『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922) これが全ての吸血鬼映画の原点、美しく恐ろしい。 ネタバレあり
F.W.ムルナウ監督の1922年の作品。ドイツ表現主義の代表的な一本であるだけではなく、いわゆる吸血鬼が出てくる映画の元祖であり、以降のドラキュラ映画の原点となる作品です。ほとんどの構図とストーリー展開はここから一歩も出ていない。影響力という点では、ジェームズ・ホエール監督の傑作『フランケンシュタイン』(1931)にも劣りません。では『魔人ドラキュラ』(1931)ほど人気が無いのは何故か。
主役のスクリーン上で見せる魅力、それも女性客に対してのアピール度の違いがそのまま人気に現れてしまいました。『ノスフェラトゥ』のマックス・フォン・シュレックと『魔人ドラキュラ』のベラ・ルゴシのセックス・アピールの優劣、ルックスの美醜がはっきりとその後のドラキュラ物を作る基準になっています。構図とストーリー展開は『ノスフェラトゥ』、主役選びの参考は『魔人ドラキュラ』と大雑把に言えばこうした基準が出来上がったように思えます。
構図と雰囲気の持つ恐ろしさか、肉体の美しさと「鮮血」などの直接的な表現による恐ろしさか。現在ではどちらが勝者としてもてはやされているかは明らかになっています。解りやすさと扇情主義というマスメディアの方針にも乗って、ベラ型のクリストファー・リーがその後のドラキュラの持つイメージを固めていきます。 ではマックス・フォン・シュレックにはそんなに魅力が無いのか。いいえ、あるのです。演技力ではむしろベラやリーを上回っていると見て差し支えありません。サイレントの制約の中でシュレックは身体全体で吸血鬼を表現しています。解りやすい、まさに一世一代の演技をしています。
オーバーアクションだという人もいるかもしれませんが、現在のトーキースタイルが当たり前になっている映画と違い、音の無いサイレントでは顔の表情やしぐさをより大きくしないと伝わらないことを理解して欲しい。音が無くてはつまらないでは、つまらない。目・耳・鼻(匂って来る映像もありますよ)・触覚(隣の人の様子からも映画は楽しめます)・口(悲鳴とかため息も)の五感全てで映画を味わえれば、かなり幸せです。 ベラやリーの吸血鬼作品を見た人には是非に『吸血鬼ノスフェラトゥ』を見て欲しい。構図から醸し出される美しさ、光と影の見事なバランスによる美しさ、吸血鬼の長い手足の持つ不気味な美しさ、絶命するラストシーンの美しさ、印象に残る不気味さと厳しさを合わせ持つカメラワークの美しさ。挙げていけば、きりの無いほどな映像美をたっぷりと目に焼き付けて欲しい作品です。
またネガ画像の持つ、妖しい雰囲気をも作品に使って、例の効果的かつ有名な馬車での出迎えシーンを作っています。ドイツのこの頃の映像って『カリガリ博士』や『メトロポリス』を含めて傑作ぞろいです。黒澤・小津・溝口監督の活躍した日本の50年代のように、ドイツの10~20年代も映画の全盛期だったようです。 総合評価 82点 吸血鬼ノスフェラトゥ
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出演者:マックス・シュレック、アレクサンダー・グラナハ、グスタフ・フォン・ワンゲンハイム、グレタ・シ
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タイトル <F・W・ムルナウコレクション>リティカル・エディション 吸血鬼ノスフェラトゥ
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