良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『相棒-劇場版IV- (2017) 』タイトル長すぎ!寿限無かよ!

 正式タイトルは『相棒-劇場版IV- 首都クライシス 人質は50万人!特命係 最後の決断』とかなり長く覚えられないし、覚えようとも思わない。もっとシンプルにすべきで、まるで火曜や土曜のサスペンスのタイトルか、誰かが亡くなった時の戒名みたいで鬱陶しい。  相棒シリーズの最近の話題はかつての共演者たちの不祥事ばかりです。麻薬などの薬物絡みで高樹沙耶は逮捕され、3代目相棒の成宮寛貴も写真紙報道から不可解な引退に追い込まれていきました。成宮君に関してはレギュラーからの降ろされ方も乱暴だったので釈然としていません。  成宮君は薬物疑惑が事実でないならば、別にゲイだからと言って非難される世の中ではなくなってきているので毅然と活動を続けて欲しかったなあというのが感想です。  劇場版としては第四作目となるのが今回の『相棒-劇場版IV- 首都クライシス 人質は50万人!特命係 最後の決断』です。タイトルも偽りで、別に誰かが殉職するわけでもなく、水谷豊が身内の弾丸に当たり、入院するのみです。
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 劇場版の中では一番良かったのは岸部一徳が非業の死を遂げた第二作目でした。今回は太平洋戦争中に祖国から裏切られて、死者扱いにされていた鹿賀丈史とイギリスにいた幼少時に祖国から大使の不純な都合で見捨てられた山口まゆの国への報復とそれでも消えない鹿賀の愛国心というのが出てくるお話の展開です。  こういうテーマの時に思うのは政府に何か要求するときに民間人を人質に取ったりすることで、テロの輩は誰のために要求を通したいのかが理解しかねることです。  政策面などで時の政府に反発するのは理解することが出来ますが、庶民には何の瑕疵もないわけですから、巨大企業の幹部でもない社員など一般国民を営利誘拐するのであれば、それは反政府テロリストという呼び方ではなく、卑劣犯罪組織とかに呼び方を変更すべきではないか。  お話に戻りますと、国から裏切られるだけではなく、山口まゆは幼少時に黄色人種であることからサル呼ばわりされ、イギリスで人種差別にも遭い、テロリスト集団にそそのかされて、結果的に領事館にいた人々すべてを毒殺してしまいます。
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 犯人らしくないのが犯人というのは定石ですが、唐突に現われる元国際警察組織の偉いさん役の鹿賀丈史がたぶん黒幕なんだろうと思っていたら何の捻りもなくその通りだったり、本庁の捜査会議場でUSBを差したらすぐにウイルス感染したり(どれだけ警備がザルなんだ!)、山口まゆもじつは犯人側でパトリシア・ハーストと同じような状態だったり、あちこちに演出の甘さがあるように思えます。  まずはアジトを引き払うときに誘拐してから育てた山口まゆを用済みだと言いながらも殺害せずにグルグル巻きにして放置するのも中途半端ですし、帰国子女設定なのに特命係の二人の名刺を読むときに杉下右京はまあ読めるとしても、“冠城亘”を迷いもなく“かぶらぎわたる”と読んでしまう。普通、こんな珍しい名前をスラスラと読めますか?  沢村一輝が凱旋パレードを標的にテロを実行していくときに現場に張り込んで警戒していた警察官に対して近距離で銃撃もせずにただ殴って気絶させるだけにするのも仕事が甘いし、犯人一味が捕まってもなぜか一味であるはずの山口まゆが拘束されていなかったりなど疑問点がいっぱいです。  まあ、そもそも水谷豊と反町隆史はいったいどういう権限で警視庁の捜査会議に顔を出したり、幹部会議に乱入して動画撮影をして誰が警備に反対したかをあとで提出するなどと言って、無理やりに意見が言えるのかとか謎が多いわけですが、そのへんは置いておかないと話が進まなくなるので細かいことは気にしない。
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 杉下さんは細かいことが気になるのが悪い癖ですが、僕らはそのへんは無視しましょう。劇場版らしく、テロ現場となるはずだった、都心(実際は北九州市中心街)でのスポーツ国際大会で大活躍した日本選手団の祝賀パレードのシーンでは大量のエキストラと主要道路を封鎖しての迫力あるモブ・シーンを入れています。  これって、けっこう怖くて、実際に東京五輪などで活躍した選手のパレードがあったとすれば、かなりの人数が集まるでしょうから、警備する警察や自衛隊は大変なストレスが溜まるでしょう。無責任でお気楽な戯言を垂れ流しまくるマスコミとは違い、現場で対応する警察組織や政府は胃がキリキリする夏を過ごすことでしょう。  普段のドラマの製作費ではこういう大がかりなシーンは作れないでしょうし、警視庁の捜査本部も普段のドラマ版では見たこともない巨大モニターや防犯カメラ映像が数十か所映し出されたり、捜査員一人ずつにPCが用意されていたりとかなり違います。  作品の出来としてはまずまず無難な仕上がりで時間を気にすることもなく、エンドロールまで行きましたので相棒ファンならば、普通に楽しめる内容です。当日の劇場では大半が50代以上でマジョリティは60代後半だったので、若い人の集客には失敗しているのは歴然です。  テコ入れするならば若手俳優を入れるかですが、ベテラン俳優陣のなかで上滑りすると元も子もない状態になるので難しそうです。小栗旬とか岡田准一とかで良いのかもしれません。
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 出演は水谷豊、反町隆史鈴木杏樹、川原和久、山中崇史、山西惇、六角精児、神保悟志小野了片桐竜次仲間由紀恵及川光博石坂浩二らの新旧レギュラー陣と映画版の山口まゆ、益岡徹、菅原大吉、江守徹北村一輝鹿賀丈史らの顔合わせです。  山口まゆに関しては保護観察処分とかで花の里で働かせるとかもできそうですね。当初は仲間由紀恵を次の相棒にするとかのアイデアもあったようですが、彼女にとっては今更このシリーズでレギュラーを務める旨味はあまりないのではないか。  ドラマの内容が徐々に下降し、レギュラー陣も次々に櫛の歯が抜けて行くように離脱していく中、寺脇康文を無茶な形で相棒世界から追放してしまったことが今更ながら悔やまれます。  寺脇と及川の両名が相棒役を務めていたころまでが相棒は楽しかった。今は惰性で見ていますが、ここまで来たのですから、来るべき最終話まで付いていくつもりです。今回の劇場版でもうひとつ残念だったのはスピンオフの準主役だった田中圭が出ていないことを挙げておきます。 総合評価 62点