『嘘を愛する女』（2018)クライム・サスペンス？恋愛モノ？
公開からは随分と経ってしまいましたが、強風吹き付ける本日になってようやく観に来ることが出来たのが長澤まさみ主演の『嘘を愛する女』でした。
三十代に掛かってきた代表的な女優には綾瀬はるか、新垣結衣、長澤まさみらがいますが、個人的には長澤まさみにずっと注目しています。
最近はCMなどでも老け役までこなすようになり、芸の幅を広げてきていますのでどういう立ち位置でも需要があるように上手く脱皮しているように思います。
そんなこんなを開演前に書き連ねていますが、どうやら劇場はぼく一人のようでした。まあ最終的には上映が始まってからなだれ込んできた二人連れも加わり、館内は四人になりました。
今日は映画館はサービスデーということもあり、夕方も人がいっぱいで大学生たちや主婦層を中心に大勢集まっていました。普段からこれくらい集まってくれると活気も出るのになあ。
ガラガラで上映するくらいだったら、普段から1000円程度で回転させて、グッズや飲食物の販売で稼ぐスタイルで運営した方が上手く出来そうな気もしますが、人件費を考えて行くと安売りはしない方が良いのかなとも思う。商売は難しいですね。
映画に戻ると、タイトル『嘘を愛する女』から想像していたのはクライム・サスペンスか詐欺系のストーリー展開でした。実際、序盤は長澤まさみと五年間一緒にいちゃいちゃと過ごしていた高橋一生が倒れて、意識不明の重体になってしまいます。部屋での絡みでまさみちゃんの口に高橋が両手の指を入れて、大きく横に広げて、ブサイクな顔にしてしまう場面が衝撃的ではありました。
いちゃいちゃ場面が終わり、母との約束時間をすっぽかし、家に帰ると突然、警察が自宅にやってきて、意識不明の彼の正体が一切不明で名前も職場も全てが嘘っぱちだったことが判明するという訳が分からない状態に陥ります。
長澤まさみだけでなく、われわれ観客も重要人物が寝たきりになってしまう状況に戸惑います。普通ならば、結婚詐欺師と思しき謎の人物が意識不明だったならば、それをきっかけにして新しい人生をリスタートするのが普通でしょうが、それだと映画にならないので、まさみちゃんは謎の男の正体を知るために探偵事務所の吉田鋼太郎とDAIGOを雇い、核心に迫っていきます。
DAIGOは良い味を出していて、中島らもみたいで笑えました。そういえば、彼の奥さんも三十代前半の人気女優さんでした。
調査の過程で出会ったメイドカフェに勤めるストーカー・チックな川栄李奈は長澤まさみが知らない高橋一生を知っていて、なかなかスパイスが効いています。
彼女は多くの作品に脇役で出演しており、独特のポジションを築きつつあり、元AKBという肩書きはすでに不要に思います。あのような事件に巻き込まれた彼女はグループを辞めざるを得ない状況にありましたが、今は自分がやりたい活動が出来ているようですので、見守って行きましょう。
さてサスペンスだと思っていたこの作品はフラッシュバックにより実際は寝たきりの高橋一生の不幸な家庭生活と半生を調査によって知るにつれ、ラブストーリーに変化します。しかし騙されていたキャリアウーマンが怒りよりも愛に走るとは思えません。
探偵に調査を依頼したのであれば、報告を待てば良いだけであって、わざわざ素人でしかない自分が現地に飛んで調べまわる必要性はない。小説もどきを書いているからといって、調べるモチベーションにはなるとは思えない。つまり現実離れしているので強引で白けてしまう。
悲劇的な過去は変えられるものはありませんが、桜の咲く季節に意識を取り戻した高橋とまさみちゃんにはちょっとはハッピーな未来が待っていそうでした。
見どころとしては吉田鋼太郎との瀬戸内シーンで一連のシーンにはロード・ムービーとしての味わいがあります。疲れ切った調査の合間に煙草を一服する二人の距離感も良い感じでした。
瀬戸内の島々や地域をまさみちゃんのやりたい放題で振り回される受難の探偵役を演じた吉田剛太郎がいよいよ嫌気がさし、彼女を放り出して出て行ってしまった後、再会したときに無言で助手席のドアを開けて招き入れる場面が男らしくてカッコよく、印象に残っています。
ただ残念ながら、芸達者な俳優さんたちが出ている割には映画になっていない。何を伝えたいのかが伝わってこない。原因は脚本にあるように思います。すべてがぼんやりとしています。
映画作りにレンタル大手のTSUTAYAが関わっていた割りには出来栄えがイマイチです。レンタルでフル稼働するような面白い作品に仕上げようとする意志があまり伝わってこない。
総合評価 55点
