良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ランボー 最後の戦場』(2008)久しぶりに登場したジョン・ランボー!編集とカメラの勝利でしょう。

 しかしまあ、良しにつけ、悪しきにつけ、なんとタイムリーな公開時期になったのでしょう。よりによって、サイクロンが吹き荒れた、こんなときに軍事政権下のビルマを舞台にした映画が封切られるとは思いませんでした。しかも有名なアクション映画の久しぶりの続編のなかで、反民主主義のビルマ政府軍が残虐な悪役として描かれてしまうのは皮肉ではありますが、当然でもあり、身から出た錆ともいえる。  ランボー・シリーズの全4編中、すべてに登場したのはシルヴェスター・スタローンのみで、前作まで登場した、グリーン・べレー上官役だったリチャード・クレナもいなくなり、本当に孤独な主人公になってしまった。寂しさと死神が常に彼には付きまとい、もう一方の代表作である、ロッキー・シリーズのような絆が皆無となっている。
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 最初に俳優としてのシルヴェスター・スタローンを意識したのは『ロッキー』でした。その後、『勝利への脱出』でのペレとの共演もありました。そうこうするうちに中学生になったとき、その夏にハルク・ホーガンやミスターTと戦った『ロッキー3』の公開があり、ロッキーとともに再度、スタローンを意識したのがこのシリーズの第一作目となった『FIRST BLOOD』となります。  スタローン作品としてはそのほかでは『コブラ』『オーヴァー・ザ・トップ』『ロック・アップ』は劇場で観ました。しかし、素晴らしかったロッキーやランボーと違い、新妻ブリジット・ニールセンと共演(すぐに離婚!)した『コブラ』などは最悪でした。そういえば、プロレスラーのコブラもあまり良い印象はありませんでした。その他では評価のあまり高くない『ナイトホークス』はなぜか好きで、何度かビデオやTVで見ました。
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 へぼだとか、くさいとか言われていても、アクション俳優としての彼は大好きで、個人的には人間としての熱さというか体温を感じるので、同時代に活躍した非人間的でフランケンシュタインみたいな演技をするシュワルツェネッガーよりも評価していました。  その後、スタローンの人気上昇とともに、ロッキー・シリーズもランボー・シリーズもどんどん続いて行きましたが、どれもオリジナルを抜くことはなく、お金目当ての産業映画の域を越えることもありませんでした。これらが低調になればなるほど、スタローン自身の人気も凋落していき、ここ10年以上はパッとしませんでした。
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 ランボーはパート2である『怒りの脱出』まで、ロッキーはパート4『炎の友情』までは楽しく映画館で観ましたが、両者ともそれより後は目も当てられない状況になっていき、全部を観た自分でも、駄作の数々は記憶から消し去り、なかったことにしてしまいました。  まあ、これはパラレル・ワールドなのだと決めれば、辛さも軽減されます。ロッキーとランボーの最大の相違は共演者たちとの熟成された人間関係の有無ではないでしょうか。タリア・シャイア、カール・ウェザースやバート・ヤングら一癖も二癖もある連中との絡みがあるからこそ、ロッキーは魅力的に光りましたが、続けば続くほど、そうした関係性が希薄になっていったのは残念でした。
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 片や、ランボーは基本的にいつも独りで、シリーズ通して出てくるのは先ほども触れたグリーン・ベレーの上官役のリチャード・クレナくらいでした。ずっと一緒にやって、芝居の円熟味を増すという方向には進まず、あくまでもワンマン・アーミーの活躍を描くのに徹していました。マッチョで危険な退役軍人、それがランボーでした。こうした感想がまずあり、ついに出た最新作を観ることにしました。  本編のストーリーとしては、90年代初頭にパパ・ブッシュが活躍?した湾岸戦争あたりの世相に迎合して、エンターテイメント性と浅薄な右翼的な思想を混ぜ合わせて、戦争の悲惨さや無意味さなどをまったく考えないように観客を仕向けた、前作『ランボー3怒りのアフガン』とは180度違い、ビルマの国境線で繰り返されている軍事政権の正規軍と国境地帯のゲリラ戦線との間で起こる、陰鬱で空虚な衝突と殺戮がひたすら繰り返されていく。
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 あえてビルマといっているのはミャンマーなる名称は軍事政権下で無理矢理に決定されたからです。エベレストをチョモランマと言い換えて、所有権を主張する口実を作り出す、不埒で恥知らずな国の指導者と同じです。ちなみに実際にビルマの軍事政権を影で支えているのは、かの大国だという。
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 国境地帯の哀れなビルマの人々に聖書を与えるためにというご立派なお題目を唱えながら、海賊も跋扈して、野獣の棲家と化した軍事政権下のビルマへ潜入を試みるキリスト教の宣教師たちのあまりにも無謀で、自分勝手で、後先を考えない身の程知らずな行動には不快感がありました。  いかにご立派なお題目を唱えようとも、自分の身を自分で守れない人間にはゴチャゴチャ周りのことを言う資格などはない。彼らの無謀な行動のために、国費から傭兵隊が派遣されて、さらに無駄な血が流されてしまうのである。傭兵部隊のほとんどは死に絶え、宣教師たちも何人かは死に、敵軍もランボーによって、100人単位で地獄へ送られる。何が正義なのだ。
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 つまり、こういう事態を招いたのはランボーや軍事政権側ではなく、彼ら宗教関係者の驕りなのである。死んだ宣教師たちを決して殉教者などという大甘なオブラートで包んではならない。わが国の政府にしろ、アメリカ政府にしろ、政府が渡航を禁止している地域に、自分勝手な理屈とともに踏み込んで、捕まった挙句に、身代金をせびられる。国益を損ねているのだ。美化してはならない。  映像表現はかなり過激で、カメラが執拗に人間の死に様を撮り、戦いの無意味さとやりきれなさを切り取り、死のモンタージュを積み重ねていく。ただ死屍累々たるフィルムの塊である。ランボーらしい派手なワンマン・アーミー振りのみを期待して観に行くと、あまりの重さに不意をつかれるに違いない。
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 アンチ・ハリウッド的な映像言語は彼からのハリウッドへの復讐であろうか。子供を踏みつけ銃殺する軍人たち、女を強姦し、慰み物として命を奪う前線の下級軍人、見せしめに縛り首を放置したり、首を切り落としたり、手足を切断する軍人、子供をナパームで出来た猛火に投げ込む軍人や結果として膨大な数になる死体に群がるハエの大群など、現在のハリウッド・コードには合わないような暴力的な映像がつぎつぎにインサートされる。これって、向こうではR-18とかだったんでしょうか。日本はポルノには規制をしたがるが、暴力表現にはかなり甘い。  監督も務めたスタローンだが、映像言語の使い方も興味深い。政府軍側をやっつけるシーンではランボーたちをロー・アングルで捉え、彼らの攻撃の優越性と正当性をアピールする。しかし、反撃にあってからは彼らは小さくハイアングルでカメラに捉えられ、犠牲者を増やしていく。スピーディーな展開も相まって、臨場感がよく出ています。  また大自然とちっぽけで醜い人間たちとの対比は見事でした。ランボーのそもそもの基本は森や湿地での圧倒的な優越性であり、このフィルムでもその基本は踏襲されている。  悲惨さとタランティーノ的なスプラッター映像が同居している。話の筋は恐ろしく単純だが、一気に飽きさせることもなく見せてくれる。これは編集の貢献度がかなり高い。スタローンは昔のシリーズのように、ジャングルを動き回って、敵軍全員を手玉に取るというよりは、ここぞの場面に出てきて、美味しいところを持っていくという感じでした。
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 そして今回の彼は常に沈んだ顔をしていて、最後まで気が晴れるようなこともない。すべてを退治しても、そこには何ひとつ栄光などはない。ただの無間地獄である。ずっと孤独で、絶望的な彼の心を癒やす女性は誰もいない。キリスト教徒の女性ボランティアも彼を利用するのみであった。最後のシーンで、故郷アリゾナの実家の牧場へ辿り着いた彼に、ようやく安堵の表情が浮かんでくる。もう戦わなくて良いんだ。これが彼の見た夢でなければ良いが。  ダン・ヒル(最初に聴いたときはブルース・スプリングスティーンかなあ、と思っていました)が歌っていた、ファンにはお馴染みのエンディング・テーマ『IT’S A LONG ROAD』のインスト版は続いていきます。故郷の牧場と父親の住む実家の家屋へと続く道、それも優しい陽が燦々と降り注ぐ長閑な道のロングの引き画で閉じられます。これは現実なのか、夢なのか、それともランボーに来た「お迎え」なのか。良い終わり方をしています。ランボー5が製作されないことを切に願う、昔からのランボー・ファンというのが本音でしょうか。 総合評価 76点
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なかなか火の付かない ...
火事場の努力ネタバレ ...
非常に良く出来た続編 ...

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