良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『夜と霧』(1955)上映時間は僅か30分。戦争の狂気とは何なのか。目を背けてはならない。

 アラン・レネ監督による1955年度監督作品であり、カメラによって淡々と狂気を語られると、その迫力の凄まじさは、より一層我々の心に響いてきます。第二次大戦後の六十周年に当たる去年は、わが国の戦後へのけじめも含めて、いろいろと話題になりました。  正味30分強のこの作品ではありますが、いつまでも忘れられない、否、忘れてはならない残酷な映像が武骨に編集されていきます。短編作品だとどうしても軽視されてしまい、長編映画に高い評価を与えがちではありますが、この作品の長さはこれでちょうど良いのだと思います。これ以上長いと、そのテーマの深さや重さに耐えられなくなります。  作品映像は冷たく、淡々と進行していきますが、この冷静な視点により、むしろナチス・ドイツの残虐性への怒りだけではなく、同じ人類として、このようなおぞましい所業をなしてしまった嘆きを感じました。人種、国籍に関わらず、すべての国には戦争の歴史があり、革命やら、戦勝の実際の様子は集団的な殺戮、虐殺、差別、粛清でしかない。  ただ単に、ナチスへの抗議というだけの意味ではない、人類自体への警鐘と捉えました。収容所の壁のこちら側と向こう側で、地獄と天国が分かれる恐怖は、見ないと理解できません。60年前はそこには地獄が存在していて、多くのユダヤ人たちの人権が蹂躙され、人体実験に使われ、殺され、焼かれ、ブルドーザーで埋められるなど家畜以下の扱いを受けました。  現在のユダヤ人収容所跡地には、緑の草木が青々と生え、生命を育んでいますが、過去を知る我々にとっては、もっとも不気味な映像が、多くのユダヤ人の血をすすった、この青々とした緑でした。なにせ、これらの草木の下に死体が埋められていたという現実があるのです。まだ掘り返されていない、戦後が終わっていない亡骸もいまだに何処かで眠っているに違いありません。  だが、これはあくまでも戦勝国側から撮られている作品である事も忘れてはならない。フランス人監督、アラン・レネの撮った作品なのです。フランスというと、ナチスへのレジスタンスの歴史ばかりが強調されています。  しかし一方で、当時のフランスのリーダーだったぺダン元帥はナチに協力したために、戦後は戦犯として裁かれました。レジスタンスばかり、つまり光の部分は強調するが、陰の部分はまるでそんな歴史などなかったかのように話題にもしない。  所詮、勝った方はどのようにも歴史を修正、もしくは隠蔽できる権利を持つということでしょう。第二次大戦のすべてが、わが国にとって、都合の悪い事ばかりではなく、良い事も含め、世界に示されるのは、「第三次」大戦の戦勝国に名を連ねるまで待たなくてはなりません。ここで負けると、まだこのまんまでしょう。  戦争で必要なのは勝利だけであり、敗戦は国の歴史を否定される事になります。負けたから悪いのです。内政干渉、領土侵犯など目に余る行為があったとしても、負けたら何も言えないのが国際社会の厳しい現実です。  他国が理解や同情を本心から示すはずなどありません。そこには常に、いかに他国を、自国の利益のために利用するかという視点しか存在しないという現実を教育するのが、政府とメディアの責任である。  話は戻りますが、このユダヤ問題は、ナチスのみでなくヨーロッパ全体の歴史の恥部であり、わが国の対中及び対韓の歴史の恥部とはまた違った問題です。あくまでも個人的な意見ですが、賠償問題も含めて、するべきことはきちんとしていかねばならない時代に入ってきているのではないかと思っています。  ただあくまでも、わが国がペースを握るべき問題であって、他国にどうこう言われる筋合いはないし、そんな事をいちいち採り上げるテレビ朝日を筆頭にする左翼的マスコミの報道姿勢には、自分が何処に住んでいるのかという視点と、何が自国の利益につながるのかという視点がまったく欠落している。  個人あっての国ではなく、国あっての個人であるという体制側の自明の理を知りながら、「自由」という名の甘いオブラートで包み込み、誤った方向に国民を誘導するマスコミのくだらなさや、紋切り型の報道には怒りが込み上げてきます。  国内の問題が山積している今だからこそ、戦後体制そのものの見直しをする時期に来ていると、最近特にそう思います。今回は少々政治的かもしれませんが、たまにまじめに考えて見ました。そういう意味ではいろいろと考えさせてくれる良い映画でした。  日本の地上波でも、こういうの増やすべきではないでしょうか。学校や職場でこういうことの話をしていくのも日本が真の意味で国際貢献していくための教材になると思いました。  国際貢献とは良い人ぶることではない、外国語がしゃべれるからコミュニケーションが取れているわけではない。形だけで中身が伴わない理解は誤解を生み出すのみであり、むしろ相互無理解の方がましである。 総合評価 85点 夜と霧
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