良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『億男』(2018)ファウストをちょこっと思い出す、お金をめぐるお話

 休日によく通っているインド料理屋さんに行ってみると、店内いっぱいにインド人観光客が溢れかえっていて、今日は無理なのかなあと入店を戸惑っているとお店の方が僕を見つけてくれ、「インド人と同じバイキングだったらイケるよ!」と声をかけてくれました。

 ローティやベジタブルメニューで普段から鍛えられている僕にとっては願ってもない状況となりました。パコラ(揚野菜。天ぷらみたいなもん)やシシカバブ、数種類のカレー(ベジタリアン用とノンベジ用があります)などインド人が普段食べている家庭料理が出てきました。

 お米も細長いインディカ米みたいなヤツでこれがサラッとしていてカレーとの相性がバッチリで楽しませてもらいました。観察していると向こうの人たちはヨーグルトが大好きみたいで美味そうに食べています。

 ここのお店は料理人のスタッフが全員インドの人たちでオーナーもインド出身の方です。彼(オーナー)が昼下がりに食べているモノを見て、「オレもあれ食べたい!」という会話をよくしています。

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 ナンの甘さとふわふわ食感に慣れている日本人には素朴に思えるローティはパリパリに焼いてもらうと香ばしく、とても美味しい。口に合う、合わないがあるようで仕切りを任されている女性マネージャーに話を聞くと、合わないという人も多いそうです。

 今日は団体客が立て込んでいるそうなのでインド産コーヒーで食事を締めて、本屋さんに向かいました。小説コーナーで目に止まったのがこの『億男』でした。

 最初の数ページを読み進むとチャップリンの傑作『ライムライト』のセリフが出てきたので興味が増し、すぐにレジに進みました。兄弟の借金を肩代わりしたために家庭が崩壊した主人公が商店街の福引で当たった景品の宝くじで三億円当たってしまい、どうして良いか分からなくなるところから始まります。

 かつての親友に相談するも、有り金すべてを奪われ、彼を探していくうちに、彼に関わってきた人たちからお金と幸せの意味、両者のバランスを反面教師として学んでいくというスタイルを取っています。

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 まあ、言ってみれば、より俗物的なファウストの地獄旅みたいな感じでしょうか。「止まれ、お前は美しい」と口にしたファウストメフィストフェレスに生命を奪われる寸前でかつて愛した女性に救われましたが、主人公もバレエを頑張る一人娘に助けられます。

 生活とは切っても切れないお金という人類の発明品が持つ人によっては苦しみになったり、幸せになったりするさまをあぶり出し、主人公の判断の糧になっていく。

 中盤にかけてまではグイグイ引き込まれて行きますが、残念ながら後半一気に失速してしまう。映画化されるようなので、小説とは違う幕引きを期待しますし、原作では失われていた後半まで緊張感を持続させてほしい。

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 映画ネタとしてはベルトリッチの『シェルタリング・スカイ』も出てきます。いわく「観光客は着いたときに帰ることを考え始めるが、旅人は帰らないこともある」「あなたはただの観光客だけど、私は旅人でもあるのよ」も興味深い。

 セリフで語られるこの作品に関しては、どの映画というのは原作では示されないが、どこかで聞いたことがあるなあと思い巡らすとたしかこの映画でした。

 そんな作品が今年の10月公開で映画化が決まり、主演に佐藤健(一男)、高橋一生(九十九)、お金の案内人(百瀬、千住、万佐子、十和子。だれがどの役かは判明していません)として藤原竜也北村一輝沢尻エリカ池田エライザらが出演するようです。

期待度 60点

 

億男

億男

  • 発売日: 2019/04/08
  • メディア: Prime Video