良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『フリークス(怪物團)』(1932)これはたんなるキワモノ映画ではない。 ネタバレあり。

 MGM製作で、トッド・ブラウニング監督が1932年に放った衝撃の問題作で、邦題は『怪物團』です。作品としてみるとサーカス一座で働いている主人公を中心にした、似たもの同士の可愛らしいラブストーリーに、陰湿極まりない金目当ての男女が彼を色仕掛けで騙して偽装結婚させ、毒殺してから遺産を奪おうというドロドロした話が絡み、それを防ぐために立ち上がる主人公の仲間たち。

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 こうして書いていくと単なる何処の国でも何時の時代でも見受けられる話なのですが、この作品の凄いところはそれを全て「奇形」の人々によって演じさせた点なのです。主人公とその恋人は両者共に身長が1m以下です。  金目当ての男女は肉体的に美しい健常者。主人公が働くサーカスの仲間のほとんどが「奇形」の人々なのです。「小頭症」、「シャム双生児」、「ひげ女」、「両性具有」、「極端なドモリ」、「腕」の無い人、「下半身」の無い人、手足の無い人、これらの人々が画面を埋め尽くしています。  ショッキングな映像が次々に出てきます。このため公開時には各地で上映禁止の地域が多かったそうです。ただ思うのはこういった動きはとても偽善を感じさせるものだということです。実際にこの作品を見てもらえると一番分かるのですが、皆懸命に生きています。彼らが他と違うから見ることの無いようにするというのは卑怯だと思います。  キャラはとにかく強烈です。一度見たら忘れない作品であることは間違いありません。しかし彼らの真剣さを見たら、興味本位で見ることがどんなに失礼なことかを理解して欲しい。雨の中での女への復讐シーンでの映像の美しさを見てください。

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 また主人公の恋人役の小さな女性がとても健気で、美しい心を持った女性です。彼女の演技は特に素晴らしく一見の価値があります。主人公の言葉も心のこもった台詞の連続であり、心を打ちます。  結局のところ最も「フリークス(化け物)」だったのは健常者である(あった)美女と筋肉自慢の彼女の情夫だったわけです。それともいかなる手段を使ってでも話題作を作ろうとした当時のMGMの首脳陣でしょうか。 総合評価 78点 フリークス

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