良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『カメラを止めるな!』(2018)モットーは早い!安い!質はそこそこ!

 我が家の録画機器がDVDレコーダーからBlu-rayレコーダーに変わったのが2009年、地上デジタル放送が始まってからもう10年近くになります。格段に進化した録画機器とテレビですが、反面薄型に変わったためにスピーカーはスペックが落ちた印象がありました。

 ホームシアターとか後付けで工夫する余地があると好意的に解釈します。まあ、自分の家で普通に楽しむ分にはそれほど不満はありません。ただ、さすがに10年近く、普段から使いまくっているので、レンズ・クリーニングしても改善しないようになっており、レンズ等にそろそろ限界が迫ってきているようです。

 今買うなら、4Kだか、8Kだかに対応したモノを買わせようとしますが、ボクも五十代に差し掛かってきているので、細部まで見えなくなってきており、それほど高スペックの機器は必要でもなくなってきています。

 そもそもBSやCS、WOWOWなどを見る時間もありませんし、録画もテレビ番組を見たら、すぐに消してしまうことが増えています。

 二十年近く、WOWOWスカパー!に加入していて、ヒマなときに見ようと思って、録画したまま溜まりに溜まったDVDやBlu-rayが1000枚くらいあるカオスな状況に達しています。

 

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 寿命を考えると、そろそろ新作は映画館での新作とTSUTAYAさんでの旧作復刻のみでオッケーでしょう。とりあえずは自宅のBlu-rayレコーダーに入っているデータを再生し、録画するものはして、その作業を終えてから新しいレコーダーに買い換える予定にしています。

 そんなことを思い巡らせながら、ぼくが住む奈良ではようやく今日から上映が決まった『カメラを止めるな!』を観に来ています。

 昨夜は台風が近畿を通り、鉄道各線も早いうちに運休するなどして、会社も早く終わったため、ちょっと嬉しい気持ちもありますが、被害者も居られるので複雑ではあります。

 今朝も一部で間引き運転だったり、普通電車のみの運行ですが、のんびり各駅停車の移動は好きなので気にならない。と言いたいが、桜井線は揺れが酷いので居眠りも難しい。

 てゆうか、1時間に一本しか電車が来ない駅に何故映画館があり、県庁所在地の奈良市に映画館がないのだろう。

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 ここからネタはバレバレですので、観に行かれる方はご注意ください。

 映画タイトルは『カメラを止めるな!』で英語題は『ONE CUT OF THE DEAD』、つまり、ワンシーン・ワンカット長回し撮影で、ゾンビ映画を生放送で成立させるという無茶な企画を描いた作品です。ワンシーン・ワンカットといえば、アルフレッド・ヒッチコック監督が『ロープ』で一本を撮り切りましたが、実験的作品の色彩が強い。

 さて、現在、話題になっているこの作品は著作権侵害問題でもワイドショー中心に興味本位で語られていますが、それを言い出したら、すべてのゾンビ関連はジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』に辿り着くわけですから、原作者を主張されても困惑するでしょう。

 売れたら、急に金を求めて騒ぎ出したのもなんだか胡散臭い。すでに終わった舞台を翻案にして製作された『カメラを止めるな!』が解散した劇団のゾンビを蘇らせたのは皮肉に思えます。ぼくは映画ファンなので、純粋に映画を楽しみたい。

 そもそも漫画や小説、舞台を映画化した作品など山のように製作されたが、上手く行ったと思えた作品はほとんど存在せず、たまたま上手く行っても、このような後付けの因縁をつけるやり方は好きではない。

 本日の難点はTOHOシネマズが勘違いをして、1番デカいスクリーンを用意してしまったことで、こういうパーティ・ムービーを掛けるのであれば、できるだけ狭いスクリーンで掛けたほうが一体感が出ます。200人収容位のところに100人くらいは入っていたので、平日にしてはまずまずなのですが、狭い方がより楽しめる作風の作品でした。

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 『ロッキー・ホラー・ショー』みたいなノリを出していくためにも、ぜひ劇場関係者の方には大きなスクリーン一枚ではなく、2つくらいの小さなスクリーンの一番端っこで狭いところで掛けてほしい。

 さて内容ですが、構成はゾンビ絡みのドラマが劇映画のように流れてから、それを製作する1ヶ月前に戻り、登場人物たちの経緯を語る。そして最後にカメラの反対側、つまり、撮る側に視点を当てて、どうやってドラマ部分を撮影していったのかを明かしていきます。

 楽しいのはこの撮影苦労話のパートで、①低予算②少ない拘束時間③とりあえず作品としては成立させるという下請け三ヵ条を面白おかしく見せてくれます。

 プロデューサーやディレクターの無理と無茶な要求、ちょっと名前が売れただけで横柄な態度を取ったり、わがまま言いたい放題の若手俳優や女優、売れてもないのにクセが強くて扱い難い脇役俳優たちをなだめすかしながら、とりあえず形にしていく様子はどの仕事をしていたとしても、中間管理職には痛いほど染みてきます。

 カメラに写っている映像、つまり僕らが見ているスクリーン上の映像はあくまでも視点が向けられ、切り取られて編集された作品であり、それらを撮っている側のドラマで素晴らしい娯楽作品を仕立て上げた、今年、劇場で観るべき一本です。

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 酔っ払いをそのままゾンビに仕立て、リハーサル時にゲロを浴びたくないとわがままを言っていた若手ペーペー女優役(秋山ゆずき)にホンモノのゲロを顔にぶちまける。

 彼女も印象に残った出演者の一人で、トラブル続きの現場で戸惑う新人女優を熱演していました。前半の映画パートでちょこちょこおかしな“間”で三人芝居をするシーンがあり、不自然さに戸惑いましたが、回収されるとスッキリします。なぜか落ちている斧を取りに行くシーンと取ってつけたようなセリフの言い回しが良かった。

 ヨッパライゾンビは迫真の夢遊病のような足取りで襲い掛かりますが、後ろから監督が二人羽織のようにカメラの構図内で収めています。

 屋上でのアドリブを交えたアクションシーンでは無茶なトバッチリで起きるクレーンの故障というか損壊が発生するも、カメラを止められないので、動けるスタッフや出演者を総動員し、まさかの人間ピラミッドを組み上げることで高さを出して、無事に撮り終ると皆に一体感が生まれるシーンは気持ちよい。

 中盤でゴチャゴチャ監督の演出にイチャモンをつけていた俳優たち(長屋和彰ら)をアドリブという名の本音で圧倒していく監督親子が躍動し、濱津隆之の監督、反抗的だが最後は現場を取り仕切る娘役の真魚しゅはまはるみのお母さん兼メイクさん(ぽん!)の活躍が楽しい。

 幼少期の娘を肩車していた写真を今でも大切にしている父親が最後のクレーン装置を使うはずだった演出時に娘を再び肩車をして、娘に撮影を任せるというカットはホラー映画に相応しいかは分かりませんが、なぜかほのぼのとホッコリします。

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 ゾンビ映画を撮っている監督ら撮影班を撮っている撮影者も存在しているのが本当のエンディングで出てきます。入れ子構造を複数仕込む脚本の勝利でしょう。

 撮影と言えば、ゾンビ映画撮影中にカメラの視点が急に地面に置かれたまま、十数秒動かなくなるカットがあります。最初はカメラマンがゾンビに殺されたのかなあとか思いながら、ゾンビカメラマンがそのあとを撮っていたのだろうと想像していましたが、第三場面である撮影者たちによるメイキングのような視点になった時にカメラマンがぎっくり腰でダウンし、助手が急きょ手持ちカメラで張り切る様子が分かり、これも笑えるポイントになりました。

 存在感が際立つオバチャンプロデューサー(竹原芳子)は一度見たら、なかなか忘れられない顔立ちで、てなもんや三度笠に出ていた白木みのるを思い出しました。しばらくロングランで上映されそうですが、ウチの近所でも掛けてほしい。たぶんTSUTAYAさんとかでレンタルが出てきたら、ずっと貸し出し中になるのは確実でしょう。

 妙にヒロインの若手女優のお尻を執拗に追い続けるカメラワークが気なりますが細かいことは気にせず、勢いを楽しみましょう。早く訳がわからない権利問題が片付くと良いですね。

 前半のゾンビ映画で感じていた違和感が後半に進むに従い、徐々に回収されていくさまはお見事と言うしかない。劇場ではあちこちで爆笑が起こり、エンディングが終わり、席を立つ人はニコニコしながら帰路についていましたし、お母さんに小さい子供が「映画を撮るって、大変なんだね!」と会話をしていたのが印象的でした。

 低予算番組で、仕方なく臨機応変に対応して、なんとか撮影を進めて行く安っぽさ満載の演出をどう取るかで作品を楽しめるかどうかが変わるでしょうが、12チャン映画好きならば、ツボにはまるのは間違いありません。たぶんハリウッドでリメイクされるでしょう。また、金銭問題が発生しそうですね。

 総合評価 88点

 

カメラを止めるな!  [Blu-ray]

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  • 発売日: 2018/12/05
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カメラを止めるな!スピンオフ『ハリウッド大作戦!』

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