良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ピンチランナー』(2000)一番輝いていた頃のモー娘。主演映画。うわあ~....。

 『LOVEマシーン』『恋のダンスサイト』と立て続けにミリオンセラーを連発していた頃の一番活きの良い旬のアイドルグループだったモー娘。に回ってきた主演映画製作のチャンス。彼女達はさぞ嬉しがったに違いない。  つんく♂プロデュースのロック・ヴォーカリスト・オーディションで落選した5人(安倍なつみ飯田圭織中澤裕子福田明日香石黒彩)を中心に結成されたモー娘。はどちらかと言えば裏街道の道を歩んできたグループでした。TV東京ではそういった彼女たちのエグサをネタにしたアサヤンが高視聴率を稼ぎました。  そもそもモー娘。の「○」の由来って、ナイナイの岡村が台本にあった「○」をこれも名前の一部ですとふざけて放送したことが、そのまま正式名称になってしまったというのが真相でした。  1998年にデビューしてから、1999年に後藤真希を迎えるまでの一年半、安倍なつみと福田(途中で脱退)を中心に引っ張っていき、『真夏の光線』などのスマッシュヒットを飛ばすものの徐々に陰りが見えてきた『ふるさと』。  ファン達にも不評だった第二次組(矢口真里、市井沙耶香、保田圭 その後、彼女たちも人気が出る)に次ぐ梃入れが必要と見なしたつんくや会社は第三次オーディションを再び実施し、後藤真希を加入させた。  そして彼女は期待に応え、グループをオリコン初の一位に導くとともに以後の国民的人気の基盤を築く。後藤はその後プッチモニ。を率い『ちょこっとLOVE』をはじめ、多くの曲を一位に持っていく。  紅白にも二年連続で出場し、CDセールスはぶっちぎりで上昇していた絶妙なタイミングで公開が決まったのがこの作品『ピンチランナー』でした。共演に松坂慶子や押尾守を起用したまでは良かったのですが、監督の人選に大失敗しました。  その人の名は那須博之。悪名高い『デビルマン』や『ビーバップ・ハイスクール』を撮った、あの那須博之です。なぜ彼に大切であるはずのデビュー映画を任せてしまったのであろうか。新人監督や職人監督に彼よりも出来の良い監督は山のようにいるのである。あくまでも彼に比べてです。  よりによって最悪な人選を受け入れてしまったアップ・フロント・エージェンシーはその後のあまたの映画サイトで散々な酷評を受け続ける最悪映画のひとつを世に送り出すことになってしまった。その名は『ピンチランナー』。  誰も那須の威力を知らなかったのだろうか?映画を破壊するターミネーター並みの威力を持っているのがこの映画の監督である。メイキング映像も見ましたが、さらにそれは酷く、彼女たちを取り巻く悲惨な撮影状況が露わになる。  クライマックスとなるはずだったマラソン大会はファンの野太い声が響き渡り、アイドル達の芸名を連呼する。エキストラを会場のメイン・スタンドに入れるのではなく、本当の大会に特別参加させておきながら、ライブ映像のスタンドを映し出す。警備や音響の管理はかなり杜撰なのが映像を通して分かる。  表彰式もめちゃくちゃで、スタンドにいる聾唖者という設定の松阪にたいして、トラック上の安倍が手話で話しかけるという演出を施す。しかもどうみてもぶっつけ本番にしか見えない。たしかにモー娘。メンバー各自の演技は酷く、見られるものではない。主役の安倍を筆頭に、矢口、石川、飯田らにかんしては彼女達のファンしか楽しめない。しかしそれを上回ったのが那須のコントロール能力の無さではないだろうか。  ここでのメンバーたちの演技は「寒すぎて」酷評されても仕方ない出来であった。ただ自分たちなりに一生懸命やっているのは伝わってきます。最後の安倍なつみの走りに至っては見ているほうが辛くなってくる始末でした。多忙なアイドルに練習時間をほとんど与えずに駅伝大会に参加させるというのは無謀であり、本来の出場者達に対しても無配慮である。  さまざまなマイナス要因が重なってこそ出来た奇跡の駄作がこの一本である。二度と見たくはないし、見る機会もないであろう。20年くらい経ってから、日本映画専門チャンネルあたりで放送されたら見るかもしれません。うーーーん、みるかなあ? 総合評価 23点 ピンチランナー
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