしてはマーク・ハミルが出てくる全場面でしょう。他には裏切り者と思われていたホルド提督の真の意思と散り際のハイパードライブを使っての特攻シーンは見逃せない。
裏切者キャラとして登場するべニチオ・デル・トロはかつてない異色の描かれ方をしていて、最終作でどのような末路をたどるかに興味があります。
アダム・スナイパー絡みでは母の乗る旗艦艦橋への攻撃を躊躇するシーンは彼の葛藤や苦悩を表していますし、かつてのベイダーよりも複雑な人物像が浮かび上がってきます。
スノークを殺害した後にデイジーとともに真っ赤な装束が厳めしいエリート・プレトリアン・ガード集団と激しい太刀での格闘を繰り広げるシーンは迫力があります。
最高指導者になってからは全軍に命じてAT-ATによる全弾集中攻撃をマーク・ハミルに浴びせ、爆発の煙の中から彼がゆっくりと歩いてくるシーンの凄み(あとで幻影だと分かるので、そりゃそうだ!!となりますW)とアダムとマークの一騎打ちには高揚しました。
R2D2やチューイにも見せ場があり、ダドリーの望みを拒否し続けるマーク・ハミルに対し、ドアをぶち破って助けを依頼するチューイには笑わせてもらいました。R2とマークがファルコン号で久しぶりの再会を果たすシーンはファンには嬉しい。
かつてキャリー・フィッシャーがアレック・ギネス(オビ=ワン)に助太刀を頼むときのホログラムを出したりするR2を見るのはオールド・ファンには堪らない。
今回の惑星で興味深いのはカジノの星であるカント・バイトでしょう。正装して着飾ったエイリアンたちがフォーマルなのに全員が醜く見えるのは偶然ではなさそうです。セリフにも金持ち批判が出てきますが、しょせんは底が浅いし、ハリウッドやディズニー自体が富裕層なので茶番でしかない。
最近のハリウッドで毎度違和感があるのがやたらと増えている中国系のキャストです。物語世界にさしたる影響を与えないにも関わらず、やたらと露出が多く無意味な存在でしかない。
カジノシーンだけででなく、映画のあちこちに中国系と思われる人々がチョロチョロしていますが、無意味なのでクリーチャーやエイリアンで固めて欲しい。
今回の新たなキャラクターの中で進行の邪魔だと思えたのは下っ端の整備工?(ケリー・マリー・トラン)でした。こいつがなかなか死なない。しかも可愛くないし、魅力的とも思えない。
ジョン・ボイエガはこいつの訳の分からない愛情(?)のせいでキャノンへの特攻が失敗し、レジスタンス基地が破壊される原因を招くきます。
戦局を変える特攻シーンがあれば、アクション構成上の見せ場になるはずでしたが、記憶に残るヒーローになり損ねてしまいました。
軍法会議で銃殺するか、サルラックの餌になるべき輩ではないか。もっとも特攻も止めるように言われてはいました。その他の中国系キャストの起用についてはお金やマーケティング上のことなのでしょうが、正直言ってかなり見苦しい。
このシリーズのメインキャラであるアダム・スナイパーののっぺりした顔にはだんだん慣れてきましたし、ヒロインのデイジー・ダドリーの面影はエピソード1で活躍したナタリー・ポートマンを彷彿とさせてくれることもあり、好意的に受け入れています。
この二人はジェダイの光と闇を体現していて、二人で一人なのではないかという印象です。やっぱり兄妹なのか、デイジーはルークの娘なのか。
話の筋はかつてのエピソードⅣからⅥの焼き直しばかりなので目新しさはありません。洞穴や洞窟の暗黒面の試練もヨーダがハミルをけしかけていました。鏡のような場面は『上海から来た女』のリタ・ヘイワースを思い出しました。
言い換えれば、歴史は繰り返すとまでは言いませんが、似たような構造になるということでしょう。イウォークに相当するのであろう鳥みたいなポーグ(ピカチュウかよ!)やポケモンみたいなヴァルプテックス(銀キツネみたいなやつ)には賛否両論あるでしょう。
じっさい、お人形やグッズにはヨーダ、3PO、R2、ストーム・トゥルーパーらレギュラー陣に混じって、新顔のポーグが大量に量産されてお土産売り場に陳列されています。
マーク・ハミルがセイウチみたいなクリーチャー(タラ・サイレン)の母乳を旨そうに飲む様子に「うえーっ!!」となっているダドリーやチューイがポーグを丸焼きにする下りはブタがしゃべるコメディ『ベイブ』のブラックな皮肉を感じるような演出がスパイスが利いていて良い感じです。
ディズニーもこれくらいならやれるのですね。マーク・ハミルの食生活は割りと貧相で、エピソードⅣでもルー叔母さんが団欒に用意した衝撃的な青っぽい液体を飲んでいた以来の驚きだったかもしれません。ルーおばさんは美味しいカントリーマアムを焼きそうなんですがね。
気になったのは離れ小島でのマーク・ハミルとデイジー・ダドリーとの暗闇での邂逅シーンでのカット割りに違和感があったこと、ハイパー特攻を受けているにもかかわらず、戦艦が爆発もせずに敵兵が壊滅状態の中、潜入した反乱軍は全員生き残っているなどご都合主義が徹底されていて、白けてしまう。
せっかく『ローグⅡ』で全員を玉砕させるハードボイルドな演出をやってのけたのに残念な甘口&ことなかれ主義でした。
そして、ついにマーク・ハミルまでが死への旅路に着いてしまいましたので、ぼくらの時代から生き延びているのはチューイ、R2、3POだけになってしまいました。
アクバー提督も鑑と運命を共にしたようですし、両陣営共に新旧交代の時期を迎えています。意外に呆気なく、子飼いの弟子(アダム)の裏切りで刺し殺されるという失態を演じた悪の親玉だった最高指導者スノークの見せ場は若い女をいたぶるだけという腰砕けのジジイのようでした。
上映時間は150分以上と長くなっていますが、ずっと見続けている映画ファンとしては全く気になりませんでした。ただ主要な戦闘シーンがライトセイバーによるチャンバラというのはジェダイ劇を強く意識した構成なのは分かりますが、今でも必要かどうかは何とも言えない。
なんやかや言っていますが、ファンのはしくれとしてはどんな仕上がりでも必ず観に行くので常にフォースとともに劇場には馳せ参じます。ただ今回劇場で閉口したのは予告編で今作の場面をブツ切りにして映像を出してしまっていて、何度も繰り返すのが本当に余計でした。
劇場はもっとこれから本編を見る観客を意識すべきでしょう。ついでに外伝物は今後どんどん公開されるのは明らかで、来年は若き日のハン・ソロの活躍を描く作品がリリースされるようです。
しまいにはIG-88、4-LOM、ボバ・フェット、ボスク、デンガー、ザッカスら賞金稼ぎ6人衆やジャバ・ザ・ハット、ヨーダに焦点を当てた作品でも作りそうな勢いです。
今回のエピソードは予想通りに別れのシークエンスが多い作品でした。勇猛果敢で若かった者も衰え、老いていき、息絶える。ヨーダがまた精霊としてマークの前に顔を出す。
次回の最後は『ジェダイの復讐』のラストの宴会シーンのようにヨーダ、アナキン、オビワン、ルーク、レイア、そしてジェダイではないがぜひともハンも入れて精霊としてデイジーを見届けるシーンだと良いなあ。
個人的には敵側戦車であるAT-ATが地面や雪上を闊歩しながら反乱軍を蹴散らしていく豪快な攻撃シーンを再び大画面で見られただけでも嬉しい。
今回のエピソードⅧに関してはマーク・ハミルを再びスクリーンで活躍させてくれただけで十分に意義があったと言えます。
総合評価 72点