良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『女のオブジェ 巴里のダッチワイフ』(1979)フレンチSFハードコア・ポルノっていったい?

 最近どうもエロ映画ばかりになってしまい申し訳ございませんが、映画が発展するために大きな動員力を持っていたのは暴力及び性描写の強めの作品であることは間違いない。大っぴらには公開されていないが、ブルー・フィルムの歴史はヨーロッパでもアメリカでも陰に隠れてはいるが確実に存在します。  ビデオ時代にはそのような大昔の性行為を映し出したフィルムをまとめて一つの作品として扱った『ブルー・レトロ』という作品もあり、TSUTAYAのクラシック・コーナーにも並んでいるお店がありました。  今月出版された『80年代 悪趣味ビデオ学の逆襲』に記事が収録されていた作品の中にフランス・ポルノの『女のオブジェ 巴里のダッチワイフ』がありました。
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 フランス・ポルノ界のスター女優、マリリン・ジェスがハードコアに挑んだ作品で、問題作『カリギュラ』を製作したボブ・グッチョーネが率いるペントハウス・レーベルで日本版ビデオも販売されていました。  よって当然、洋ピン・ポルノなのでR18指定作品ということになります。内容はメイドが三日も持たないほど性欲を持て余し、セックスを制御出来ない絶倫男の主人公二コラが性欲処理用アンドロイド、キム1号(マリリン・ジェス)を作り出す。
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 彼女に有り余る彼の性欲を処理させるというアホ丸出しの野望をなしとげる構成で、ただひたすらにあたり構わず行為に励みます。  しかし幸せな日々は束の間で、彼女はロボットではあるが、意志を持ち、ご主人様に従わなくなっていきます。  フランケンシュタインの怪物的なSFコメディとしても楽しめるようになっています。笑えるのはヨーロッパでも人気があったのか、『スターウォーズ』の人気キャラクターであるR2D2の電池式オモチャを登場させて、ここぞの場面で上手く使っていることです。  R2D2はオモチャですが、アンドロイドのキム1号も本来はオモチャだったはずです。もちろん中身と性能には雲泥の差がありますが、出発点は同じです。違いは成長型コンピューターを仕込まれているキム1号が徐々に主人の命令を聞かなくなってくる部分で、この点は『フランケンシュタイン』でもお馴染みの展開となる。  主人公はその不満を解消すべくキム2号を作り出すが、この黒人女性型ダッチワイフはキム1号の言うことしか聞かず、アンドロイド同士で交わり、主人公がポツンと置き去りにされてしまう。
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 女のオブジェとはアンドロイドである彼女らを指すのではなく、意思を持つオモチャによって放置される主人公のことだったことが明らかになる。その落ちを見せた後にR2D2がテーブルから転けて映画は終わる。なってこったい!  ビデオ時代のリリース、しかも映倫チェック済みなので、画面はモザイクばかりで鬱陶しい。それでもマリリン・ジェスの美しさは分かりますし、彼女の設定をアンドロイドにするのはハマっています。  こういう物語の要素が昔のポルノにはありましたが、現在は残念ながら、ただただ行為を写し出すだけの映像でしかない。AVは男が喜ぶであろうシーンのみをダイジェストで編集しているだけなのでたぶんそこで学んだ知識だけで実戦に挑むと彼女には嫌がられるでしょう。
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 なにはともあれ、VHSビデオ独特の重量感はこれから写し出されるであろう映像への期待を掻き立てる。それがビデオ時代の楽しみだったのではないか。  かつて大人気だった洋ピンなので廉価版でどんどん復刻させて欲しい。『ディープ・スロート』などはリリースされてはいますが、誰でも手に取れる一枚1000円均一くらいで出して欲しい。
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 『モーナ』『ミス・ジョーンズの背徳』『グリーンドア』『ウォーターパワー アブノーマル・スペシャル』『ディープ・スロート』などは安かったら、どんなものだったのか見てみたいという好事家はけっこう多いのではないか。  ひたすら結合シーンをどアップで見せ続けられるだけでは誰でもいいですが、何度も見たいと思わせるにはそれ相応の演技力だったり、ストーリー展開が必要になります。  それらはポルノには必要な要素ですが、実用性のみが要求されるAVでは視聴者に求められていないのでしょうね。
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 『女のオブジェ 巴里のダッチワイフ』のジャケットを見てもらえれば分かりますが、なかなかのアート感覚を醸し出しています。  大昔にレコード屋さんでジャケット・デザインの良さで衝動買いする友人がいました。もし彼がこのビデオのジャケットを見ていたら、おそらく購入していたかもしれない。  現在、この作品はDVD化はされていません。恐らく理由はディズニーと同じく、著作権にうるさそうなルーカスの許可が出ないからでしょうね。まあ、子供の人気者R2Ð2が濡れ場を覗き見しているようなギャラリーとしてのポジショニングで出演し続けているのは耐えられないでしょう。 総合評価 60点