『ブレードランナー2049』(2017)遂に完成した続編!う~む…。
今週日曜日、家から一番近いシネコンに『ブレードランナー2049』を観に行きましたが、三連休最後の日曜日ということもあり、家族連れが多く、映画館の前にもたくさん人だかりが出来ていました。
さすがに家族連れがカルト作として名高いブレードランナーを目当てにしているとは考えられなかったので何を観に来ているのか眺めていたら、周りにかなり多くの小さい女の子たちがいることに気づきました。
どうやらプリキュアシリーズの映画のようで、公開に合わせて特設会場ではプリキュアショーも開催されるらしく、疲れきったお父さんたちが娘さんを喜ばせるために会場を遠巻きにして頑張っていました。ここにも奴隷はいるのでしょう。
ただ何も知らない人が見たら、オジサンが一人で小さい女の子たちに囲まれている状態でしたので、下手をしたら最近の風潮だと「あのひと、変なオジサンでは?」と言われかねない感じでした。
先日も知り合いの娘さんの推薦での大学入学が決まり、彼女はお祝いの集金(カツアゲ?)にやってきました。可愛がってきた娘さんでしたので、お祝いを奮発しましたが、若い娘にたかられる体質なのだろうか。
ブレードランナーに戻ります。今回の作品で語られる未来は2049年なので、今から約三十年後です。1982年のオリジナルは舞台が2020年でしたので、さらに29年が経過しています。
映画自体の続編が製作されたのが35年後ですので、この作品が好きだったのに新作を見ることなく亡くなっていった無念の方もいるでしょう。
二十年後のロサンゼルスはより統制されているものの猥雑になった街並みとレプリカント差別は激化しています。まるで人種差別や宗教差別が表面化してきている世界情勢を映し出しているようです。
ちょこちょこアクション・シーンが挟み込まれるのですが、基本的には綺麗な映像美や進化している未来世界を淡々と描いていきますので起伏が乏しく、娯楽作品として一般受けするのは難しそうです。
もうちょっと、つまり編集を上手く使って120分位に収めた方がテンポ良くまとまったのではないか。もっともこれは一般客にアピールするならという前提なので、マニアが見る分には問題はない。
ただ前回のゾーラ、プリス、リオン、バティ(バティストゥータではない!!)、レイチェルらの魅力的なレプリカントは少なく、ホログラムの彼女ジョイ(アナ・デ・アルマス)とウォレス社が送り込んでくる女レプリカントのラヴ(シルヴィア・フークス)以外の印象はない。
それでもこの二人の印象は圧倒的に強く、アナの可愛らしさは尋常ではないのでぜひスクリーンのアップに耐える彼女の美貌を楽しんでほしい。
物語的にはデッカードと本来生殖能力は無いようにプログラミングされているはずのレイチェルとの間に二人の子供が誕生するという処女生誕のような展開に驚きました。
この感じだと第三部は革命までの道のりを、第四部は人間の支配からの革命を、そして第五部ではアナの息子シーザーと人類との和解でも描かれるのでしょうか。
自分が運命の息子だと思い込み、決死の活躍をするレプリカント(ライアン・ゴズリング)の姿は努力すれば夢は叶うのだという幻想に惑わされながら生きている現代人を風刺しているようでした。
免疫不全という病気にかかっている博士アナ・ステリン(カルラ・ユーリ)がデッカードの娘だったというのは唐突すぎるように思えますし、だらだらと二時間以上が経ってから、急にバタバタクライマックスに向かっていく後半に違和感があります。
これならば三時間掛けてゆっくり解決していっても良かったのではないか。どうせ二時間も付き合ったのだから、あと一時間延びたところでマニアは何も批判しないでしょう。ハリソン・フォードが出てくるまで2時間近くかかりますが、真打の登場は遅ければ遅いほど良いので問題なしです。
ビジュアル的には三十年以上の時を経たテクノロジーと表現の進化が随所に見られ、もともとこういう感じで撮りたかったのだろうなあというリドリー・スコットの思いを感じます。
映像の端々に“ブラックレイン”感が強いのは閉口しますが、両方とも好きな作品であるので気にはならない。CGで松田優作と彼を追いかける高倉健とかを復活させてくれたら、もっと笑えたかもしれない。
巨大な映像広告は1982年版では映写されたり、画面に写し出されるモノだったのが、今回は立体的なホログラムになり、巨大な風俗嬢みたいな映像が挑発してきます。
生身の風俗嬢にホログラムの立体映像を写し出してセックスするシーンには驚きはしましたが、未来のダッチワイフはこんな感じになるのでしょう。
その昔、僕の友人はナンパした女の子の顔が好みではなかったとの理由で彼女に祭りで買ったアラレちゃんのお面を被らせて無心に正常位で果てたという経験を語っていましたので、そんな感じだったのでしょう。
音楽面ではエルビス・プレスリー『好きにならずにいられない』やマリリン・モンロー、映像が出てくるジューク・ボックスから流れる(最先端なのだか、アナログなのか訳が分からないw)フランク・シナトラはインパクトが強い。
ただそれ以上にぼくが気になったのは『ピーターと狼』のフレーズで、ピーターのモチーフがライアン・ゴズリングの携帯電話(?)が鳴るたびに流れるのが楽しかった。
CMなどでもよく使われますが、もともと子供に読み聞かせるためのクラシックという異色の作品なので、すぐにお話が始まってしまう曲者です。
なかなかインストだけのテイクはなく、たまに出物があっても手に入れることのできない作品でもあります。
総合評価 78点