良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『カプリコン 1』(1977)アポロ月面ロケットも本当は、あっちまで行ってないというのは事実か?

 ピーター・ハイアムズ監督による、1977年公開作品です。最初に見たのは中学生時代、ゴールデン洋画劇場でした。当時は「うわ~~~。さすが洋画はひねっていて面白いなあ」と、単純に喜んでいました。二度目は大学生時分、深夜にレンタルで見ました。そして今回、最近になって再度、見る機会がありました。  政府やら権威やらを全く信じなくなってしまった今となっては、ごく普通の作品にしかすぎません。ところが最近になって、アポロ月面ロケットは実際には月面着陸していないという噂がまことしやかに語られてきたために、この映画を思い出し再度見たというのが真相です。ですが、本当のところはいったいどっちなんでしょうか。  久しぶりに見ていても「多分、円谷プロ東宝特撮や『スター・ウォーズ』もこうやってんだろうなあ」などという、作者の意図とは違う感慨にふけってしまいました。もっと童心に返り、まっさらな気持ちで映画に向き合わなければと思いつつ、「展開が読めるような、くだらないのを作るんじゃねえ」という自分のほうが内面で大きく占めています。  この程度のひねりでは、刺激を全く感じなくなってしまっていました。まずいですね。この精神的不感症はかなりやばいですね。映画を観た事がない子供だったら、『デビルマン』ですら楽しめるのでしょうか。訊いてみたいですね。  しかしこれはあくまでも、今見たときの感想です。ただこれが公開されたのは1977年だったのです。その頃は、ニクソンによるウォーターゲート事件があったにせよ、まだ権威は失墜しておらず、政府や軍隊の持つさまざまな壁と規制は、国中を覆っていました。  マスメディアの数も量も少なく、携帯電話もインターネットも勿論全く無い時代でした。隠す方が難しい今という時代と、情報統制がまかり通る時代。情報を得るのは今の方が楽ですが、どれが正しいそれなのかという判断力が必要になるのも、最近の偽メール問題を見ても明らかでしょう。  確かに今でも、あらゆる分野に「黒」や「灰色」の部分があるのは百も承知です。ですが、昔の無名な人たちには自分の意志を全国に広めるのはかなり困難でした。だが今ではインター・ネットというツールが出現し、深く考えずにいろいろな情報や誤解に基づいた勘違いを毎日送信しています。今の方が、ましなんだと思います。  国家的陰謀とは何か。国家の体面を保つためならば、何でも許されるのか。人権蹂躙などお構いなしの冷たい現実。民主主義とはただの甘いオブラートに過ぎない、というアメリカ第一主義が顔を出す。国があっての個人にすぎない、当たり前の論理に基づいた行動を取る体制側にとっては、個人など関係ない。  見ていくと結構恐ろしいテーマを描いた作品であり、衝撃度も大きい作品であった事に、あらためて気付かされました。これはただのB級サスペンス作品ではない。この頃には、この手の国家陰謀を扱った作品も多く、『チャイナシンドローム』、『大統領の陰謀』なども記憶に残っています。  作り手たちに問題意識があり、観る人も問題意識を持っていた証拠かもしれません。社会派映画という、もったいぶった切り口でなく、娯楽の中にそういったスパイスを入れていくのが、監督の力量であり、見るものが探し当てるべきサブ・テキストなのかもしれませんね。  総合評価 72点 カプリコン・1
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