良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『地球へ2千万マイル』(1957)大好きな特撮映画の一つ。実は未公開だった。

 アフリカ象の身体の高さはだいたい大柄(そもそも象は大柄だwww)な個体で4メートル弱くらいはあるそうです。それでは我らが金星竜イーマはどれくらいの大きさなのだろうか。

 囚われの身になって、動物園に売り飛ばされた彼はあおむけの状態で身体中を固定され、電流を常に流されている。このとき、横にいる科学者のオッサンの大きさから、イーマの大きさも推測できます。

 アフリカ象と取っ組み合いをしたときにアタマ一つ分だけ高そうですし、途中でオッサンを持ち上げたりもしますので、たぶん5.5メートルくらいで、セクシーな尻尾まで入れると体長は12メートルくらいでしょうか。

 ということは大騒ぎするほど大きいUMAではありません。ただただ見た目がブサイクなだけで、あれほど大掛かりに戦車などの砲撃を食らうほどのことはないでしょう。

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 そもそも幸せにスヤスヤと暮らしていた金星から、米軍によって研究のために無理やり拉致されてきて、人体実験までされてしまう。やっていることはナチスドイツや北朝鮮と変わりはない。戦勝国の驕りです。

 また地球へ拉致されてからのイーマの人生はあまりにも悲惨です。米軍ロケットの故障のために、よりによってマフィア発祥の地であるシシリアに不時着してしまう。

 地元のガキは当然悪質で、自分のものではないし、どう考えても米軍に渡さなければいけない拾得物をわずか200リラで獣医に売り飛ばす。獣医もまた、このどう考えても地球外生物に違いないイーマを動物園に売り飛ばす。彼らがローマに災厄をもたらします。

 獣医と医者の卵の娘はイーマを護送中に巨大化して逃げられてしまい、結局は米軍の厄介になる。この過程で農場主と牧羊犬はイーマの犠牲になってしまう。原因は米軍、獣医、ガキの三者の欲と身勝手さによるものです。

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 ついでに言うと、この娘も曲者で、あくまでも医者の卵であるにもかかわらず、不時着したロケットの生き残りである科学者と軍人の治療を行っています。科学者はまともな治療も受けられずに死んでしまいます。生き残った軍人はこの娘と良い仲になります。なんだかいい加減ですがそれ以上に悪質なヤツがいます。

 特に盗人のガキはマフィアのような狡猾さで米軍と獣医の両者から併せて50万リラと200リラを手に入れる。金を受け取ったガキはその後、全く出てこない。まさに現金な奴なのです。

 ただしあくまでもイタリアリラです。じゃあ、いったいイタリアリラって、どれくらいの価値があるのだろうか。調べて見ると1957年のデータはなく、単純比較は出来ませんが、1リラは0.05円程度(国債の10年物の金利と同じ?)だったので、円換算で25000円程度にしかならない。

 戦後10年くらいだったので、さらに三分の一程度でしょうから、10000円以下でしょうか。米軍将校がニヤニヤしながら、「これで馬も買えるwww」と言いながら、ポケットマネーでガキに手渡しているので、大した額ではなさそうです。いろいろ連合軍の勝者として接しているので、敗戦国を小馬鹿にしている様子が伺い知れます。

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 なにも悪くはないのにあちこちで攻撃され、なんとかコロッセオに逃げ込んだイーマはさらに追い立てられて、最後は戦車の砲撃に遭い、落下して果てる。よく見ると、彼の行動はすべて防衛のためであり、責任はどう考えても、身勝手な人類にある。

 ストーリー展開は『キングコング』の焼き直しにすぎませんが、ウィリス・オブライエンへのオマージュと受け止められています。つまり見るべきは物語ではなく、“最新”の特撮技術であるダイナメーションということになります。

 ハリーハウゼン自身はこの作品をカラー作品として製作したかったようなのですが、予算の関係でモノクロになってしまったようです。彼はさらにゴネまくり、ヨーロッパでの撮影に固執して、その結果としてイタリアでの撮影になっています。のちにカラーライズ版が2000年代になって、ようやく販売されました。

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 イーマがおのぼりさんの様に観光名所であるテレべ川やコロッセオに行ってしまうのはハリーハウゼン自身の希望や願望の投影だったのでしょう。

 それでもハリーハウゼンの手掛けた特撮技術による効果は絶大で、滑らかなイーマの動きはもちろん、閉じ込められていた動物園のコンクリートで囲まれた施設の壁をみなぎる力で押し破るカット、橋を剛力(彩芽ではありません。彼女も宇宙に行くみたいなのでイーマを連れてこないように願います)で破壊するカットは素晴らしい出来栄えなので、一見の価値はあります。

 総合評価 65点

 

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