良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『メトロポリス』(1984)サイレントの名作に80年代ポップナンバーを結びつけると…。

 総合評価72点  現在は入手不可能になっている『メトロポリス』(1984)サウンド版はIVSのサイレント版では収録されていなかったオリンピック・シーンなどが挿入されていたり、ヨシワラ・クラブのスチールなどを挿入するなどしていて、元のイメージに何とか復元しようという作り手の意図が伝わってきました。
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 1920年代に公開された『メトロポリス』が1980年代に一度サウンド版としてリニューアル公開されたことがあるということに注目して欲しい。普通ならば、わざわざこのようなことはありえない。それでもなお公開しようと踏み切ったのはそれだけこの作品が与える映像イメージのインパクトが凄まじかったからでしょう。
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 サウンド版といっても、もちろんオリジナルの音楽が再演された訳ではなく、80年代にクインシー・ジョーンズと並び称された名プロデューサー、ジョルジオ・モロダーがサイレント・フィルムである『メトロポリス』に音楽的なイメージを与えて、現在の観客が容易に映像の意味を理解させるために付け加えられた野心作として蘇らせたのです。
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 この1984年度のジョルジオ・モロダー版では大胆にその当時のロック・スターのナンバーをサントラとして投入し、モダンなイメージをサイレント映画に与えようとしました。その試み自体は大成功したとは言い難い。  しかしサイレントに慣れていない映画ファンにとっては、サイレント黄金時代の巨匠、フリッツ・ラングという不世出の映画作家のフィルムを、たとえプロモーション・ビデオ感覚ではあったにせよ、ふたたび光を当てるきっかけを作ったという意味では一定の効果があったのかも知れません。
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 実際に使用されたのは当時アメリカでは大人気だった女性ロック・シンガーのパット・ベネター(何故か日本ではあまりパッとした印象がなかった。個人的には『サムバディーズ・ベイビー』が好きです!)、イギリスの伝説的プログレ・バンド「YES」のヴォーカリストだったジョン・アンダーソン(ここも個人的にはキング・クリムゾンが贔屓です!)。
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 ワイルドなロッカーとして人気があったビリー・スクワイアー、アメリカではさっぱりだったが、イギリスでは『グッディ・トゥー・シューズ』などのポップなナンバーで抜群の人気を誇っていたニュー・ウェーブのアダム・アンツ。
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 『愛の翳り』や『ヒーロー』(ドラマ『スクール・ウォーズ』で歌われていたあのナンバー!)が大ヒットしたボニー・タイラー、今では伝説になってしまったクイーンのフレディ・マーキュリー、そしてオーストラリアの生んだロック・バンド(一番好きなのはメン・アット・ワークです!)の一つラヴァー・ボーイなどの、いわば80年代を代表するムーヴメントの人たちのナンバーが惜しげもなく投入されているので、音楽ファンにとっては嬉しいサントラの一つです。  サイレントが苦手な方には見やすい作りとなっているかもしれません。機会があれば見てください。十分にその世界観を味わえます。 メトロポリス
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