良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『酔拳』(1978)ジャッキー&ユエン・シャオティエン共演です!懐かしい!楽しい!

 ぼくらが住む日本には時代劇があり、アメリカには西部劇があるように、香港にはカンフー映画があります。カンフー映画がはじめて世界的な注目を浴びたのはブルース・リーが活躍していた時代でした。  『燃えよ!ドラゴン』『ドラゴン危機一髪』『死亡遊戯』などでも明らかなように、彼の作風はシリアスで殺伐としていて、彼が繰り出すカンフーも殺人技として描かれていました。  そうしたシリアス路線が全盛を迎えましたが、スーパー・スターだったブルース・リーの死後、シリアスだったカンフー映画の流れを、見ていて楽しいコミカル路線に転換したのがジャッキー・チェンでした。
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 相手を小馬鹿にして、ふざけているようなジャッキーのカンフー映画に対してはブルース・リー映画の後だったのでファンの間でも賛否両論ありましたが、劇場に見に行く人たちにとっては楽しい気持ちにさせてくれる彼の映画もブルース・リーと同じくらい大好きだったのではないか。  怪鳥のような奇声を発するリーは独特で、彼の得意技だったヌンチャクと共に黒の長ズボンを履いて、上半身裸になって、リーの全身を体現するようにして、子どもたちはモノマネをしていました。  一方、ジャッキーのマネをする子どもたちは彼のコミカルな動きそのものをマネしていました。ジャッキーその人はもちろん魅力的でしたが、彼の周りを固めていた人たちも彼に劣らず良い味を出していました。
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 中でもぼくが大好きだったのはユエン・シャオ・ティエンで、彼はたいていジャッキーにカンフーを指導する師匠役で出演していました。中華大食堂でたらふく中華料理を食べまくるジャッキーはかなり幸せそうでした。彼が食べる中華料理はガツガツ食べすぎな気もしますが、とても美味しそうに見えるのは何故だろう。  この映画の食堂の給仕の出っ歯の兄ちゃんこそ、次長課長の「お前に食わせるタン麺はねえ!」のモデルなのではないでしょうか。まあ、定かではありません。  ジャッキーのカンフー映画での見所はなんといっても彼が拳法を修行するシーンに尽きます。コミカルで師匠との愛のある人間関係と繋がりはとても温かく、見ていてホンワカする下りでした。さまざまな修行シーンが色々な映画で見られますが、その中でもこの映画の修行シーンが一番楽しい。
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 この『酔拳』では無敵の酔拳マスターの酒が切れてしまい、ジャッキーに酒を買いに行かせるも、いつものように誤魔化すのが得意なジャッキーが酒を水で薄めてしまったせいで、弱い悪党に簡単に捻られてしまい、ユエンがすねてしまうシーンがかなり笑えます。  いつもながら彼の映画の修行シーンはもっとも楽しめる部分です。大瓶の上を渡り歩いたり、腹筋と背筋を鍛えるためにお猪口で瓶の水を入れ替えたりするシーンを覚えている方も多いでしょう。胡桃を指の力だけで砕いたり、お金を稼ぎに師匠と弟子がチンピラの賭場でイタズラっ子のようにおちょくる様子には大笑いするでしょう。  最後の対決シーンは見せ場ではありますが、ぼくがジャッキー映画で大好きなのは修行シーンなので、悪党との対決は修行の成果の発表会のようなものでしかない。  もうひとり欠かせないのがディーン・セキ演じる師範代です。彼はよくジャッキー映画に出演し、だいたいはコミカルな師範代を演じていて、ぜんぜん強くないのですが、妙に存在感があり、記憶に残っています。  サービス・カットも入っていて、前回の『蛇拳』がここでも披露され、ライバル道場の刺客をジャッキー映画らしい例の拳を披露するときの効果音である「びゅっ!」「ずばん!」「ぶわっ!」などの武道服を纏っているために出る風を切る音(上半身裸でもこの音が出るのは何故だろう?)が随所に見られる。これは時代劇での斬り合いのシーンでの効果音と同じで、この音がしていれば観客も安心します。
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 もうひとつこの映画を見ていて不思議だったのは最初の殺し屋と武道家との決闘シーンでは言語は英語だったのが本編に入ると急に広東語になってしまうのは何故なのだろうか。作品中、ずっとこんな感じで言語が入り乱れているので、もしかすると最良の選択は日本語吹き替えなのかもしれません。  基本的に映画はオリジナル言語で見ますが、ジャッキーやマイケル・ホイ、そしてサモ=ハン・キンポーが出ている香港映画に限っては吹き替えの声優陣が素晴らしいので、オリジナル言語にこだわりはありません。  『必殺鉄指拳』でも英語になったり、広東語になったりでなんとも忙しいのがカンフー映画の特徴なのでしょうか。それともフィルムの管理が悪く、あちこちに散逸しているマスターを無理やり繋げたためにこうなってしまったのでしょうか。  『必殺鉄指拳』『蛇拳』『酔拳』に出てきた彼はいつものほほんと、そしてほんわかしていて良い感じで、好々爺というのはこういう感じの人を指すのだろうなあと思って見ていました。あの赤鼻のニヤケた顔は忘れがたい。
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 ジャッキー出演のカンフー映画のストーリー展開は単純なものが多く、ジャッキー演じるドラ息子だったり、不遇の青年が無法者の達人に一度は簡単にひねられるものの、ユエン・シャオ・ティエン演じる師匠のもとでコミカルな修行をやり遂げたのちに再度渡り合い、最終的には無法者に打ち勝つという内容が多かった印象があります。  日本の時代劇と同じで、みんなが想像していた通りの展開、つまり王道をひたすらに突き進み、老若男女がみんなで楽しめる映画を作り続けました。  この『酔拳』は大昔に何度もテレビ放送されたり、ビデオ発売されたので、多くの人々が繰り返し彼の活躍を楽しんだことでしょう。彼の代表作である『蛇拳』『拳精』『スパルタンX』『プロジェクトA』などの多くの作品の中でもその輝きは色褪せていません。
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 ただし大昔にテレビで日本語版を見たときのモノと今回見た字幕版ではあちこちが違うということでした。まずは役名からして違う。たしかジャッキーとユエンの役名はジャッキーが“ヒコ”でユエンが“ソカシ”だったような気がします。  それとテレビ放送で見たときにかかっていた勇ましくカッコいい名曲『拳法混乱 カンフュージョン』が流れないことでした。吹き替えのみの挿入歌だったのですね。整形前の『少林寺木人拳』でも「きせきをおこ~せ~!」とか歌う日本語のナンバーがかかっていたが、DVD版とかには入っているんでしょうか。  この曲は日本の名プログレッシブ・バンド“四人囃子”の手によるもので、何度も掛かるこのナンバーは当時見ていた方ならば、懐かしく思ってくれることでしょう。  昔の映画もDVD化されることにより、若いファン層にも再び見られるチャンスも増えるでしょうから、若き日のジャッキーの動きを堪能してもらいたい。  またぜひともこの『カンフージョン』も収録されることを願っております。もしかするとと思い、アマゾンに確かめに行くと、どうやらぼくらが見た昭和の吹き替え版とDVD版の吹き替え版は違うことが分かりました。当時の記憶と違うものを収録されても違和感しかないことになぜ販売側は気づかないのだろうか。  『機動戦士ガンダム』の劇場版も音声が新録になったり、音響が変わったりしていますが、あれもいただけない。吹き替え版が素晴らしいのは香港映画の特徴で、ジャッキーは石丸博也、ユエンは小松方正、MR..Booは広川太一郎以外はありえないのです。 総合評価 85点
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