『混血児リカ』(1972)三部作の第一作目!今では差別用語の連発で、国内流通は無理かも。
これもある種の見せ物映画になるのだろうか。タイトルに大きく、混血児と謳っていて、内容も主人公リカ(青木リカ)は母親(お下げ髪の女学生)が米兵に強姦されてしまった結果として生まれてくるという設定で、生まれる前からすでに不幸で、成長しても継父に処女を奪われ、性的にも虐待され続けて、不良化していく。最後には暴力団と渡り合い、人殺しを重ねていく。
混血は凶悪犯罪にも走りやすいとでも言いたげな描写が散見され、しかも東宝系なのに、東映ばりの切断シーンなどの残酷な映像が目白押しなためか、ビデオ時代、DVD時代を含めて、今でも日本国内では一度もソフト化されておらず、手軽に視聴するのは難しい。
シリーズすべての脚本を新藤兼人が務め、監督も中平康(2作目まで)と吉村公三郎(3作目)が引き継いだように、単なる見せ物映画ではなかったのは明らかである。言葉は激しいが、哀しい運命や生き抜こうとする生命力の強さは出ているので、いつまでも封印しておくのは惜しい。
差別描写が数多く見られるが、そういう困難な状況下においても、なんとかもがきながら、主人公が必死に生き延びていく逞しさは考慮には入れられていないようだ。日本国内よりももっと差別が酷いはずの海外では事情が違うのはよくあることで、『ギニー・ピッグ』と同じようにこの作品群も「リカ・トリロジー」として、三部作がセットとなって、普通にリリースされています。
ぼくは今回、海外に住んでいる友人が遊びに来ていたときに見せてもらいました。内容的にはラス・メイヤー監督の一連のヴィクセン作品群とクエンティン・タランティーノ作品をごった煮にしたような感じで、夜中に狭い小屋で、ビールなどのお酒を飲みながら観たら、ノリノリで楽しめるのかもしれません。
第一作目から主人公役の青木リカは惜しげもなくヌードを披露し、衣装もホットパンツだったり、ストリッパーだったりする。ボンド・ガールよりも過激ですが、この当時に成人映画でもないのにここまでやる人って、希少価値だったのではないでしょうか。あまり大事にはされているようには見えませんが。
東映系のような下世話で下品な趣味の娯楽に徹した作り方はむしろすがすがしく、ヤクザや悪党を皆殺しにしても、主人公の彼女には哀愁が漂い、観ていても、苦い後味が残る。見ていても、どこか主人公であるリカだけではなく、彼女を演じている青木リカも幸薄そうな感じの女優さんで、今どうしているのかは知りませんが、大成功したとは言い難い。
この作品群は人気があったようで、『混血児リカ ひとりゆくさすらい旅』『混血児リカ はまぐれ子守唄』という続編が二本製作され、公開されました。続編になるにしたがい、主題歌は主人公が歌う、演歌調のナンバーになっていくのが昭和という時代なのかもしれません。また後半になるにしたがい、残酷描写もどんどん激しくなっていくが、それがギャグに見えてしまうのは何故だろう。
変り種のアクション映画としてだけではなく、日本映画史の中でのしっかりとした位置を与えて欲しい。差別だけの映画ではありません。やっていることは滅茶苦茶なのですが、映画とは弱者が強く生きていこうとするのを応援するのが本当なんじゃないでしょうか。
この映画よりももっと陰惨で、残酷な女囚さそりシリーズがDVD化されて、普通にレンタル屋さんに並んでいるのに、なぜこのシリーズは駄目なのだろうか。あいかわらず理解に苦しみます。
総合評価 70点
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