良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ロボジー』(2012)ロボットの中身は73歳のおじいちゃん!その名はニュー潮風!

 本日、朝からお昼にかけて、近くの映画館まで新作を観に行きました。『M:I:4』『リアル・スティール』など洋画の話題作もありましたが、今年は邦画『ロボジー』と『ALWAYS 三丁目の夕日’64』の二本立てが映画館で観る最初の作品となります。  かなり昔に江口寿の『老人Z』というのがありました。あの作品はアニメでしたが、今回の『ロボジー』は実写映画です。主演が若手女優の中でも人気がある吉高由里子なので、かなり話題作となっているようで、地上波だけではなく、スカパーでもあちこちで宣伝を目にしました。  ロボットの中にミッキー・カーチスが入っているという間抜けな設定を聞いた時点でそのユルさに大笑いしました。故障と転落しての大破で自作ロボットがダメになってしまうも、哀しいサラリーマンの性質から納期を守り、クビを避けるために偽物ロボットをでっち上げ、その場を乗り切ろうとするまでは良かった。
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 ただし、じいちゃんが大怪我しそうになった吉高を救助するという予想外の活躍で後戻りできなくなるさまがコミカルに描かれており、かなり楽しく見ることが出来ました。このロボットの何が笑えるかというと最近の外国ロボット映画と比べると分かりやすい。  『トランスフォーマー』のように変形をしない。また『リアル・スティール』のように戦わない。またロボットのくせにドラえもんのように人を助けず、働かない。まさにナイナイ尽くしで、ショーにちらっと出演し、あとは美食三昧でマッサージ三昧の日々なのです。  ただ、なにはともかく、まずはおじいちゃんを着ぐるみ俳優のようにロボットに入れてしまう発想が楽しい。まるでFUJIWARAの原西のアシモのギャグみたいで、デザインもアシモみたいです。  ロボットの動きがじつはおじいちゃんの動きに似ているという発想はみんな思っていても誰も形にしなかったわけですから、まさに最初にやった者勝ちになりました。おてもやんを踊るロボジー、自分がロボットに入っているのだと周りの人々に告げてもボケ老人呼ばわりされる様子は悲哀を感じます。
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 また主題歌にカバーにはなっていますが、スティクスが1983年に大ヒットさせた『ミスター・ロボット』を起用しているのもぼくら世代には懐かしく、観に行きたいと思わせてくれたポイントのひとつになりました。  版権の関係上、カーチスによるカバーだったのは残念です。ただこの前の『マネー・ボール』でもそうだったのですが、予告編で流れる曲と実際のサントラとでは異なる楽曲を使用しているケースが多いので、本当にスティクスが歌っていたテイクが使われるのか、カバーなのか、それとも予告編だけなのかは行ってみなければ分かりません。
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 ドモアリガトウ!ミスター・ロボット!マ~タアウヒマデ~!    ドモアリガトウ!ミスター・ロボット!ヒミ~ツヲシリタ~イ!!  じつは日本語だったわけで、なんと間抜けな歌詞なのでしょう!でも当時は歌詞に日本語が出てくるだけでもなんだか嬉しくなったものです。  曲の内容は自分は機械なのか、ただのマネキンに過ぎないのか悩む意思を持つロック・スターのアンドロイドであるキルロイが苦しみながら(人造人間キカイダーの良心回路みたいです!)悪(確か警察だったっけ?『ブレード・ランナー』みたい。)の組織と戦うという感じで歌われていた記憶がありますが、なにぶん30年前の話なので定かではない。キルロイ・ワズ・ヒアだったかな。
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 メイン・メンバーはトミー・ショウとデニス・デ=ヤングでしたが、当時は彼らの名前について、トミー・ショウはなんて簡単な名前なのだろうか?(なんか山田太郎みたいな感じだなあ)とか、デニス・デ=ヤングに至っては語呂がデニスでやんす!と似てるなあなどと思っていました。  当時はまだCDはなく、塩ビのシングル・レコードを買って、何回も繰り返し聴いていました。1983年のコカ・コーラのキャンペーンで空き缶のフタを何枚か応募ハガキに貼って送ると、抽選で好きなミュージシャンの新作アルバムを貰えるというのがあり、スティクスのアルバムも選択肢のひとつでした。  学校の帰りはみんなで空き缶のフタを集めて、コカ・コーラ宛てにかなりの枚数を送りましたが、結局だれも当たりませんでした。最近はああいうキャンペーンって、まだやっているんでしょうかね?まあ、今はiPodとかがあるんで、ダウンロードしたらオシマイという感じではあります。
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 簡単かも知れませんが、大昔のファンはけっこう高かったレコードを買うと、聴くのはもちろんですが、ジャケットのデザインなども食い入るように眺めたり、部屋に飾ったりしていたものです。  だれでも気軽に音楽を楽しめるのは素晴らしいことです。しかしレコード時代にはあった音楽への真剣さというのはかなり失せてしまいました。音をしっかりと出すためにカートリッジに凝ったり、重い音にするか軽い音にするかで針圧を調整したり、ターンテーブルの回転数を微妙に変えて好みのペースにしたりしてかなり幅広く音の変化を楽しめました。  音色を自由に変化させるグラフィック・イコライザーも使っていましたし、スピーカーの接続や位置を工夫したりして、より部厚い音にした思い出があります。
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 かなり脱線してしまいました。肝心の内容について話していきます。オープニングが素晴らしく、ターミネーターの腕のパロディがあったりしたのはおふざけでしょうが、せっかく作ったロボットが蛸足配線で繋がれていたり、故障して暴走し(ヱヴァかよ!)、転落してしまうまでのシーンは大笑いさせてくれました。  カーチスが出てくるために必要不可欠なロボットの転落シーンが二回あり、最初の転落は映画の導入部として上手く機能しています。ラストでの二回目のそれはカーチス第二章、もしくはリターンズの伏線になっています。  吉高由里子が助けられるシークエンスも二回あり、人命を救助するというロボットのルールの基本もしっかりと踏襲されている。矢口作品らしく、今回も曲の選択がよく、エルガーの『威風堂々』、さくらと一郎の『昭和枯れすすき』が効果的でした。
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 自分がいないと機能しない汎用老人型徘徊歩行兵器ミッキーの待遇要求がどんどん調子に乗っていく様子が楽しい。嘘から出た真で研究員たちがロボット工学のエキスパートになっていく過程も描かれており、単なるジョーク映画という枠組みでは収まらないイイ作品に仕上がっています。  このへんの真面目さが最近の矢口史靖監督作品ではスパイス程度だったのが今回は結構前面に出てきている。吉高由里子をヒロインに起用しているために彼女の個性的でコミカルな演技と主役であるミッキー(五十嵐信次郎)が目立ち、作品の真面目さを中和している。   見ていて思い出したのはなぜか新造人間キャシャーンの敵キャラで、この三人組がアンドロ軍団のバラシン(チャン川合)、サグレー(浜田岳)、アクボーン(川島潤哉)に見えてきてしまいます。主役のロボジーは量産型ロボットなのかなあ。
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 脇役の人選も楽しく、上記の三人組の活躍がチームワークというか、関係が上手くいっているんだろうなあと思わせる一体感があり、映画初出演のチャン川合も緊張している感はありますが、無難にこなしていました。  場面転換のテンポが良く、行く先々でトラブルを巻き起こすミッキーじいちゃんに振り回される吉高と三人組の右往左往が楽しく、リラックスして見ていられました。  じいちゃんのやんちゃ振りで可笑しかったのが、挨拶したのに冷たかったロボットの足を引っかけて倒したり、吉高のパンツを思わず覗き込む視線、白物家電用の強力磁石をピップ・エレキバン代わりに腰痛湿布状にしてじいちゃんの腰に貼る様子、同じく無理をして女性を抱き上げた刹那にぎっくり腰になり救急車で運ばれるシーン(なぜみんな救急車を不信に思わないのだろう?)、ロボットの着ぐるみ(鉄の塊でかなり重かったようです。)のままで公衆便所で立ちションするシーンなどが笑えました。
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 そのほかに見所になっているのは木村電機への怨讐に燃える吉高の鬼気迫るメイクもなかなかの迫力でした。目に隈を作り、髪の毛がぼさぼさで着ている物もみすぼらしくなっていく感じは楽しい。冒頭ではロボに救われた吉高はおっかけになり、原付で走りながら投げキッスをするなどチャーミングだったのが、後半で般若のような顔つきになるさまはファンは見ておいたほうが良い。  矢口監督の『ウォーター・ボーイズ』『ハッピー・フライト』『スウィング・ガールズ』などのおふざけ路線を好む向きには評価されにくいのでしょうが、十分に楽しめる作品でした。  ストーリー展開や編集は映画として良く出来ていて、しかもロボットの正体がばれず(最後の落下では身代わりの壊れかけのロボットの残骸が落とされる。)に、そして何も事件を起こさずにほのぼのと作品を閉じていく感じは不満もあるのでしょうが、大人っぽい落ち着いたエンディングに思えました。  まあ、もっとも木村電気に入社してしまう吉高は一年半後に再びロボットを製作するもルームランナーごとまたまた落下させてしまい、ミッキーに再登場をお願いしに行く。そのとき初めて彼の笑顔が画面いっぱいに登場する。おじいちゃんを使い捨てにしないホッとするエンディングです。  文句ばっかり言わずに、映画初主演の五十嵐信次郎の演技を楽しみましょう。 総合評価 72点
ミスター・ロボット
USMジャパン
2011-10-12
スティクス

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