良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『透明人間』(1932) 『フランケンシュタイン』の成功に味を占めたユニバーサルが送った新たな刺客。

 ジェームズ・ホエール監督の1932年の作品。お金が大好きなユニバーサルがもっと怪物で儲けようとして急いで作らせて、まあまあ儲かった作品。

 透明人間の造形を決めたのはこの作品です。深く被った帽子とサングラス、顔中に巻かれた包帯と大きなコート、そして手袋をすれば・・・。まあ普通にこんなやつが歩いていれば、今ならば挙動不審者として怪しまれるだけでしょう。

 けれどもこやつは透明人間。誰の目にも触れられずに悪の限りを尽くします。人の帽子を放り投げる。インクを人の顔にかける。自転車を盗む。警官のズボンを脱がせて逃げる。人のパンは取り上げる。

 などなど最初は可愛いものだったのが、首を絞める、崖から突き落とす、ガラスで頭を叩き割る、銀行を襲う、そして列車を転覆させるなどエスカレートしていきます。  最終的に120人以上を殺してしまう凶悪犯になります。透明人間の生着替えやお休みタイムなど特撮シーンの冴え渡る前半だけを見ると間抜けでかなり笑えます。全く恐くないんです。失敗ですよ、これ。

 『フランケンシュタイン』(1931)と同じようにマッド・サイエンティストが主人公です。前の博士は「人造人間」を作りましたが、今回の助手は自分が消えてしまいます。何とか元に戻ろうとするのですが、田舎のおばさんたちに邪魔されてキレテしまい、薬の副作用と共に凶暴化してしまいます。

 最終的に雪の降る中、周りを囲まれ、火をつけられ、足跡を残した瞬間に銃殺されます。死んではじめて元に戻るという悲しいストーリー。

 実験のためならば、善悪など全く省みない姿勢はフランケン博士と同じです。ただし彼は自分を実験台にしてしまい、しかも戻れないのです。科学者のくせにかなりおバカなやつです。

 動物実験とか普通やるはずなんですけどね。フランケン博士は被害が出ても自分は知らぬ存ぜぬで貫いた悪党ですが、こやつは単純犯罪者。やることを含めて悪のレベルが低い。

 良かったシーンは列車転覆のところと、最後の逮捕のところ。警官が周りを囲み、火をつけて追い込んで倒すという一連のモブシーンはよく撮れていました。

 悲しい物語に仕立て上げようとして入るのですが、設定が穴だらけのために単なるお笑いのコントみたいになっていました。H.G.ウェルズの原作が泣くよ。

 本来、目に見えないものがそばにいるかもしれないという場面やそれが襲ってくるというシチュエーションはとても恐ろしいはずなのですが、特撮シーンがあまりにもコミカルなために作品の意図がぼやけてしまった感があり、残念な結果に終わった作品です。急ごしらえのために深く原作を読まないで、脚本を書いたのかもしれませんね。

 

総合評価 52点 透明人間

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