良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

2005-01-01から1年間の記事一覧

『ピアニストを撃て』(1960) 評価の低い二作目ですが、ヒッチやホークスへの愛が一杯です。

1960年に発表された『ピアニストを撃て』は、フランソワ・トリュフォー監督の『大人は判ってくれない』に続く第二弾です。そして本作品では、彼が本来やりたかった事を、娯楽の神様であるだけでなく、映画を良く知る作家であるヒッチ先生やホークス監督のス…

『荒武者キートン』(1923) チャップリンに勝るとも劣らないキートンの魅力。 ネタバレあり。

『荒武者キートン』は1923年の作品であり、最も素晴らしい喜劇俳優にして、映画監督でもあるバスター・キートン監督・主演の代表作のひとつでもあります。原題の「OUR HOSPITALITY」は、我々の心地よく素晴らしい接待という意味であり、作…

『續 姿三四郎』(1945) 会社のために作らざるを得なかった続編作品。 ネタバレあり。

黒澤明監督、1945年の作品である『續 姿三四郎』は監督本人が自ら望んで撮った作品ではなく、会社の要請にしたがって作られた映画です。使えるフィルムの量にまで制限があったとされる戦争当時の映画界においては、映画を撮れるだけでも幸運でした。 乗…

『一番美しく』(1944)激戦の1944年、黒澤監督の第二作はミュージカルだった! ネタバレあり

黒澤明監督、1944年の作品にして唯一の国策映画。太平洋戦争期間中の最も激しく、出口の見えない情勢の下で製作されました。「撃ちてし止まぬ」のスローガンがオープニングから出てくるだけでも特異な状況を理解できることでしょう。 尋常ではない状況の…

『ホーリー・マウンテン』(1973)シュール?俗悪?評価が分かれるであろう問題作 ネタバレあり

デビュー作『ファンドとリス』、その名を一躍有名にした『エル・トポ』に次ぐ第3作目となる1973年の作品で、アラン・クライン製作、アレハンドロ・ホドロフスキー監督という極悪コンビによる伝説のカルト・ムービーです。映像表現の限界まで突っ走って…

『ドイツ零年』(1948) 悲しすぎる少年の運命とネオレアリズモの代表作 ネタバレあり

イタリアのネオレアリズモ(新写実主義)の巨匠、ロベルト・ロッセリーニ監督の1948年の作品であり、『無防備都市』に始まった戦争三部作の三作目の作品。ロッセリーニ監督は元々、ドキュメンタリー作品を製作するつもりだったようですが、途中から劇映…

『ヒストリー・スルー・ザ・レンズ トラ・トラ・トラ!』 四面楚歌だった黒澤明監督 ネタバレあり

2001年製作のドキュメンタリー作品であり、『トラ・トラ・トラ!』についてのフォックス側の見解で綴られている興味深い作品です。黒澤監督が東宝で、最後のモノクロ作品にして、持てる映画製作技術の全てを総動員した『赤ひげ』(1965)の撮影後、彼のフ…

『十月』(1928) スターリンに嫌がらせを受けて、現存の90分間になる前は2時間30分の力作だった

ロシアの巨匠、セルゲイ・エイゼンシュテイン監督による、1928年の作品。製作に三年を費やした本作品ですが、製作途中で改変に継ぐ改変を迫られてしまったために、より解りにくいものになってしまったようです。 カットされてしまったシーンには粛清され…

『アンダルシアの犬』(1928) シュール・レアリズムって一体なんだ?映像が目に焼きついて離れない

アンダルシアの犬 スペインが生んだ素晴らしい監督の一人、ルイス・ブニュエル監督の1928年の作品であり、奇才サルバトーレ・ダリが脚本を担当したことで話題になったこの作品ですが、一体全体、何を持ってシュール・レアリズムなのか。 勉強不足のため…

『下宿人』(1926) ヒッチコック監督のサイレント時代の傑作サスペンス ネタバレあり

イギリス時代のヒッチコック監督が、資金繰りや役者の問題、更にはかつての上司からの嫌がらせなどで、苦しみもがいていた頃の作品ですが、後々考えてみると、彼がサイレントでも傑作といえる本作を、1926年に制作していたことはとても興味深い事実です…

『全線 古きものと新しいもの』(1929)農民の生活を捉えただけだが、なぜかとても美しい。

ロシア革命の時代を経験して、初期ソ連のスターリン時代をも生き抜いた、セルゲイ・エイゼンシュテイン監督の1929年の作品である本作品は、いわゆる「プロパガンダ」映画の代表的な作品ではありますが、そうした小さな枠に納まりきる作品ではありません。…

『ヴァン・ヘルシング』(2004)はモンスター総出演の顔見世興行映画なのか、単にネタがないだけか。

スティーブン・ソマーズ監督の2004年の作品ですが、これはまたえらいものを作ったものです。この何年かのハリウッドやわが国における「リメイク(大まかにオリジナルではないものとしてここでは使っています。続編やドラマの劇場版も含む)」物の、あまり…

『ベルリン 天使の詩』(1988) 当時のおしゃれな人達がたいそう褒めていたドイツ映画 ネタバレあり

ヴィム・ヴェンダース監督の1988年の作品ですが、1988年から1990年というと、バブルの時代の真っ只中でありまして、子供から大人まで株に手を出して、素人でもおこぼれに預かれる、という今では考えられない時代でもありました。 外国といえばア…

『アレクサンドル・ネフスキー』(1938) ロシアの巨匠エイゼンシュテイン監督の初トーキー作品

1938年というと、第二次大戦開戦前の緊張状態が沸点に達する寸前であり、この年に製作された『アレ~』はエイゼンシュテイン監督にとっては、むしろ初トーキー作ということに対する彼自身の好奇心よりも、撮りたくもないテーマで映画を製作しなければい…

『暗黒街の顔役』(1932)は『ゴッド・ファーザー』の元ネタであり、『スカーフェイス』のオリジナル。

ハワード・ホークス監督の1932年の作品であり、フィルム・ノワールの傑作です。その後のアクション作品に使われたと思われるシーンや設定が次々に出てきます。センス溢れる美しい写真、テンポが良く無駄なシーンの無い展開、台詞でなく映像で人間の強欲と…

『キッド』(1921) 上映時間50分は、今では短いものですが当時は十分長編でした ネタバレあり。

喜劇王チャーリー・チャップリン(アルコール先生)が監督・脚本・音楽・主演という八面六臂の活躍を見せるサイレントの長編作品。短く感じるかもしれませんが、無駄なシーンや会話を一切省いて、良い部分を凝縮した印象を持ちました。 とても素敵な作品です。チ…

『暗殺者の家』(1934) ヒッチコック監督によって、後にセルフ・リメイクされた傑作スリラー

まだ監督としての名声を確立する前の作品であるために、予算があまり取れずにいた頃の作品。素晴らしい工夫は随所に見えますが、自分の思い通りには仕事が出来ていない印象はぬぐえません。 今回のピーター・ローレは大ヒットですが、その他の役者の人選に関…

『姿三四郎』(1943) 20世紀を代表する巨匠、黒澤明監督のデビュー作 ネタバレあり。

1943年という太平洋戦争の真っ只中に作られた、黒澤明監督の記念すべきデビュー作にして、理屈抜きに楽しめる素晴らしい作品。戦時中という言論統制が強い時代の中でも大衆が見たかった映画をデビュー作から作り上げた黒澤監督の苦心と才能。 平和な時代に生…

『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922) これが全ての吸血鬼映画の原点、美しく恐ろしい。 ネタバレあり

F.W.ムルナウ監督の1922年の作品。ドイツ表現主義の代表的な一本であるだけではなく、いわゆる吸血鬼が出てくる映画の元祖であり、以降のドラキュラ映画の原点となる作品です。ほとんどの構図とストーリー展開はここから一歩も出ていない。影響力という…

ジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』他。1902年にSFの原点といえる作品が存在していた。

ジョルジュ・メリエス監督の『月世界旅行』といえば、昔からの映画を知る人ならば、一度はちょっとしたワン・シーンだけでも見たことのある作品。何年かに一度、TV番組などのオープニングのコラージュで用いられたりする作品。 見れば、古きよき映画の時代…

『狼男』(1941) 三大モンスター俳優のうちの一人、ロン・チェイニーJrの当たり役ネタバレあり。

ドラキュラのベラ・ルゴシ、フランケンシュタインの怪物のボリス・カーロフと並ぶロン・チェイニーJrがスターとなるきっかけとなったこの作品。父親のロン・チェイニーに始まる親子二代に渡っての俳優一家です。 そして彼が演じた怪物には、他の怪物とは決…

『シン・シティー』(2005)タランティーノ、ロドリゲスそしてフランク・ミラー。濃いはずですが・・。

うるさ型で個性的なタランティーノ、ロドリゲス両監督にフランク・ミラー(原作者)が絡んでくるという一歩間違えればコテコテな作品に成ってしまうかと思いきや、実にあっさりしているこの作品。 タラさんらしい「痛そうな」映像、ロドリゲス監督らしい派手…

『8 1/2』(1963) フェリーニ監督の、というより20世紀映画の到達点 ネタバレあり。

一度でこの作品の良さを味わいつくせるものが存在するとすれば、それは映画の神様でしょう。難解かつポップな作品です。一見すると軽く見えるのですが、近寄ると火傷する重厚感を持つ作品です。重苦しさと軽薄さがひとつの作品に同居しています。 簡単な筋書…

『透明人間』(1932) 『フランケンシュタイン』の成功に味を占めたユニバーサルが送った新たな刺客。

ジェームズ・ホエール監督の1932年の作品。お金が大好きなユニバーサルがもっと怪物で儲けようとして急いで作らせて、まあまあ儲かった作品。 透明人間の造形を決めたのはこの作品です。深く被った帽子とサングラス、顔中に巻かれた包帯と大きなコート、…

『雨月物語』(1953) 光と影の織り成す死の物語。溝口健二監督のトーキー時代の代表作のひとつ。

黒澤監督が『羅生門』によってベネチア映画祭の金獅子賞を取った翌年に、同じ大映から製作された溝口健二監督の3年連続ベネチア映画祭受賞作品となったうちの一本です(1952年の『西鶴一代女』の監督賞、1953年の『雨月物語』、1954年の『山椒大夫』での…

『大人は判ってくれない』(1959)トリュフォー監督の長編デビュー作にしてヌーヴェル・ヴァーグの傑作

ヌーヴェル・ヴァーグの代表的な監督というとゴダール監督、ジャック・リヴェット監督、そしてトリュフォー監督の名前を挙げることが多い。すべて彼らはアンドレ・バザンが主宰していた「カイエ・デュ・シネマ」誌に執筆していたライター陣でした。 批評家が…

『十二人の怒れる男』(1957) 名優H.フォンダとリー・J・コッブの白熱の絡み合い。男の映画。

お気に入りの一人であるシドニー・ルメット監督(『狼たちの午後』、『プリンス・オブ・シティー』など)の1957年の作品。ヘンリー・フォンダが歴史に名を残す名優であるということは、モノクロ映画を愛好する人々ならば誰でも知っていることです。 カラーで…

『黒猫』(1934) 怪優ベラ・ルゴシとボリス・カーロフの初共演作品。

ユニバーサル映画というと『キング・コング』、『ジョーズ』、そして『ターミネーター』などの怪物映画が有名ですが、それらの先駆けとなったものにモンスター映画と呼ばれる一連の作品群がありました。『魔人ドラキュラ』(1931)、『フランケンシュタイン』…

『プラン・9・フロム・アウター・スペース』(1959) アメリカ映画史上最低の映画。 ネタバレあり。

エド・ウッド監督の1959年の作品。アメリカ人の映画ファンみんなが最低だというこの映画。栄えあるアメリカ映画史上でももっとも最低の映画に選ばれるなんてのも凄い。しかもぼくはこれを実は二度も見てしまったのです。1回目は、確か10~15年位前に当時の…

『フリークス(怪物團)』(1932)これはたんなるキワモノ映画ではない。 ネタバレあり。

MGM製作で、トッド・ブラウニング監督が1932年に放った衝撃の問題作で、邦題は『怪物團』です。作品としてみるとサーカス一座で働いている主人公を中心にした、似たもの同士の可愛らしいラブストーリーに、陰湿極まりない金目当ての男女が彼を色仕掛けで…