良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『フランキーの宇宙人』(1957)一人十四役!喜劇役者フランキー堺主演のC級SFコメディ!

 フランキー堺が亡くなってから今年ですでに十年の年月が経とうとしています。川島雄三監督作品に数多く出演し、『世界大戦争』や『モスラ』などの東宝特撮シリーズにも多く出演した彼は忘れられない俳優の一人なのです。

 SFコメディの体裁をとるこの作品では、高橋圭三のナレーションが懐かしい。ギャグ担当として、永六輔の名前もクレジットされていました。真面目な顔してギャグを考えていたのかと思うと笑えます。高品格ら日活らしい俳優が出ているのも嬉しい。

 なんといっても、この作品の見所は低予算作品らしいチープな特撮がなんともいえない暖かい雰囲気を醸し出しているのとフランキーによる一人十四役に尽きます。

 いかにもな感じが漂う円盤の特撮やマット合成を使ったことによって得られるフランキー堺同士の芝居の面白さはたまらない。一度に出てくるフランキーの人数は三人が限界で、5人が同じ車に乗車するシーンでは2人に影を掛けて上手く誤魔化していました。

 頻繁に特撮を使うほどの予算は認められなかったようで、後姿で誤魔化せるシーンでは節約に励んでいるのも解りました。そういった部分でも暖かみと工夫を感じます。フランキー堺が画面に出るとなぜかとても和むのは彼の人格のおかげでしょうか。

 味のある良い俳優達がどんどん亡くなってしまうのはとても残念な事ですし、日本映画にとっても大きな損失です。彼らは仰々しく主張しなくても、しっかりと個性があり、芝居が生きています。目立つのが俳優の仕事ではなく、作品世界に溶け込んで、作品そのものの質を高めるのが俳優の仕事であることを熟知しています。

 一人十四役なので、何処を切ってもフランキー、目をつぶって開いてみるとまたまた出てくるフランキー、金太郎飴のような状態になっています。ドラマーのフランキー堺、煙突掃除夫の堺田栄、大阪のジプシー・ダンサーのフラメンコ堺、青森の新興宗教教祖のフランキ・ランペイ、中国医療の大家のフー・ラン・キ(フー・マン・チューみたい)、フランキー衛星国からきた宇宙人で地球部隊のボスである密一号、製薬会社の宣伝マン、フランキー国代表、フランキー・アナウンサー、歌手のフランキー・デュオ(2人)、フランキー国TVスターの宇宙太郎、フランキー星人(女役)、そしてフランキー・ベイビーの十四役でした。

 『怪獣大戦争』ではⅩ星人の女性が全員水野久美という素晴らしい星でしたが、このフランキー星では男も女も全員がフランキーなのです。行くならⅩ星のほうが良い。

 いい加減悪ふざけの臭いがプンプンしてきますが、笑えるので良しとしましょう。特撮部分は『空飛ぶ円盤 地球を襲撃す*(すでに記事にしていますので、そちらもどうぞ)』の接近遭遇シーンをそのまま拝借してきたような映像が続きます。宇宙人のユニフォームも『プラン9・フロム・アウタースペース*(こちらも記事にしています)』にそっくりで特撮ファンには漂ってくるB級テイストが嬉しすぎます。

 こういった作品は忘れ去られていく運命にありますが、同じ日活のB級アクションなどとともに覚えていたい作品群のひとつです。最近の邦画よりも実験精神に富んでおり、予算が少ないながらも、活き活きとした活動写真をきちんと撮っています。

作り手が楽しんで、娯楽に徹した作品を世に送り出してくれています。中途半端な作品など端から作っていない。そこに好感を持てる。

総合評価 60点

フランキーの宇宙人