良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『戦場のメリー・クリスマス』(1983)この作品の主役はビートたけしである。サントラは最高。

 大島渚監督の1983年度公開作品であり、個性的だった事もあり、大変話題になった作品でした。既成の俳優よりもデヴィッド・ボウイ坂本龍一ジョニー大倉など個性的なミュージシャンやビートたけしのようなコメディアンを使う事で、非人間的かつ没個性的な軍隊の中での各登場人物たちの個性がきちんと描き分けられています。  それにしても、今となってはとてもなつかしいですね。中学生当時に公開されたのですが、なんと学校からの指定で「この映画は観にいってはいけません」という圧力がかけられました。まあ、ホモセクシャルな世界や日本軍の暗部や在日朝鮮人の軍属への差別を、これでもかと見せ続け、暴力シーンも、かなり「えぐい」レベルだったためなのかもしれません。このへんの描写は大島監督らしい個性でした。良し悪しは別にして、監督の意志の強さを感じさせるショットが数多く見られます。    そう言われるとますます観たくなり、行って来ました。美しい、とても美しすぎる坂本教授の名曲『メリー・クリスマス・ミスター・ローレンス』が、この作品自体のレベルを2ランクくらい上に押し上げています。ピアノだけのテイクもあり、どちらも大好きです。  当時、この作品のサントラ盤と、シングル・レコードを買ったとき、ヴォーカルつきのものがあり、それはイギリスのグループ、ジャパンのデヴィッド・シルヴィアンと教授のユニットで『禁じられた色彩』の名前で発売されていました。インストも歌入りも両方持っています。だって当時はYMOが大好きで、全てのLP盤を持っていたので、映画のほうも音楽目当ての方が勝っていました。    映像的に今でも覚えているのは、捕虜や下級兵士、在日の兵隊への虐待の様子、最も有名な教授とボウイのキス・シーン、そしてあのラストシーン。「たけし最高!」と思いました。出演者の中でボウイ、たけし、教授、ジョニー大倉と、俳優ではない人たちを多く主戦級で使い、あれだけの作品に纏め上げたのは監督の手腕によるところが大きいのではないでしょうか。20年以上経っても、なおこれだけ記憶に残っているのですから当時はもっとインパクトのある作品でした。  脚本がグダグダだという意見もあるようなのですが、これはストーリーを追う映画ではなく、ショットやシーンを感覚で見るヨーロッパ的な作品でしょう。「写真」として綺麗な作品であり、個人的には、この大島監督の感覚が好きです。決して名作と呼ばれる事はないかもしれませんが、記憶に残る作品なのです。 総合評価 76点 戦場のメリークリスマス
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