良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『マッド・マックス2』(1981)シリーズ最高傑作!大空を翔けるジャイロ・キャプテンが最高!

 前作『マッド・マックス』から2年後の1981年に公開されたのが『マッド・マックス2』です。ぼくがこの映画を見たのは1984年にテレビ放送された時で、マックスの声を柴田恭平、ジャイロ・キャプテンの声をジョニー大倉が務める悪名高いチンピラ・バージョンでした。  この人選は『スターウォーズ』での渡邉徹、大場久美子松崎しげるの悪夢以来のインパクト、つまり吹き替えへの不信を決定的にしました。それでも映画自体は素晴らしい出来上がりでしたので、当時は十分に楽しめました。
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 この頃、家庭に急速に普及しつつあったビデオデッキにしっかり録画して、繰り返し見ていたのを覚えています。北斗の拳の世界観はこのマックスの続編にヒントがあります。  ウェズ(ヴァーノン・ウェルズ)のモヒカンと革鎧のチープな武装やヒューマンガス(ケル・二ルソン)のハゲ頭のホッケー・マスクは普通に考えれば、不恰好であり、お笑いの対象でしょう。
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 しかし彼らは大真面目に、かつパンキッシュに荒野で殺し合いを続けています。パパガッロ(マイケル・プレストン)も最終決戦時にはアメフトのヘッドギアを付けて、死地に赴いていきました。  この映画の世界観、つまり物資に困窮し、明らかに賞味期限などはとっくに過ぎているだろうドッグ・フードですら貴重な食料になって、それを旨そうに食べる様子からもその困窮がうかがえる。
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 人間性が無意味になり、獣性が強くなってきている様子を分かりやすく表現していたのがパンク的なファッションに身を包んだ敵役たちの姿だったのだろうか。レザー・ジャケット、モヒカン、真っ赤に染め上げた髪などはロックの、つまりは不良のアイコンでした。のちにそれらは北斗の拳の悪役に引き継がれていく。  また立て籠っている基地内には家畜が飼われているのも持つ者と持たざる者の対比を描いているようにも思える。一歩間違えれば、奪う者と奪われる者の立場は変わっていたのでしょうし、ヒューマン・ガスらがもともと油田を押さえていたならば、地方の一大勢力として、山賊のように君臨していたのでしょう。
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 パパガッロらは善玉として描かれているが、他の地域では悪党が物資を握っているところもあったでしょうから、いずれは原始的な戦国時代の様相を呈していくのでしょう。  この物語では文明が壊滅するような大きな代償を払っても、しょせん何一つ変わらない人間の本質が描かれているのではないか。
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 石油という過去の戦争の要因となった物質にすがり続けながら、殺し合う様子は滑稽であり、哀しくもあり、いまだに石油を奪い合う様は異様な光景に映ります。  ガソリンと銃弾ではどちらが希少価値があるのだろうか。弓矢が主力兵器になっているようなので、銃弾はすでに撃ち尽くしたのでしょうか。
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 この映画で強く印象に残るのはもちろん大型トレーラーで爆走しながら、殲滅戦に臨むマックス・ロカタンスキー(メル・ギブソン)をはじめとする囮部隊の決死行であるのは間違いない。  ただカーチェイスのみが見せ場だけのアクション映画ではない。脱出しようとした決死隊に襲い掛かり、集団レイプしたあとに非情にボウガンで射殺すシーンは中学生だったぼくにはかなりショッキングでした。
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 ジャイロ・キャプテン(ブルース・スペンス)が操るオート・ジャイロを最初に見たときはぼくも乗ってみたいなあと憧れましたし、なんといってもV8インターセプターを駆るマックスのカッコよさにノックアウトされたのはぼくだけではなく、いまだに多くの映画ファンと乗り物好きが一度は乗ってみたい夢の乗り物なのではないか。  オート・ジャイロとジャイロ・キャプテンはこの映画では不可欠な存在で、殺伐で陰惨な物語にオーストラリアにまだ残っている大陸的なユーモラスなアクセントを与える。また画面構成への貢献はずば抜けていて、ともすれば地べたを這いつくばっている映像が大半を占めるなかでの立体的な空からの視点は観客に強い印象を与えています。
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 前作で大活躍したV8インターセプターは残念ながらこの映画の中盤で自爆してしまい、また良い味を出していた愛犬も射殺されてしまい、ファンたちを悲しませましたが、大型トレーラーを運転するメル・ギブソンは男の中の男であり、あの爆走はその後のアクション映画よりも強く思い出に残っています。  今見れば、カットの切り換えもオーソドックスな単調でショボい映像だと言われるのでしょうが、当時はスリリングな作品でした。過去作品があるから今の作品が生まれてくるわけでその逆ではない。そこをはき違えるとモノの価値は分からなくなります。
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 この映画が影響を及ぼしたのはまずはまだ成功していなかった若き才能たちでしょう。低予算でも設定次第では素晴らしいSFを製作できるというモチベーションを彼らクリエイターたちに与えたことは大きい。  またチープな武装も当時はスタイリッシュで個性的と評価されたからこそ、その後の亜流や北斗の拳のようなサブカルチャーに設定が流用されたのでしょう。
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 ブーメランの少年(エミル・ミンティ)が長老となってから、マックスを回想するというフラッシュバック手法も上手く機能していて、パパガッロ、マックス、ジャイロ・キャプテン、そしてこの少年というリーダーの変遷を物語る。  ひとりぼっちの彼はあまり大切にされている様子はなく、マックスに付いていこうとしたりと可愛らしい様子も描かれている。オルゴールを大切そうに握りしめているシーンは印象に残ります。ウェズの愛人をブーメランで倒したり、マックスを逃がしたり、ジャイロ・キャプテンとともに何気に大活躍しているのがこの少年です。
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 この部族の国創りの神話は迫力と誇り、そして冒険に満ちていて、唯一マックスの生死のみが不明のまま幕を閉じる。  この少年は数年後にメル・ギブソンティナ・ターナーと出会い、マスター・ブラスターと金網デスマッチを行うのを知らない。そして僕らも最終作であるはずの第四弾がどうなるのかを30年近く経った今でもまだ知らない。 総合評価 85点
マッドマックス2 [Blu-ray]
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2010-04-21

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