良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ノストラダムスの大予言』(1974)<パート1>映画界において、言論の自由は無に等しい。

 この幻の作品『ノストラダムスの大予言』を僕がTVで見たのは小学生の時で、多分1978年か1979年だったと記憶しています。女の人の暗い声でのナレーション(実は岸田今日子!)があり、「1999年七の月に、空の魔王が降りてくる!」だったかな?なんだか不気味なナレーションを覚えています。怖くて、しばらくは憂鬱な気持ちで過ごしていました。
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 その日にどうやって遊ぶかとか、おやつに何を買おうかとか、掛布は打つかなあとか、TVはなんか面白いのはあったかなとか以外は何も考えていない小学生だった僕がはじめて「命って何だろう?」「死ぬのは怖いなあ…」「予言が当たるんなら、貯金とか将来の夢なんて無意味だなあ…」などと不毛な議論を頭の中でしていました。  それほど、あのおっちゃんの予言のインパクトは凄まじかったんでしょうね。なんだかんだいって、1999年の7月には将軍様テポドン通天閣に飛んで来るんじゃないかとか、2000年問題でコンピューターがおかしくなって、核ミサイル装置が誤作動するんだろうとか、まことしやかに囁かれていました。
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 つまり1970年代に観た一本の映画の内容を20年以上引きずったまま、人生を送った人は結構な人数でいたのではないでしょうか。そのあとに五島勉の本やら、ムーやら、宗教団体教祖のノストラダムス本も読みましたので、個人的にもはまっていたんでしょうね。  1999年。あの年は携帯ガス・ボンベがアホのように売れていましたねえ。ガスが止まるんじゃないかとか言ってましたね。1月1日以降のその年の冬はやたらと鍋料理が多かったのはどこの家庭も一緒でしょう。『ふるさと』以降、人気低迷していたモー娘。後藤真希を迎え、やけくそになって歌っていた『LOVEマシーン』がやたらと有線でかかっていたのも懐かしい。  だいぶ話が逸れました。作品中ではノストラダムスが予言したといわれる内容が(今思うとただの後出しジャンケンにしか思えない!)延々と語られていました。予言によるとナポレオンの台頭も失脚も、ヒトラーの台頭も失脚も、なんでもかんでも「彼は知っていた!ふっ!ふっ!ふっ!」って感じでした。  映画の公開からは時期が逸れるのですが、ついでに後年のチェルノブイリ事故も「ニガヨモギ」のロシア語はチェルノブイリなんで、「やっぱり、ノストラダムスは正しいんだ!」的な内容が宗教界やカルト雑誌『ムー』で特集されていました。
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 エドガー・ケイシーさんも20世紀中に日本は半分以上が海に沈むみたいなことを言ったそうです。五島勉?とか何とかいう人の本もよく本屋さんで売ってました。この10年全く見ませんね。ノストラダムス・ビジネスも終わったんでしょう。  今は圧力団体か何かのために、国内では放送も発売もされていないので、海外版のレーザー・ディスクか、劣悪な古いビデオ映像でしか見られないようです。結構有名な作品でも現在見ることの出来ない映像が幾つかあります。
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 有名どころでは『ウルトラセヴン』の第十二話『遊星より愛をこめて』のスペル星人のエピソードは欠番扱いにされたまま、40年近く経ってしまいました。知らない方のために内容を書いていきますと、友達に聞いただけなので、うろ覚えでなんですが、たしか、このスペル星人の星では最終戦争が起こり、住めなくなってしまい、食料もない。
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 彼らにとっての食料は人間の生血で、子供たちを狙って地球に来たという内容だったと思います。エピソード的にはSF的世界観が持ち味のウルトラセヴンらしい作品だったのでしょう。しかし悲劇は突然起こります。子供向け雑誌か何かの記述で、スペル星人の横に「被爆星人」の説明を出版元が円谷プロに無断でつけてしまい、ついにトラブルが発生します。
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 それに対して内容も何も確認せず(昭和42年か43年でビデオなんかない時代にリアルタイムで観た人、しかも「大人」が何人いたというのだろうか!)、反核団体がクレームをつけて、それに事なかれ主義の円谷プロも屈服し、闇に葬られてしまったというのが真相でしょう。
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 その円谷プロも今は会社としては力が無くなってしまいましたので、このままでは永久に何もなかったかのようにスペル星人は抹殺され、大人の原理だけが罷りとってしまうのでしょう。臭いものに蓋というのは大人の世界の常識かもしれませんが、子供たちの財産である『ウルトラセヴン』にまで介入する姿勢は許せない。 それはともかく、1979年?以来一度も観ていない『ノストラダムスの大予言』も映像で覚えているのはさすがに断片的です。
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1.探検隊が二班編成され、第一班は核で汚染した地域のジャングルで原住民に襲われ、たしかヒロインか主役が渡したライターを持っていった友人が殺されている。それを探索に行った主人公等もジャングルで襲われる。この行も今の規制コードには人種差別やら、核問題などで削除されるのでしょうね。 2.暴走族かなんかがコインの裏表で何かを決めたと思ったら、バイクに乗ったままで、刹那的にガード・レールを飛び越えて、集団自殺するシーン。 3.小麦の値段か何かが高騰して、民衆がスーパーやら工場に殺到し、暴走族っぽい兄ちゃん達が倉庫を襲い、みんなに食料をばら撒くシーン。 4.異常に発達した少年が無茶苦茶速く走り、学校の壁でもひょいと飛び越える。 5.ゴーガかナメゴンみたいな巨大な突然変異の生物が現れ、それを警察?か自衛隊みたいな人たちが焼き殺そうとする。
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6・主人公の彼女が子供を妊娠し、丹波哲郎と一緒に海かどこかを眺めている。 7・光化学スモッグの過激版が日本を襲い、その光を浴びたものは発火して死んでしまう。(あれ?これはヘドラかな?)
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8.核戦争がついに始まり、ボタンが押され、核ミサイルが各地に飛んでいく。爆発の凄まじさで山が割け、大洪水が起こる。世界中が破壊されていく様子が映し出される。しばらくすると、核のコントロール・ルームの様子が差し込まれる。軍人のオペレーターが座っているのだが、全員既に死に絶えている。
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9.何年後かの荒れ果てた世界が映し出される。そこに蠢く物体がいる。アップになった画面には醜いミュータントのような生物がなんか変な餌を奪い合うというシーンが映し出されている。たしかここで映画は終わる。このへんもおそらく、反核団体いちゃもんをつけるポイントになっているかもしれません。  結局のところ、そういった悲劇を起さないようにするためになされた演出をすべて「差別助長」の一言で片付けて、子供たちに見せないようにするという発想は間違ったものの見方ではなかろうか。情報を開示したうえで、大人達が教育していくのが本筋であるべきでしょう。  スタッフは舛田利雄監督、川北紘一が特撮、キャストは丹波哲郎黒沢年男平田昭彦志村喬司葉子らが出ています。つまりお金がかかっている映画だったってことでしょう。  この映画を分類するとすれば、空想特撮映画のうちの一本という程度にすぎず、ちゃちなものだったのかもしれません。しかし僕等にとっては衝撃を受けた作品であることは間違いないので、「思い出の映画」を奪われてしまった感があります。  東宝円谷プロも、言論の自由を守るために圧力団体と闘うべきではなかったのではないだろうか。観たら、案外つまらないものでも、隠されてしまうと無性に観たくなるものなんです。一部マニアが蠢く、法外な商売が罷り通っているのはこの作品の中古レーザー・ディスクが5万円近い値段でヤフオクで表示されているのを見たら明らかでしょう。  「18禁」でも一向に構わない。ただ発売禁止にするという発想が許せないだけなのです。 「か~~えせ~~!か~~えせ~~!」 総合評価 65点