『ビートルズのレコードとの出会い』買い始めてから40年
お年玉を握りしめて、ビートルズのレコードを買って、不良に遭わないように帰路についたのはたしか1982年でしたので、実に40年も前のことになります。
買ったのは中学に入ってからでしたが、ビートルズをはじめて意識して聴き出したのは1982年のたしか春先にオンエアされた、徳光さんと福留さんの司会の番組でした。
たしかランキング形式で視聴者リクエストのベスト20だか、30だかを発表していき、歌っている映像を流す感じだったと記憶しています。うっすらと覚えている感じでは高島忠夫だった気もしましたが、当時の人気アナ二人だったのです。
ただ、なにぶん四十年前ですので、細部までは覚えていない。ビートルズのドンピシャ世代ではないぼくの耳にもスンナリと彼らの歌が入ってきたのはおそらく幼稚園児の頃に毎日見ていた『ひらけ!ポンキッキ』の影響による所が大きい。
『プリーズ・プリーズ・ミー』を効果音として使い、『ヘイ・ジュード』をペギー葉山のお話のあとにエンディングで流すスタイルは今の感覚でも新しかったと思います。
ついでにコニー・フランシス『カラーに口紅』もよく使われていました。ただ子供の記憶はテキトーなので、『カリキュラ・マシーン』『ママと遊ぼうピンポンパン』『ロンパールーム』『おはようこどもショー』はゴチャゴチャになっています。
中学の同級生のお兄ちゃん(当時は高校生)がビートルズ好きで、その頃の僕らが買えなかったレコードを進学祝いに買ってもらったそうで、そのカタログタイトルは『ビートルズ・ボックス』。夢の八枚組でした。八枚組!
もっとも友人宅で見た『ビートルズ・ボックス』の何だかセンスがトホホな包装や中ジャケにはモヤモヤしましたが、中身の良さには変わりはない。
すぐに全8枚分のコピーを頼み込み、まだ中学生にとっては高かった新品のカセットテープを十本ほど渡し、ついでに『レット・イット・ビー』『マジカル・ミステリー・ツアー』も録音してもらいました。
録音はレコードからだとコピー、ラジオからだとエアチェック、テープからだとダビングと微妙に呼び方が変わり、マニアはしっかりと区別していたのも懐かしい。
TDKもカセットテープを売り出していて、ちょこちょこ使っていましたが、何故かあまり印象が残っていない。
まあ、カセットテープの思い出はともかく、実はこのボックスに収められていた多くの曲のバージョンがレアテイクばかりだったと気づくのは数十年経ってからでした。
そんなこんなで半年くらいはこのボックスを録音してもらったテープを聴きまくり、同じく同時期にビートルズやローリング・ストーンズ、レッド・ツェッペリンなどにハマった友人たちとガヤガヤ感想を語り合いながら、沸々といつかは自分もレコードを揃えたいなあと考えていました。
そして、中2の秋頃、話をしていても誰も持っていなかった『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を買いに行くことに決めました。
するとお目当てのサージェントのアルバムは1500円くらいで在庫があり、すぐに購入を決めて、帰り道は早く聴きたくて、ワクワクしながら歩いていました。
自宅のレコード・プレーヤーにマニュアルで慎重に針を落とすと歓声に後押しされながら、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』が始まりました。
『ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ』『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』などボックスで多くの曲は聴いていましたが、バンドの意図通りの曲順で1枚を聴いていくとまるで別物に思えてきました。
もっともすぐにこのアルバムに馴染めたわけではなく、感受性の強い学生でも『ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー』『フィクシング・ア・ホール』『ラブリー・リタ』などには正直「なんだコレ?」という感じでした。
1980年代にボックス・セットを聴いて、その後がどうなったのか知っているぼくでも「?」の楽曲が多かったので、1967年にリアルタイムで聴いた方はどれほどの衝撃を受けたのだろうか。
さいわい1981年にYMOが出した難解なアルバム『テクノ・デリック』で耐性ができていたこともあり、3回目以降はジョージのインド料理にも対応していました。
当時購入した盤は今はなく、記憶をたどるとシッカリした厚紙ジャケ、ライナーはなし(旗帯ならば分かりやすい)、黒の中袋、レコードは通常の黒盤、会社は東芝EMIでした。
おそらくいわゆる緑帯の“フォーエバー帯”か、1980年代は一般的だった“旗帯”のどちらかでしょう。解説が詳しいのが旗帯盤で、旗帯を購入するときはこのライナー目当てです。
結局、そのレコードは途中、CD発売(CDのインナー・グルーブを最初に聴いたときは故障かと戸惑いました)なども挟みつつ、大学卒業時まで聴き続けました。
実は引っ越し時に業者のミスでほぼすべてのビートルズ関連のレコードを失いましたが、それに気づいたのは一年後に実家に帰ってからでしたので、業者の電話番号なども分からず、どうしょうもない状態でした。
仕事をし出した頃でしたし、CDでは買い直していたため、当時は仕方ないか位の感じで当時全盛期に入りつつあったCDを聴いていました。
ただ忙しい中にたまに聴くCDからはどうしても、かつてレコード時代に感じていた音の感触というか質感が消えていて、社会人になると感受性が鈍ったからと自分に言い聞かせていました。
そんな時代が十数年続き、今から十年以上前にふとしたきっかけにオデオン盤『プリーズ・プリーズ・ミー』が聴きたくなり、ヤフオクに参戦し、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』『赤盤』『青盤』なども落札して行きました。
すると音の温かみというか円やかさがCDとは違うことに気づき、再度ちょこちょこ集めだしました。
ただヤフオクというのは業者次第で粗悪品を掴まされることが多く、未だにその状況は変わらない。ただあくまでも、ちょこちょこと気になったのを落札していた程度でした。
転機になったのはたまに読んでいたレコード・コレクター紙で連載されていた森山直明さんのバージョン違い関連の記事でした。
まだ公式盤として、アップルからもキャピトルからもボックスが出ていない頃です。もっとも公式盤が出るまでにはブートCDでモノラル盤はほとんど持っていました。
ただCDばかりで、レコードまでは進んでいません。とりあえずはCDでイギリス・モノラル盤関連、キャピトル盤関連、各国人気盤を確保し、聴いていましたが、やはりしっくりとは来ない。
仕事も忙しかったので、あまり音楽そのものも聴かなくなり、さらに年月が過ぎて行きました。
『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に関してはステレオだけで犬笛・インナーグルーブのあるなしと何もなくいきなり終る盤などもあり、4枚ほど所有していて、こちらでは赤盤と緑帯盤を購入していましたが、ついにイギリス・オリジナルのモノラル盤を購入しました。(写真はステレオ盤)
最近、自分の中ではビートルズのイギリス・モノラル盤ブームの真っ只中にあり、どうせならとオーディオ・テクニカのモノラル・カートリッジを購入し、本来の音で聴いています。
ステレオ針で聴くとどうしてもパチパチとノイズが多い盤でもモノラル針できちんと聴くと驚くほどノイズが減ってきます。
音がとてもマイルドに再生されます。マイルドというのは優しいというようなイメージでしょうが、ここで言うマイルドとは音の深み、適度な音圧、音の新鮮さのバランスに優れているという意味で使っています。
ステレオ盤が手持ちレコードの95%以上を占めますので、残り5%近くがモノラル盤となります。針圧調整はめんどくさいですが、ヘッド・シェルの予備を購入し、聴く盤により付け替えるのが一般的かもしれません。
僕個人は間違えてステレオ盤をモノ針で再生すると盤を傷つけることを考慮し、前に使っていたプレーヤーをステレオ用、新しい方をモノラル用に使っています。
たださすがに二台持ちは稀でしょうから、最も現実的に無理なくステレオとモノラルを切り替えるには軽い方、おそらくはステレオ・カートリッジを装着しているヘッド・シェルの空いている穴に適合する寸法のビス(たぶん2.5㎜~2.6㎜程度)をホームセンターなどで購入してみましょう。100円くらいで売っています。
考え方としては、重量が違うステレオとモノのカートリッジの軽い方にビスを挟んで加重を掛けることで、カウンターウェイトを重くして、モノラルのウェイトと同重量にすれば、いちいち針圧調整せずともヘッドシェルの交換だけで済みます。
思えば遠くへ来たもんだで四十年前はまさかモノラル盤まで辿り着くとは思いも寄りませんでしたが、これからの数十年も彼ら4人が残した音楽と彼ら二人が作っていく音楽を楽しみたい。新作は当然アナログで購入し続けます。
テクノデリック(Standard Vinyl Edition)(アナログ盤)(特典無し) [Analog]
- アーティスト:YELLOW MAGIC ORCHESTRA
- 発売日: 2019/05/29
- メディア: LP Record
『45回転イギリス盤』ビートルズのシングル盤はパーロフォンとアップルで22枚。
音圧が異常に高い『ペイパーバック・ライター/レイン』『愛こそはすべて/ベイビー・ユー・アー・ア・リッチマン』などをちょこちょことは購入してきたが、昨年末から本腰入れて集めていたのがビートルズが現役時代に本場イギリスでリリースしてきた、ほとんどがモノラルとなる、22枚のパーロフォンとアップルのシングル盤レコードでした。
ステレオ録音盤は『ジョンとヨーコのバラード/オールド・ブラウン・シュー』『サムシング/カム・トゥゲザー』『レット・イット・ビー』くらいで、その他はモノラル録音盤となります。
イギリス盤以外のフランス盤ならば、『レット・イット・ビー』『ロング・アンド・ワインディング・ロード』『サムシング/カム・トゥゲザー』のモノラル録音盤が存在しており、所有しています。そもそもシングル盤は回転数が速いためか、音圧が高めで聴いていると33回転よりも迫力があります。
ビートルズが本国イギリスで出したシングルは22枚と意外にすくなく、圧倒的に販売数が多いでしょうから価格もそれほど高価に成りにくいのかと思いきや、マニアにボロボロになるまで何十回以上も聴かれ続けてジャリジャリで視聴が難しいものが多く、良盤が少ないことに思い当たります。
ジョンのキリスト発言の影響で焚書の憂き目にあったり、そもそも消耗品感覚で雑に扱われたり、捨てられたりしたためか、状態の良い物は少ない。単純にファンだった人が実家を離れ、親が勝手に処分したりするのも多いでしょう。
CD化の際に「もういいや!」でゴミ収集車によって、埋め立て地の礎になってしまったのかもしれない。
そんなこんなで生き残ったレコードたちのうち、日本では中古レコードを買ってきても、ビートルズのレコードほどに聴き込まれているアーティストは少なく、キズも少ない印象が強い。
再びレコードを集め出すと昔の記憶、つまりビートルズ盤は数多く再生されたためにキズやノイズが多いものが多かった思い出にたどり着く。
イギリス盤の特徴としては買った人の名前が入っている、落書き入りの盤がかなりあることでしょう。日本でのファミコンソフトと同じく、借りパクが多かったので、防止策として自分の名前をレコードに記入していたようです。
僕が集めた物にもサインが入っている盤がいくつかあります。日本人のように物を大切にする文化があるとレコードなどもそれほど酷いコンディションになっているモノは比較的少ない。
もっともヤフオク業者には悪質な輩が少なからず存在しており、写真にキズがある面を掲載しなかったり、明らかにダメージが大きく、針飛びを起こす盤を平気で状態が良いなどと嘘を書く者がいます。
そんなときに頼りになるのが地元のレコード屋さんです。ですが、残念ながら、現在ではリアル店舗を構え、状態をチェックさせてくれたり、試聴をさせてくれる良心的な店舗はもちろん、レコード屋さん自体がほとんどない。
わざわざ大阪まで出向くのも現在の武漢ウイルスが蔓延している状況では自粛したい。幸い僕が住んでいる奈良では家から歩いていけるほど近くにビートルズ関連のレコードを専門に扱われているB-SELSさんがあります。
2年以上は通っていて、赤盤やキャピトル盤、フランス盤などを集めてきました。ここ半年はイギリス盤の魅力に取り憑かれ、パーロフォン盤を中心にガンガン買い集めては自宅のステレオで聴いています。そしてとうとうパーロフォン赤盤の『ラヴ・ミー・ドゥ』を集め終わり、22枚すべてが自宅に揃いました。
イギリス盤のディスコグラフィは以下の通り。
『ラヴ・ミー・ドゥ/PSアイ・ラヴ・ユー』(全英17位。以下全てイギリスチャート)
『プリーズ・プリーズ・ミー/アスク・ミー・ホワイ』(1位)
『フロム・ミー・トゥ・ユー/サンキュー・ガール』(1位)
『シー・ラヴズ・ユー/アイル・ゲット・ユー』(1位)
『抱きしめたい/ディス・ボーイ』(1位)こいつって、なんか書きたくないwww
『キャント・バイ・ミー・ラヴ/ユー・キャント・ドゥ・ザット』(1位)
『ア・ハード・デイズ・ナイト/今日の誓い』(1位)
『アイ・フィール・ファイン/シーズ・ア・ウーマン』(1位)
『涙の乗車券/イエス・イット・イズ』(1位)
『ヘルプ!/アイム・ダウン』(1位)
『デイ・トリッパー/恋を抱きしめよう』(1位)いつみても変なタイトルwww
『ペイパーバック・ライター/レイン』(1位)
『イエロー・サブマリン/エリナー・リグビー』(1位)
『ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー/ペニーレイン』(2位)
『愛こそはすべて/ベイビー・ユー・アー・ア・リッチマン』(1位)
『ハロー・グッドバイ/アイ・アム・ザ・ウォルラス』(1位)
『レディ・マドンナ/ジ・インナー・ライト』(1位)
『ヘイ・ジュード/レヴォリューション』(1位)
『ゲット・バック/ドント・レット・ミー・ダウン』(1位)
『ジョンとヨーコのバラード/オールド・ブラウン・シュー』(1位)(ステレオ)
『サムシング/カム・トゥゲザー』(4位)(ステレオ)
『レット・イット・ビー/ユー・ノウ・マイ・ネーム』(2位)(ステレオ)
最後に買ったのがデビュー・シングル『ラヴ・ミー・ドゥ』の赤レーベル盤です。この盤が貴重なのは当時ここまでビートルズが売れるなどとは誰も想像できなかったためか、現在というかもともとオリジナル・マスターが存在せず、後の録音は出来上がったシングル盤からの直落とししかないという驚きの理由からです。
『ヘイ・ジュード』は一般的にはアップル・レーベルからのリリースですが、パーロフォンにも販売権があったようで、欧州輸出用のシングル盤には黒いパーロフォン・レーベルが貼られています。
どうせなら、出来るだけパーロフォン盤をと思い、盤質が良く、キレイなスウェーデン製ジャケットが付いている盤を選びました。コツコツ増やしていき、気に入った盤を買い求めて行きましたので、どうしても時間は掛かります。
他のお客さんが来たときにみんなで珍しいモノを聴きながら、その盤の印象やレア度などの感想を話したり、デリケートなレコードのケア方法などの情報交換、ヤフオクでの失敗談などを語るのは学生時代のようで懐かしい。
「赤盤」「ナガオカ」「モノラル針」「キャピトル」「ドーナツ盤」「マトリックス」「初回盤」「VG」「EX」などの言葉が飛び交い、皆がその意味を理解している空間はなかなか現在の日本には存在しません。これからも通い続け、のんびりと気に入ったレコード盤を集めていくつもりです。
『トパーズ』(1992)村上龍の小説を本人が監督し、映画化。カルトかも?
1980年代後半、いわゆるバブルという株や不動産投機で世の中が大騒ぎし、ディスコで踊り狂っていた頃、地味な片田舎の大学生だった僕には東京や大阪の喧騒はニュースで見聞きする程度でした。
それでも徐々に近所の田んぼや畑、駅前がどんどん再開発されたり、久しぶりに会った、都会の大学に通っている友人たちのファッションや外車を乗り回す姿に「踊る阿呆に見る阿呆だな。」と思いつつ、景気も良さそうだし、みんな楽しそうだし、こんなもんなのかなと日々を過ごしていました。
そんな頃、ぼくに衝撃を与えたのが村上龍原作の小説『トパーズ』でした。風俗嬢が客が来るまで控えている待ち屋の様子や人間関係、そこで行われているSM行為は異常そのものですが、提供者である風俗嬢は暮らしぶりは地味で、派手さもない。
映画としてはアートフィルムっぽい感じで、筋を追うタイプではありません。活動写真を楽しむタイプの映画です。最後に観たのは1990年代後半でしたが、数十年経っても覚えている場面はいくつもあり、高層ホテルの一室にいる加納典明が呼びつけたボンテージルックでほぼ裸のミホを窓に向かって手をつかせた状態で、尻を振らせる。
そのまま夕日が落ちるまで、数時間納得するまで腰を振らせ続けるドSプレイを楽しみ、その後、自分の女を呼び、ミホに繋がっている部位を舐めさせる異常行為を堪能します。
その他、夜の公園でオペラの歌に感動して涙を流すものの、結局は何事もなかったように電動コケシやSMプレイ道具が入っている赤いバッグを抱えて指定場所に向かっていくシーン。
手話を交えて、サルサのリズムに腰を振りながら観客を挑発するエンディングに繰り返される『ジェゲ・ジェゲ』もちょうどクライマックスにかかる間奏部分が演奏される。けっこう数十年経っても覚えているシーンが多く、驚きました。
あれだけ稼げた時代に風俗嬢としてしか生きて行けなかったのはよほどの事情があったのだろうとは今となれば、それなりに理解は出来ますが、当時はそんなことには思いも及ばず、昔の人たちが永井荷風や谷崎潤一郎、田山花袋の小説を陰でコソコソ読んでニヤついていたのと同じような思いで、『トパーズ』の各章に向き合っていました。
その後、大学を無事に卒業後、何気なく新作映画の記事を見ると、なんとこんな風俗嬢の話が映画化され(地元映画館にも掛かったが、いく前に終わってしまった)、ついにはレンタルビデオ屋さんに大量に並ぶ日が来ました。
村上龍作品は何度も映画化されていて、デビュー作品『限りなく透明に近いブルー』『だいじょうぶマイ・フレンド』『トパーズ』『KYOKO』『ラヴ&ポップ』『オーディション』などはビデオなども発売されました。
村上龍本人も監督していて、正直言いますと「餅は餅屋に任せろ」とも思いますが、ファンならば、そこそこ楽しめます。
『トパーズ』は音楽が素晴らしい。オープニングで響き渡るキューバの国民的サルサ・ドゥーラ(ハード・サルサ)の雄であるロス・ヴァン・ヴァン(ロス・バン・バン)の『ジェゲ・ジェゲ』が作品の方向性を決定づける。
天才ベーシスト、ファン・フォルメル、同じく奇才チャンギートが乱れ撃つドラミングの凄まじさに触れるとレゲエが霞んできます。
ただレゲエは生き方でもあるし、ボブ・マーリーのレコードも大好きで、『LIVE!』『カヤ』『レジェンド』などは今でもちょくちょく聴いています。
ロス・ヴァン・ヴァンのアルバムはCDならば、今でも日本盤が安価で手に入りますが、レコードはそもそも発売されてないようで、イギリス盤やキューバ盤を探さなければいけません。これがとても難しい。
理由の一つはCD化された時に僕が聴いてきたアルバムタイトルと当時のキューバで発売されていた原題が違うことです。例えば、最高傑作と呼ばれる『coleccioN Juan Formell Y Los Van Van Vol. Ⅲ』は『1974』としてタイトルされています。
この『1974』はロック・ファンならば、一度は聴いてほしい傑作です。ラテンに持っている明るくテキトーというイメージは覆ります。
CDの最後に収録されている『キューバ人の勇気とプライドは永遠だ』はアルバムの締めとして最高なのですが、CDのみのボーナストラックだと後に知り、愕然としました。
もうひとつ、レコードで聴くのが難しい理由があります。それは海外盤、とりわけ中南米各国ではレコードは信じられないくらい雑に扱われていて、盤に傷があるのは当たり前、ジャケがボロボロなのは当たり前、落書きなんか当たり前、針飛びしなかったら上等なのです。
よって事情はキューバも一緒です。イギリス盤を選ぶのが無難でしょうが、そもそも需要がなく、出物もない。
これだけ世界中に害毒を撒き散らしておきながら、なんら謝罪も賠償もすることなく、更にはウイグル族を虐殺し、台湾やフィリピン、インドやわが国に戦いをふっかけてくる共産中国はナチスの21世紀版であり、打倒しなければならない。
これら様々な要因が重なっているため、なかなか難しいのは分かります。アナログに思い入れがなければ、CDでも十分でしょうが、いつか『Ⅲ』を手に入れたい。
内容的には首をかしげる描写が多々あるでしょうし、風俗で働く人々やそれを消費して、彼女らをモノとしてしか扱おうとしない変態富裕層の姿は吐き気を催します。
それでも都会のビルをバックに女の姿を舐めるように写しだすカメラの視点や拘束されて目隠しされて、覚せい剤を無理やり注入される風俗嬢の様子は退廃的ではあるが、現在の視点で見ると完全にNGでしょう。
個人的にはそれらの映像のインパクトが大きく、ジャケットや宣伝でも頻繁に使われていた印象があります。村上作品では『限りなく透明に近いブルー』以外は当時からだいたい抵抗なく受け入れてきました。
総合評価 69点
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2021)なんだかんだで楽しませてくれました。
なんだかマスコミは昨夜辺りから、新しいキラーワードとして“まん防”と騒いでいますが、なんともワードセンスが低く、「“マンボウ”って魚かよ!」とか、「浜辺美波で話題になった“あ~、う~ マンボ!”かよ!」と突っ込んで笑ってしまい、イマイチ緊迫感はない。
緊張感がまるでない一部の市民はお花見だとか、自粛疲れだとかバカみたいな甘いことを言いながら、二週間後に変異種に罹って、後悔するのだろうか。そもそもこれまでが自由過ぎただけですから、自制しましょう。
偶然ですが、今回観に来ているのは前回、実に9年前に『新エヴァンゲリオン劇場版 Q』を観たのと同じ映画館です。いやあ、9年前か!
9年間の間には色々なことがありましたが、新劇場版が始まってからでも十数年前が経ち、ようやく完結編まで漕ぎ着けてくれたのは嬉しい。
どういう結末が訪れてもそれを受け入れよう。いつまでもグチャグチャ文句を垂れるクレーマーにはなるまいと心に決めて、スクリーンに臨んでいます。
最初にテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』26話の有名なラストシーンを深夜放送で見て、「おめでとうって、いったい?」とイスからひっくり返りそうになってからでも20年以上の年月が経っています。
ここからはネタバレがありますので、観に行く予定のある方はせっかくなので、できるだけ情報を入れずに楽しんでください。ぼくも今日まで興行収入のニュース以外はまったく情報を入れずに観に行きました。
タイトルは『シン・エヴァンゲリオン劇場版※』となります。※のところはⅣではなく、音楽のリピート記号が入りますので、暗示するのは繰り返し。ちょっと嫌な予感もあります。
さて大河ドラマのような劇場版4作目であり、最終話となる今作品をさきほど見終わって、最初の印象を起承転結で言います。
マリちゃん大暴れの「起」、物語の大半を占めるシンジくんが半年くらいもウジウジ&引きこもりに明け暮れて、体感2時間以上に感じる「承」。
解決後に少し大人びたというか、大人になった(呪いが解けた?)シンジくんがまさかのマリちゃんと恋人未満っぽい関係になっていることにホッとします。アスカはかつての旧友ケンスケとの生活を選ぶようです。トウジは委員長と子供まで作っています。
大人たちの勝手な都合で戦場に立たされたシンジくんにもようやく平穏な日々が訪れたようです。この描写の後にまさかの実写シーンが入ったり、前作ではアスカに手を引っ張られながら、子供のように連れて行かれていたシンジがなんとマリちゃんの手を引っ張っていく成長に驚かされました。
長年エヴァンゲリオンを追いかけ続けてきたマニア全員を納得させることは不可能であるのはやる前から分かっていることで、製作サイドは腹を括って、自分たちが納得できた結果がこれだったのでしょう。
一回見ただけですべてを理解するのは不可能でしょうし、いずれBlu-rayが発売される時には予約し、何度も繰り返して楽しみたい。いつか見たようなシーン(『Air/まごころを、君に』、アニメシリーズ第26話)ややりとりや異空間があちこちに出現するのでこれが今誰が話している世界なんだろうとかややこしい。
マリちゃんがゲンドウや冬月と話していたりするカット、カジさんがカヲルくんに「司令」と呼ぶカットがあったりとなかなかまた伏線を撒いているようにも思える場面がちょこちょこあったりするのでファンとしてはどういうことだったのかとかも楽しめます。
なんだかんだ言いながら、20年以上の長きに渡り、楽しませてくれたことに感謝したい。まだかな、まだかなと新作を待ちわびる日々がもっとも楽しく、それを楽しめるのがエヴァなのです。
さらば、全てのエヴァンゲリオン。
言い得て妙なコピーです。
自分自身のエヴァへの思いであり、マニアたちへの挨拶だったのかもしれない。
もうごちゃごちゃ言わないでね!という願望かもしれません。
総合評価 80点
『東宝特撮未使用フィルム大全集』(1986)DVDは21000円!
今週始めは朝の八時前に近所のB-SELSさん(奈良駅近くにあるビートルズレコード専門店)で購入したイギリス・パーロフォンのモノラル盤『リヴォルヴァー』のオープニングを飾る『タックスマン』を聴いてから、奈良駅方面にあるお役所に向かいました。
そうです。今週から税務署で確定申告の受付が始まりましたので、早速休みが取れたこともあり、今年は確定申告開始の初日に書類を提出しに出かけたのでした。
午前8:30くらいでしたが、すでに確定申告会場には相談の列に50人、提出の列には20人ほどがソーシャル・ディスタンスを取らされ、寒空に並んでいました。
僕は昨夜にPCで書類作成を済ませていましたので、提出の列に加わりました。最近どこでも行われている消毒と検温がありましたが、寒空にいたため、ほとんどの人の体温は33度と表示され、「死んでますねwww」とお互いに笑いながら、自分の番まで待っていました。
こちらに並んでいるのはある程度、普通にPC操作が出来て、書類作成が既に完了している人たちなので、スムーズに列は捌けていき、15分程で係の人に呼ばれて自分の番となり、すぐに手際良くタックスマンによるチェックが進み、「寒い中、お疲れ様でした。」の言葉をいただき、会場を後にしました。
出ていく頃には相談の方は80人、提出の列にも60人ほどが並んでいました。ぼくもあと二十分遅かったら、かなり待ち時間があったのかもしれません。
確定申告を初日に行うのは初めてでしたが、武漢ウイルスへの警戒もあり、少なめだったのかもしれません。今回の確定申告では医療費控除、ふるさと納税、外国株式の配当控除などの手続きを行いましたので、数万円ほどの還付金が返ってくることになります。
ネット上で全て完結させることも可能ではありますが、年一回のイベントとして、毎年直接出向いています。午前中に確定申告も終わり、自宅でゆっくりレコードを聴いた後、ついさっき手前を通過したレコード専門店に入り、パーロフォンの『ヘルプ!』『ア・ハード・デイズ・ナイト』『ジョンとヨーコのバラード』を購入してきました。
『ジョンとヨーコのバラード』はステレオテイクですが、45回転で流れるロックは33回転よりもパワーがあり、その他はモノラルですのでかなり迫力があり、現役時代のビートルズの音源を極東の日本で半世紀の時を越えて聴くのは楽しい。
さて家に戻ってから聴いたのは1986年に発売された今回記事にした『東宝特撮未使用フィルム大全集』のサントラ盤の位置づけをされているレコード、『オスティナート』でした。
このアルバムの存在を知ったのは大学生の頃で『ゴジラVSビオランテ』『ゴジラVSキングギドラ』を一緒に観に行った特撮仲間から「ゴジラ音楽を大まかに押さえるなら、"おすてぃなーと"が良いよ!」と聞かされたときでした。
"おすてぃなーと"?なんか"ぞうぶつがほざい"くらい聞いたことのないワードでしたが、ぼくはその時ボンヤリと聞いていたので、「おすてぃなーと」を薄っすらと記憶に留めている程度ですぐに忘れ、そのまま数十年が経過しました。
そしてつい最近、久しぶりに見たくなった『東宝特撮未使用フィルム大全集』のDVDを探してみると、なんとDVDボックスの特典映像ディスクとして収録されているのみで21000円とかで売られていました。
すると目に入ったのが『東宝特撮未使用フィルム大全集』のレコードのオークションでサントラ盤にはあるタイトルが表示されていました。
そのタイトルこそがかつて旧友から聞かされていた『オスティナート』だったのです。反射的にこちらも落札しましたが、出品自体がかなり少なく、二枚しか出ていないうちの一枚でした。
オリジナルの古い音源の良さは別格ではありますが、機材が揃い、しっかりと再演されたサントラ収録曲は解釈が新鮮で、これはこれで心地よく聴けました。CDはレコード盤よりも収録曲が多いので、興味のある方は探してみてください。
本筋に入りますと今回久しぶりに見た『東宝特撮未使用フィルム大全集』は出来が悪いわけではないが、本編の流れに合わずに惜しくもカットされたシーン、撮影現場の様子、田中友幸・本田猪四郎の黄金コンビや中野昭慶らスタッフのインタビュー、文字通りのNGシーンなどのフッテージを60分に詰め込んだファンにとっては貴重な映像がてんこ盛りです。
前半は戦争物映画での特撮の貢献が理解でき、後半は待ってましたのゴジラシリーズ特撮の様子が語られて行きます。
東宝の所有する広大な敷地内に作られた巨大なプールに表現された海のセットに注ぎ込まれた数トン以上の寒天を見ると、作り込みへの熱意に驚かされます。
今なら手軽にコンピュータでチョイチョイな所を人力とアイデアで形にして行く過程を覗き込めて楽しくなります。
書籍などで知ってはいても、実際の様子を映像で確認出来るのがこのビデオの最大の売りでしょう。『怪獣総進撃』で惜しくも日の目を見ることなく消されてしまった、幻の『ゴジラ対マンダ』のシングルマッチはプロレス的に言うと、地方会場のメインイベント程度でしょうが、ギリギリまでは本編に盛り込まれるところまでは仕上げられていたのだなあという感慨に浸れます。
残念ながら、今回は変身人間シリーズに着いての言及や映像がなかったのですが、多くの作品をカバーしています。笑えたのは『キングコング対ゴジラ』でのゴジラによる熱海城破壊シーンで、堀に躓いて城に倒れ掛かり、城壁をグチャグチャにするはずが、城のセットがかなり頑丈なためにゴジラ(中のスーツアクターさん)が壊せずに、「どうなってるんだ?」とスーツの中で悲嘆に暮れるという一連の映像です。
その他ではドゴラの不思議な動きの作り方、自衛隊(防衛軍?)の戦闘車両のラジコンが動作不良で止まってしまい、後続車が玉突き事故のようにストップする様子は可笑しいのだが、なぜか哀愁を誘います。
総合評価 70点