良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ウォーターパワー アブノーマル・スペシャル』(1977)浣腸強姦魔を扱った問題作!

 1970年代後半、小学生のころ、近所の公園のそばに銭湯があり、そこには映画案内の掲示板がありました。  一般映画に混じって、『聖子の太股』や『ラブレター』(関根恵子主演)など日活ロマンポルノのタイトルが貼り出されていたのをドキドキしながら見ていました。そのなかにあったポスターの一枚がこの『ウォーターパワーアブノーマル・スペシャル』でした。  いかにも外人らしい、イカツい婦警さん(パム・グリアみたいな感じ。)のイラストが印象的だったポスターのイメージはかなり強く、タイトルもウォーターパワーだけは覚えていました。

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 たださすがにどんな映画だったのかを確かめに観に行けるはずもなく、いつのまにか7~8年が過ぎました。大学生になってから、近くのレンタルビデオ屋さんでブラブラしていると、見覚えのあるタイトルが並んでいるのに気付くとそこには『ウォーターパワー アブノーマル・スペシャル』と書かれていたのです。  その頃までには高校で仲が良かった先生(!)の家でリンダ・ラブレイズの『ディープ・スロート』、日本公開時は前作と繋げられてしまった『ミス・ジョーンズの背徳』のノーカット版ビデオを見せてもらいました。日本公開時には二本繋げていたとのことでしたが、もともと両方とも65分程度の中編なので、両方をつなげても2時間程度です。ハードコアなので、露出どアップ画面をすべてカットしたのでしょう。

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 また年齢詐称(16歳でハードコア出演はさすがにアメリカでも犯罪です。)で多くの逮捕者を出したトレーシー・ローズが出演していた『ブラック・スロート』も見ていました。懐かしさはもちろん、有名そうなヤツだし、取り敢えず見ておこうかという興味本意でこの『ウォーターパワー アブノーマル・スペシャル』を借りてきました。  再生するとどうやらモヤモヤしている青年(ジェイミー・ギリス)が浣腸プレイに目覚めたために引き起こす変態犯罪を描き出しているではないですか。

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 ポルノの名を借りた極悪性犯罪映画という危ない作品でした。洋物はノーカット版で見てきましたので、日本版ビデオを見たときにはモザイクいっぱいで目がチカチカしましたので違和感だらけでの鑑賞でした。字幕も「うんこが~」とかかなりハチャメチャで適当だった記憶があります。  ただ性器露出シーンにはうるさい日本の映倫ですが、暴力やスカトロの産物にはお目こぼしがあったのか、浣腸排泄シーンはしっかり入っていました。もちろんモザイク入りなのですべてが鮮明に映っているわけではありません。

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 そもそもウンコなんかに興味がなかったノーマルなぼくは汚ない作品だなあと感じる程度でした。じっさいアメリカでも不入りだったそうなのですが、スカトロがタブーのヨーロッパ(ドイツなどは特にうるさいようですが、ドイツなのかなあ?)で人気が出たために価値が上がったようです。  日本版ビデオジャケットには医者(エリック・エドワーズ)が手術中に看護婦役の女(マルレーネ・ウィロビー)と患者を覗き込むような写真が掲載されていますが、じつは彼は主役ではなく、ワンシーンに脇役として登場する、お医者さんごっこの一環で浣腸プレイを施す変態君に過ぎない。

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 そんな脇役をジャケットに使うのはかなり珍しいのではないか。主人公を含めて、出てくる男優は変態ばかりですが、その中でも浣腸による噴射を見ないと性的興奮を得られない彼らはかなり変態気質が強い。  物語の展開は急激で、なぜか乱れた世の中を、特に乱れた女たちを浄化(?)する使命感と目的で浣腸プレイに目覚めた主人公は連続浣腸強姦魔として暴れまわる。

 

 世間を騒然とさせる犯人を逮捕すべく、囮捜査を申し出た婦警(C・J・ラング)は接触に成功するも正体がばれてしまい、彼女も浄化されてしまう。  主人公像は作り物ではなく、実際にこういった犯罪を犯したモデルがいたそうです。見たのは30年近くも前だったので、かなり細部があやふやになっていましたので、今回調べてみると北米版DVDでは、なんと浣腸液を巨大な浣腸セットで挿入していくシーンはあるものの排泄シーンはカットされているようなのです。

 

 欧米では日本と真逆で、欧米では性器露出はオッケーだが、排泄シーンは問題となってしまったようです。日本版ビデオでは性器露出がNGで、排泄シーンはオッケーなのです。  ということは欧米の物好きと日本の物好きが集まれば、お互いの見たい部分を見ることが出来ます。欧米盤ではレビューを見る限り、大量の浣腸液を挿入していく様子がはっきりと写し出されていきますし、日本版では結果的にどうなるかが写し出されています。

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 挿入前に滑りやすくするためにヴァセリンを塗っているのはかなり間抜けに見えます。ただ、だからなんなんだというのが正解で、今さら大昔のハードコアを見ても懐かしさしかありませんし、ウンコを見ても楽しくはない。  ただ、1970年代当時にもしはじめて見るノーカットの洋ピンがこの作品だったとしたら、かなりの衝撃を受けてしまうのは間違いない。『ディープ・スロート』で披露された口淫技巧は強烈ではありましたが、行為自体は大昔からあったことです。

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 しかしこの作品で描かれる浣腸プレイは今でも変態的な行為であり、もしこんな行為を彼女や奥さんに求めたら、すぐに離婚か別れが待っているでしょう。  だからこそアブノーマル・スペシャルという名前が相応しかったのかもしれない。実際にできない行為ではありますが、異常性愛表現としては独創的で他がまねできないという意味においてはオリジナリティに溢れる作品だったと言えます。

 

 ネットには浣腸後の噴射シーンが残っている動画も出ているようです。ビデオの最大の利点は臭わないことでしょう。もし技術革新で映像に臭いがついてくる時代が来たら、ほとんどのポルノとホラーは絶滅するはずです。  だって、家族が帰ってきたり、部屋を開けられたりしたら、あまりの臭さで死ぬほど怒られることは確実ですし、そのあとはすべてのお金の流れを押さえられてしまうでしょう。

 

総合評価 55点