『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018)SWマニア用。以上…
今週は我らが代表がベルギー相手に雄々しく散りました。戦前は三連敗予想が大半を占めていましたが、予想外の大健闘でコロムビアを撃破し、セネガルと好ゲームを展開し、弱者の戦略を使ってポーランド相手に計画的に負けると批判を浴び、そして真正面からベルギーとぶつかり、惜しくも敗退しました。
集中力と緊迫感が高まっていくラウンド16以降が本物のワールドカップであり、予選リーグは強豪国のウォーミングアップに過ぎないということが改めて理解できた一週間でした。代表選手の本気のプレーが見られただけでも素晴らしかったのではないでしょうか。
情けなかったのはにわかファンとマスコミで、特にマスコミは彼らを信じていなかったのに結果を出すと手のひら返しで騒ぎだし、特番を流し続けています。数字になれば何でもいいという姿勢がよく分かります。
ファンも同罪で、僕も含めてほとんどの人は代表を結果が出るまでは信じることが出来なかったはずで、「いやあ、俺は信じていたよ!」などという嘘つきは放って置きましょう。というか代表が決まるまではああだこうだ言っても良いが、決まったら彼らの力を信じて応援するというのが正しいのかもしれません。
かつての大事件の首謀者が死刑を執行され、地元関西では地震に続き、大雨の被害が出て、一部地域では現在も予断を許さない状況ですので、電車の運行とか、該当地域の知人の安否が気になる日々です。
そのためか、本日観に行った映画館でも土日に関わらず、人出は少なく、シネコンが入っているショッピングモールも閑散としていました。
スターウォーズ関連作品として『ローグⅡ』に続いて公開されているディズニー製作のスピンオフが『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』です。
スターウォーズのファンにとっては大人気キャラクターであるハン・ソロ(あくまでもハリソン・フォード)ですが、最終3部作ではすでにレイアとの間に生まれた実子によって殺害されており、この映画が最終エピソードに繋がるわけではない。
つまり、これはディズニーによる金儲け以外の意味はない。今後、ボバ・フェットも映画化する予定のようですが、今回同様、初日に観に行こうとは思わなさそうです。まあ、ボバ・フェットやヨーダも結局は製作されるのでしょうが、さすがにお腹いっぱいで食傷気味です。
作品の歴史的なというか時系列的な位置は共和国が崩壊し、銀河帝国が実権を握ってから10年後なので、あちこちにストーム・トゥルーパーが配置され、取り締まりを行っています。ただ彼らには特に見せ場はなく、風景に溶け込んでしまっています。
舞台になっているのはコレリア(ソロはここから抜け出してアウトローになっていく)、ミンバン(紆余曲折があって、帝国軍に入隊して派遣される戦場)、ケッセル(初期作でよく会話に登場していたケッセルです)、ヴァンドア(大列車強盗のような場面がある)、サヴァリーン(クライマックスの舞台。盛り上がらない。)で、それぞれの場所で見せ場があるがどうも上手くつながっていません。
見ていて思うのはソロのコスチュームから判断できるように、なんだか大昔の西部劇のような展開が多く、決闘のシーンや『大列車強盗』のパロディみたいだったりと目新しいものはなく、オーソドックスです。つまり冒険はしていない。若きルークの大冒険と違い、ソロらしく金儲けが主体ですので製作者であるディズニーの臭いが漂ってくるようです。
そこかしこにニヤッとさせてくれる台詞や映像も確かにあります。会話に出てくる「ボスクに頼もうとした」というところなどはオリジナル三部作の名作『帝国の逆襲』に登場した賞金稼ぎ六人衆(ボバ・フェット、IG-88、デンガー、4-LOM、ボスク、ザッカス)のうちの一人であるボスクの名前が出てきたわけですからマニアには嬉しい。
同じくタトゥイーンの大悪党ジャバ・ザ・ハットのこともちょこっと触れられていますが、彼の名前は仄めかされるのみでした。それでも彼に繋がっていくきっかけがこのエピソードであるのは間違いないようです。
ホログラムゲームももちろん健在で、ベゲットとチューイが対戦しています。チューイとハンの出会いのシーンは少々ご都合主義すぎるきらいはありますが、暗闇からアンドレ・ザ・ジャイアントのように出てくるシーンは雪獣ワンパとルークが戦う『帝国の逆襲』を思い出しました。
後半の最後ではあのダース・モールがエピソードⅠ以来、ほぼ20年ぶりに再び登場します。ただこのシーンに関しては失敗に思えます。ダース・べーダーがすでに猛威を振るい、皇帝も彼を右腕として使っているわけですし、シスが二人で動くという設定に忠実であるならば、もうひとり、ダース・モール以外にシスの暗黒卿が存在する必要があります。
仮にシリーズ最新三部作の最終話であるエピソードⅨに彼が黒幕として出てきても、誰も驚かないし、ほとんどのファンにはそっぽを向かれてしまうのではないか。彼の登場はかなりのギャンブルに思えます。
ハン・ソロのキャラクターに深みを加えるならば、ハンとキーラが別れ際にエレベーターに乗り込むときに、画面の後方、つまり彼女の肩越しでキーラに刺されたドライデン・ヴォスが力を振り絞り、キーラを刺し殺していたならば、前半の空港での扉が閉じられるシーンの回収として機能したでしょうし、女性に不器用なハンがなぜそうなってしまったかの伏線にもなったでしょう。
主な出演者はオールデン・エアエンライク(ハン・ソロ)、ウディ・ハレルソン(トバイアス・ベケット)、エミリア・クラーク(キーラ)、ドナルド・グローヴァー(ランド・カルリジアン)、タンディ・ニュートン(ヴァル)、フィービー・ウォーラー=ブリッジ(L3-37)、ヨーナス・スオタモ(チューバッカ)、ポール・ベタニー(ドライデン・ヴォス)、エリン・ケリーマン(エンフィス)、そしてレイ・パーク(つまりダース・モール!死んでなかったんですね。)ら。
なかでも批判されているのは主役のソロを演じたオールデンですが、昔からのファンからするとどうしても成功した俳優としてその後も大活躍したハリソン・フォードと比較してしまうのでこれは仕方がない。
批判の矢面に立つのを覚悟しての出演でしょうから、アウェイ感満載でかなり重圧がかかっているでしょう。ただ彼の出来はそれほどひどいとは思いません。
ひどいのは脚本やディズニーのハードボイルドに振り切れない製作姿勢にあるので彼には責任があるとは思いません。他に気になったのはビリー・D・ウィリアムズが演じたランド・カルリジアンの若き日々の姿を演じたドナルド・グローヴァ―です。
もう少し、彼らしい女好き感を出して欲しかったですし、グローヴァ―はスマートすぎます。これだけCGが発達しているのだから、シリーズものの過去世界を扱う続編を作るのであれば、レイアをそうしたようにCGで再現し、製作してもいいのではないか。
女性キャラの描き方にも問題があり、ハンと別れてから、流れに流れて、大悪党ドライデンの部下のナンバー2までに上り詰めたキーラのそれまでの生きざまが全く描かれていないのは致命的で、自分の事情だけではどうしようもない宿命のような深みを与えられていないのは失敗要因の一つです。
またランドの相棒であるエキセントリックな女性ドロイドのL3は人間との性行為もできるようなのですが、せっかく興味深いキャラを登場させているのにあっさり破壊してしまいます。のちに彼女のメモリーをミレニアム・ファルコンに移植するわけで、これをギャンブルの対象にしてしまうというのはなんか釈然としない。
ランドが選ぶ副官は帝国の逆襲時のロボトであったり、今回のL3(なんか乳酸菌の名前みたい)であったりとドロイドばかりですが、それだけ人間が信用できないということなのでしょう。ハンに影響を与えたと思われるベケットとのいくつかのやり取りは裏社会で生きるレッスンになり、バックボーンになっていきます。ランドもベケットも人間不信により長生きしてきたのでしょう。
評判について、マニアとしては違和感がある映画でもあります。アメリカ本国では失敗作扱いにされていますが、もともとが物語のメインストリームではないキャラを主役にしているわけですから、需要が高い訳ではありません。そこを読み切れなかったのはディズニーのミスでしょう。
脚本のあちこちに粗がありますが、それでも普通には楽しめる作品に仕上がっています。ただ万人向けとは言い難く、ファン以外の人はDVD化されてから自宅で見れば十分かなあという印象でした。
総合評価 65点
ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
- 発売日: 2018/10/17
- メディア: Blu-ray