良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『スプリット』(2017)タイトルは分裂!ボウリングならピンチです!

 今週はじめに社内研修が本社で実施されることになり、当日は普段通りに朝5時過ぎには起床し、もうスーツの支度をしていました。  まずは京都まで在来線で向かい、一年ぶりに新幹線に乗りました。昨年は惜しくも雨で見られなかった富士山を肉眼で久しぶりに見ながらの移動でしたので、まるで小旅行気分でした。  静岡や神奈川の沿岸部に住んでいる人(かつて子供時代を過ごしました)からすれば、日常の風景でしょうが、離れてみると大きさや美しさは感慨深い。感慨に耽る間もなく、東京に着くとさらなる移動に次ぐ移動で疲れてしまいます。  研修が始まるのはお昼時で終わるのは午後5時でした。残念ながら、終わったら遊びに出れるわけではなく、すぐにもと来た経路を逆に回り、移動時間五時間×2のトンボ返りの強行軍でまるでアジア最終予選のサポーターみたいな気分でした。  帰りもなんとか夕暮れ時に間に合い、夕焼けに染まる富士山を見ながら、帰ってくることができました。こちらに住んでいる人は毎日のように見られる日常の風景でしょうが、奈良のど真ん中に住むボクはいつまた今度見られるのか分からない、唯一無二の山の景色です。  文化財がてんこ盛りの町に住んでいる(徒歩で平城京唐招提寺薬師寺東大寺興福寺春日大社などに行けます)ので贅沢なのでしょうが、見る者を惹き付ける魅力がこの山にはあります。  研修そのものは途中まで上手く行っていたものの、普段おとなしい人(同じ支社だがあまり付き合いがない人)が突然暴走し出したために支離滅裂なプレゼンになってしまい、嫌な気持ちのまま、別々に帰りの新幹線に乗りこみました。
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 自分は上手く行っていたのにどこから台無しになるか分からない見本のような結末でした。研修内容はいわゆるインバスケット・ゲームで、五人程度のグループを組み、架空の会社の状況や人間関係が提示され、自分はどう動けば、組織は円滑に回り、会社のピンチを乗りきれるかというものです。  このゲームの特徴は正解がないことであり、司会や書記を決めずに流れで討論を行います。さまざまなトラブルが起こりますが、取捨選択と集中していかねば時間切れになります。  まさに現実のビジネスでも起こることですが、このゲームには無いようで実は厳密にはルールがあります。それは優先度であり、この優先度はただ提示される案件を行き当たりばったりに処理すれば良いというわけではない。  つまり時間軸だけで問題を片っ端から解決するわけではなく、物事の重要性という概念が加わるのです。ざっくり言うと、重要かつ緊急な案件に高い優先度をつけて、早めに取り組まねばならないのです。  具体的には外部にも影響するクレーム処理や自分の課内だけではなく、会社の方針管理を上位に持ってくる全体最適の視点です。それが理解できていれば、優先度が高い案件の上位数件のみを解決して行けますし、討論はサクサク進みます。  しかし、ゲームのルールを理解していない人が数名いるとゲームはグチャグチャになってしまい、収拾がつかなくなります。それが起こってしまったのが今回でした。  帰り道が同じ人たち(暴走した人は独りで帰ったようです)で話していると、暴走が止められなかったのも運の無さかもねとなぐさめ合いながらの帰路です。
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 疲れだけがどっと残る研修でしたが、今日は気分を切り替えてリフレッシュするため、仕事を早く切り上げて、映画館に来ています。  『美女と野獣』という選択肢もありますが、ここはシャマラン節の健在を確認するために『スプリット』を選びました。映画館近くの金券ショップにこれの前売り券が一枚だけ残っていたので購入しての鑑賞です。  シャマランといえば、思い付くのは『シックス・センス』でしょうが、彼の作品でその後に見たのは『サイン』『アンブレイカブル』『ハプニング』くらいですので10年は経っています。  多重人格者の犯罪者と監禁される三人の少女たち(なんかAVみたいですねww)という設定自体はべつに目新しいものでもなく、驚かせることを目的とする音楽、激しいカット割りと残酷描写で見せる、いわゆる見世物映画程度の出来上がりなのか。  それともシャマラン節炸裂の最後の15分だけ見れば、見たことになるパターンなのかを冷静に見ておきたい。扉への執着は今回も健在です。構図的にはヒッチコックが最近のお気に入りなのか、階段シーンが頻繁に出てきます。出来る立場になるとついついやりたくなるのでしょう。  で、見てきました。内容は上手く纏まっているものの新鮮味は無く、ラストもモヤモヤした感じで終わりました。ただロリコン趣味の人が見れば、別の意味の楽しみ方をヒロインのアニヤ・テイラー=ジョイで出来そうです。  彼女の回想シーンの方が興味深く、幼少期は裸で出てくる父方のおじさんにいたずら(もちろん性的)されたり、思春期を迎えてからは強姦されたり、挙句の果ては異常者に監禁されて、キスや添い寝を強要されたりしています。どんどん脱がされていく過程を見るロリ・ファンは「もっと、脱がせ!」と心の中で声を上げていたことでしょう。ちなみに着やせするタイプなので走り出した時にちょっと驚きました。
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 過去につらいことを経験してきた彼女は他の娘よりもメンタルが強く、冷静に脱出を心に秘めながら、23の個性に分裂する主人公ジェームズ・マカヴォイ(24個目の個性はビーストであり、プロフェッサーXではないww)の個性の一つの9歳の子供を操ろうとする。  この映画は登場人物が少なく、主人公の多重人格者を演じたジェームズと過去にトラウマを持つヒロインのアニヤへの負担がかかりすぎているきらいがある。脇役に強めの人が数人いればもっと締まった作品になったかもしれない。  意地悪だったクラスメイトは ジェシカ・スーラとヘイリー・ルー・リチャードソンが演じていますが、魅力的とは言い難い。じっさい、あっさりと殺されてしまいますが、アニヤを目立たせるにはちょうどいい人選だったのかもしれない。  最後の対決では成長過程のオッパイをゆすりながら、多重人格の化け物(最後は異常に筋肉が発達しているビースト)とやり合い、ショットガンをぶっ放す強いヒロインに成長します。  なぜかエンディングにはミスター・グラス(ブルース・ウィリス)がダン役でカメオ出演しています。だから音楽に『アンブレイカブル』が流れるのですね。続編にも登場するよというアピールでしょう。  スタッフ・ロールが終わると告知が入り、何だろうと見ていると『スプリット』と『アンブレイカブル』の世界を融合した新作が2019年に公開されるとのことでした。いったい誰が望んでいるのか分かりかねますが、ヒットしようがコケようが、強引に続編を作ろうとするハリウッドの悪しきトレンドを感じます。  単純に怖くなく、新鮮味もなく、商魂だけは逞しい。監禁したのにすぐ脱走しちゃうのもどうなのだろう。18禁にして、もっとエロくしたほうが集客は望めたかもしれない。ラストシーンで保護者として叔父が迎えに来るが、再会する画はなく、決心した強い目をした彼女はおそらく虐待を警察に訴え出たのでしょう。
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総合評価 52点