良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『スーパーサイズ・ミー』(2004) 提案 マクドの袋には「身体に悪いから食べ過ぎるな!」と書け!

 超話題作『スーパーサイズ・ミー』はモーガン・スパーロック監督、2004年の作品であり、DVD化される前から、マスコミや口コミで内容が語られていたために、知っている人も多い作品ではないでしょうか。ダイエットで悩む人だけでなく、ハンバーガーが大好きな人が見ても十分に興味深い作品です。

 

 まったくスターは出てこない、CGもない、ただのおっさんが一人でハンバーガーを食べているのみのシンプルすぎる作品です。が、彼の食べ続けたものがマクドナルド製品のみであり、それ以外は一切食べずに一ヶ月間を過ごすという人体実験映像をひたすら映していくというオリジナリティーは素晴らしく、またコメディーの要素も垣間見ることの出来る傑作ドキュメンタリーです。

 

 ファーストフード業界の戦略にどっぷり浸かっている現代アメリカの歪んだ食生活の現状に警戒感を持ち、大企業の狡猾な宣伝戦略を批判し、我が身を実験台に使って、いかにマクドナルド(以下はマクドで統一)製品が体に悪いかを証明しようとします。  

 

 彼の熱意と感覚は時に鋭く、時にコミカルにファーストフード業界を批判します。ハンバーガーをパクつきながら。彼の示すデータは深刻であり、全米国民中の1億人、60%に当たる人口が既に肥満で、幼児も含め、10代、20代の肥満人口も2倍、3倍に膨れ上がっている米国の食生活の異常性を数字を使って具体的に警告しています。

 

 彼自身の身体も最初は健康体そのものだったのが、徐々にマクドに蝕まれていきます。1ヶ月かけて、血糖値が跳ね上がり、コレステロール値が上昇し、血圧が上がり、成人病にまっしぐらに突き進む様子がひたすら記録されていきます。医師の検査を受けながら、不健康なマクド・バーガーズを食べ続けるため、事の深刻性がはっきりと理解されます。

 

 こうして書くと、いかにマクドが身体に悪いかだけに注目して作品が撮られているように感じるかもしれませんが、実際にマクドに齧り付くモーガンにはあまり悲壮感はありません。身体はかなり痛めつけられていきますが、彼はあくまでも実験台の役を皮肉たっぷりに嬉々として演じているように思われます。挿入されるマクドをコケにしたポップ音楽やポップアートの作品も優れたものです。

 

 彼が本来、この作品を通して訴えたかったのは、TVCMやアニメなどで湯水のような宣伝を浴びせかけられて、彼らの新たな犠牲者となってしまう子供たちをどうすればマクドの魔の手から救い出せるか、なのではないか。この一点に焦点が合わされているように思います。

 

 マクドをはじめ、ケンタッキー・フライド・チキン、ウェンディース、サーティーワン・アイスクリーム、コカ・コーラ及びペプシ、ピザ・ハットなども槍玉に挙げられています。しかし企業だけが悪として描かれているのではなく、学校給食の問題点、親の安易な食生活への姿勢、国の肥満問題に対する取り組みの甘さにも言及されています。

 

 子供たちが、ワシントン初代大統領の顔はかろうじて知っているものの、イエス・キリストの肖像を知らないと答え、ロナルドやウェンディーならすぐに理解する映像には、よその国のことながら空恐ろしくなりました。ワシントンを知っていると言っても大統領だからではなくて、もしかするとお金に印刷されているから覚えているだけかもしれません。

 

 ユダヤ教キリスト教イスラム教が錯綜する宗教国家であるアメリカでもこの調子であると言うならば、金以外の価値観が全くない拝金主義国であるわが国だったならば、どのような結果が出てくるのだろう。

 

 日本ならば、さしずめ天皇陛下小泉純一郎首相らの写真を見せて、子供たちが「知らない」と答えた後に、「アンパンマン」やら「ペコちゃん」の写真を見せた方が子供は知っているのでしょう。恐ろしい現状なのではないか。

 

  また作品中でも語られているように、全ての外食産業には栄養表示を義務づけるべきなのかもしれません。違反すれば、企業ならば、一ヶ月以上一年未満のCM禁止と医療機関への寄付を命じるようにすれば、まがい物の加工品は減ってくるのではないだろうか。

 

 加工食品問題、とりわけ情報隠蔽と不正な表示は、わが国でも日常茶飯事のように行われています。最初、生で売られていたものが余れば、まずは揚げ物に加工し、それでも余ったら、今度はあんかけなどに再加工するなどは普通に行われています。ラベルの貼り替えも当たり前のように行われていると聞きます。スーパーでバイトしていた人にその話を聞かされてからは、そこで買わなくなりました。

 

 名前は出せませんが、ケーキ屋さんでもあるようで、例えば今日作ったものならば「T」、昨日作ったものならば「Y1」、一昨日作ったものならば「Y2」として堂々とショー・ケースに並べられているそうです。ちなみに「T」は「TODAY」の「T」、「Y」は「YESTERDAY」の「Y」だそうです。

 

 次に僕自身とマクドとの関わりについて書いていきます。かかわりと言ってもたいしたことではなく、思い出と言ってしまった方が適当でしょう。最初にマクドに出会ったのはもう30年以上前のことです。祖父の家のそばにマクドがあったために、家に行くのが大好きで、行けば必ず数回はハンバーガーを食べに連れて行ってもらいました。  

 

 ロナルドの人形やポスターやらのキャラクター達(最近日本でビッグマックポリスを見なくなったのは気のせいだろうか)、黄色や赤色の暖色系等で塗りたくられた店内にある、楽しげな雰囲気は確かに子供心を捕らえ、また来たいと思わせる見事な演出だったと思います。幼少期の記憶は格別なものであり、今でも前を通るとそのころのことを思い出すこともあります。

 

 高校生くらいになるとバイトをしだす頃でもあり、お小遣いも多くなるのでマクドに行く機会も増えていきました。当時はまだ高かったビッグマックモーガン監督のようにパクついていました。大学生の頃も同じようなものでした。楽しく食べていた記憶があります。

 

 それが変化する第一歩が、まずは「モスバーガー」の登場でした。明らかにマクドよりもおいしく、手間隙をかけて作られるモスにはまりだした僕には、マクドはもう必要のないものに変わりました。二件あったら、ファースト・チョイスはモスバーガーでした。KFC、モス、マクドがあれば1位がモス、2位がKFC、最後がマクドとなりました。

 

 では何故そのようになってしまったのかと言いますと、自分自身で自覚できる体調の変化があったからでした。マクドビッグマック、ポテト、コーラの一般的なセット)を食べると、大学生の時からなのですが、食後に「胸やけ」するようになったこと、心臓がドキドキするようになったこと、口中の不快感がとれず気持ち悪くなったこと、目の奥に痛みを感じるようになったこと、身体に痺れや疲れを覚えるようになったことを挙げておきます。モスではそれを感じたことはありません。

 

 今思うに、動物性脂肪の取りすぎにより胃の機能に負担がかかり「胸やけ」が起こり、糖分やカフェインの過剰摂取のために心臓がドキドキし、脂肪分や悪い油の影響で口が不快になり、コレステロールが体中にたまるために毛細血管に負担がかかり、目や痺れの症状が出たのでしょう。

 

 糖分、脂肪、カフェイン、炭酸、着色料で構成された劣悪な食品は血管、肝臓、膵臓、心臓、胃腸などの器官に悪影響を及ぼしたようです。

 

 こうしたことがあった後では、他に何もないとき以外ではマクドに行く事は絶対にありません。身をもって身体に悪いと知っているからです。子供には特に食べさせるべきではないでしょう。

 

 付け合せに飲まれることの多いコーラなどに含まれるカフェインは興奮剤ですし、糖分も多いので飲んだ直後は疲れがなくなったような錯覚がありますが、時間が経つと体内に取り込まれた過剰の糖分は身体を疲れさせてしまいます。

 

 この実験の意義はかなり重要性の高いものであり、健康体の人でも毒になる食べ物ばかりを摂り過ぎるとわずか一ヶ月でも立派な病人になることを証明しました。高脂肪、高カロリー、運動なし、野菜なしの生活が何をもたらしたかを見て欲しい。

 

 そこで提案なのですが、CMやアニメをはじめとするTVの影響は、小さい子供ほど甚大な影響を及ぼすわけですから、タバコの箱に印刷されているように、マクドノ商品にも「ハンバーガーやフライドポテトは成人病などを引き起こす要因となり、あなたの身体の健康に悪影響を及ぼします。食べ過ぎに注意しましょう。」の言葉を箱の半分以上に印刷すべきでしょう。

 

 子供はそれを読めなくても買い与える親達には読めるのですから。それでも買い与える親には、近い将来に肥満化した子供からファースト・フードの害を知りながら、自分達に買い与え続けた親の責任を求める裁判が起きるかもしれません。

総合評価 80点

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