良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『リオ・ブラボー』(1959)後期?西部劇50年代の傑作!ゆったりと心地良い時間が流れていく。

 新年明けましておめでとうございます。今年一年がみなさまにとって、素晴らしい年でありますように。そして素晴らしい映画に巡り会えることを心からお祈り申し上げます。  さて、2007年一月元旦に、まず最初に見たのは西部劇の名作『リオ・ブラボー』でした。ハワード・ホークス監督の後期の最高傑作であり、出演者もジョン・ウェインディーン・マーチン(アル中の保安官助手)、リッキー・ネルソン(今どき風の保安官助手)、ウォルター・ブレナン(スタンピー爺さん!最高です!)、アンジー・ディキンソン(美しい)と超豪華ないかにもハリウッド的な顔触れが揃いました。  公開されてからすでに50年近い時間が流れましたが、このハワード・ホークス監督の最後の名作と呼んでもよい作品が、いまだにアメリカの映画ファンのなかでも根強い人気を保ち続けている理由は一体何なのであろうか。

 ゆったりとした会話と音楽はこのジャンルにピタリとはまり、物語の描き方も急がず丁寧で、セットも人間の温かさを感じさせ、カメラ・ワークもスムーズに落ち着いた動きを見せる。勧善懲悪世界を描く、もろにジャンル映画丸出しの展開を前面に押し出し、ガン・ファイト中心のアクション・シーンも派手、落ちぶれた保安官助手が立ち直る様子を描きつつ、ジョン・ウェインとアンジーとのすれ違いの恋愛も描く。

 観客が見たいものを全てストーリーに盛り込んだ豪華な西部劇、痒いところに手が届く西部劇、それがこの『リオ・ブラボー』だったのではないだろうか。明るく、楽しく、痛快で、家族みんなで観に行ける映画館主にとっても有り難いアメリカ時代劇と言えます。

 監督の人選も最適で、人間中心に作品世界を描き、観客の視線を疲れさせない構図とカットをモットーとするハワード・ホークスを起用しているのも見逃せないところです。凝りに凝ったカメラ・ワークや編集テクニックを持つ監督達が持て囃されるようになりますが、一見すると見えにくい彼のこだわりや配慮に、もっと観客たちも評論する側の人々も気付くべきであろう。

 『暗黒街の顔役』『脱出』『遊星よりの物体Ⅹ』などモノクロ作品での印象が強いホークス監督ではありますが、カラー作品であるこの作品でも彼らしさはしっかりと出ている。ただ切れ味という点ではモノクロ時代に軍配を上げる。会社との兼ね合いもあるので一概には言えませんが、モノクロでこれを撮っていれば、アンジーはさらに魅力的な女に描かれていたのは確実です。マーチンの苦悩もより深刻に映し出されたことでしょう。

 モノクロでは人間の苦悩はより深く、女性の美しさはより際立って映し出される。この作品でも色の抜けが良い効果を上げている。色褪せたような発色がなんともいえない味を出している。古い時代のカラーにありがちなどぎつさがなく、自然な感じの色調になっています。

 室内の照明がいかにもセット的な明るさになっているのが興を削ぐが許容範囲ではある。あまり暗くやりすぎると映画館では非常に観づらい画面になってしまうのを考慮した結果かもしれません。

 演技面では一番目立つのはジョン・ウェインではなく、落ちぶれた酔っ払いの保安官助手を演じたディーン・マーチンとスタンピー爺さんをコミカルに演じたウォルター・ブレナンでした。汚れ役を見事に演じたマーチンはもちろん、ウェインやマーチンとの掛け合い漫才のような台詞で強い印象を残したブレナンの演技は素晴らしい出来栄えでした。

 コミカルな演出は数多く盛り込まれています。アメリカン・ヒーローであるジョン・ウェインが驢馬(英語ではのろまという意味)に驚く様子、スタンピー爺さんそのものの存在、たん壷に手を入れるシーン、ウェインに何度も「駅馬車」「駅馬車」と連呼させるシーン、アンジーの下着が爺さんの肩に落ちてくるシーン、乗っている馬がコロコロに肥えているなど注意してみていると、さりげなくあちらこちらに挟み込まれているギャグに思わず笑ってしまいます。

 そしてやっぱり歌ってしまうディーン・マーチンにも笑ってしまう。しかも今回は相方にリッキー・ネルソンを迎えての『ライフルと愛馬』『シンディ』の熱唱でした。突然ミュージカル的なノリになってしまうのには苦笑してしまいますが、アメリカ人はこういうのが好きなんでしょう。ならず者達が演奏する『皆殺しの歌』も耳に残る曲です。

 ていねいに演出され、ていねいに演じられ、ていねいに制作された黄金時代の名残りのような映画です。観終わった後の爽快感を味わって欲しい。

総合評価 86点 リオ・ブラボー

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