良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ゴジラVSデストロイア』(1995)ゴジラ死す!でも復活する…。

 今回の『ゴジラVSデストロイア』は昭和シリーズから繋がるゴジラ映画にいったん区切りをつける意味では重要な作品となります。オキシジェン・デストロイヤーは初代ゴジラを殺傷しましたが、今回はデストロイアと名付けられたモンスターが最後の刺客として現れます。  まあ、実際にはその後も『モスラ2 海底の大決戦(1997)』『モスラ3 キングギドラ来襲(1998)』『ゴジラ2000 ミレニアム(1999)』『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦(2000)』『ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃(2001)』『ゴジラ×メカゴジラ(2002)』『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS(2003)』『ゴジラ FINAL WARS(2004)』などスピンオフ作品が続々と登場しました。  それほど人気のあるキャラクターではありますが、さすがにただ出てくるだけではインパクトは無くなってしまっている。そこを補うのがドラマ性ではありますが、東宝はそこを怠り続けたためにスター性を無駄にしてしまいました。  主な出演者は以下の通りです。辰巳琢郎石野陽子、村田雄浩、小高恵美篠田三郎中尾彬高嶋政宏神山繁平泉成藤巻潤小野武彦、そして河内桃子です。
画像
 オリジナル版のヒロインだった河内桃子を再登板させたのはこの作品に重要な意味を持たせるためだったことが推察できます。作中でもオリジナル版の平田昭彦志村喬(写真)が回想シーンで登場するのがファンには嬉しい。  これほどの“今まで見てくれてありがとう!”演出をするのであれば、そのあとにダラダラとスピンオフを作り続けたのは何故だったのかは興行面以外では理解に苦しみます。設定では今回の肝はゴジラを攻撃できないという制約があることです。攻撃すると核分裂を起こし、放って置くとメルトダウンを起こし、地球に穴を開けるかもしれないという状態になります。  核分裂を起こされると本土で大爆発を起こしかねない状況で自衛隊が送り出す(実際は勝手に出動?)のは平成シリーズではおなじみの高嶋兄弟のおにいちゃんが操るスーパーX3であり、攻撃手段は火器兵器ではなく、冷凍兵器という選択でした。  冷凍兵器のアイデアは『シンゴジラ』でもゴジラを凝結させる訳ですから、奇を衒ったものではなかったことが証明されています。カドミウム弾もG制御用に使用されていました。
画像
 大量発生した“ちび”デストロアは自衛隊とイイ感じで戦った後は何故か合体して大デストロイアになるという科学的にはあり得ない状況に陥ります。それに続く石野陽子がマスコミヘリからリポートする場面がより非現実的で引っくり返りそうになりました。  最後のゴジラは香港が中国に再併合されるのを機に観光旅行に出かけます。どうせならば、共産党一派を全滅させてくれれば21世紀に入ってからの悪逆非道の行いが出来なかったのにと思うと残念です。  環境破壊や進み過ぎた科学技術へのアンチテーゼとして機能するゴジラであるならば、南シナ海の環境を汚染し続ける支那の非道を懲らしめるために今こそ立ち上がって欲しい。  敵役として登場するのはデストロイアです。彼は先カンブリア紀からオキシジェン・デストロイアーの副産物として復活してくるわけですが、40年以上もかかるのはなんだか不自然ではあります。どうせなら21世紀版『南海の大決闘』として埋め立てられたサンゴの海を復活させるために中国軍を蹴散らしていくのがゴジラの使命ではないだろうか。
画像
 デストロイアは人間と格闘するほどの大きさだったのが最終的にはゴジラと対峙するまでの大きさに成長し、リトル(ベビーからリトルに名前が変わっています)との三つ巴の戦いに入ります。燃え尽きて行く我らがゴジラの最後の勇姿を見ましょう。ゴチャゴチャ言わずに合掌。  メルトダウンが始まり、溶け落ちていくゴジラはスーパーX3や冷凍メーサー砲の集中砲火を浴びながら、最後の咆哮とともに絶命していく。大量の放射能をまき散らして、東京を死の街にするかと思われましたが、その放射能を吸収したゴジラの息子ジュニアがさらに巨大化して新ゴジラとして復活し、暗闇のシルエットの中、叫び声をあげる。  その咆哮に被さるように伊福部音楽とゴジラの歴史が映し出されていく。初代の艶めかしい動き、再スタートした1984年版、VSビオランテ、VSキングギドラ、VSモスラなどの平成シリーズの様子が繋がっていく。再度思う。批判はいらない。
画像
総合評価 65点