良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

2006-01-01から1年間の記事一覧

『ロスト・ワールド』(1925)特撮映画の夜明け。全てはここから始まった。

観る者の目をスクリーンに釘付けにし、映画会社の宣伝文句も一番考えやすく、家族全員を映画館に動員するのに最も適したジャンル映画といえば、現在ならばディズニー映画、スタジオ・ジブリ映画に代表されるアニメ映画、そして一昔前ならば怪獣特撮映画だっ…

『ブラザーズ・グリム』(2005)老いたり!テリーと見るか、仕方ないよ今回はと見るか?

監督の名前や前宣伝だけを信じたら、劇場に行った時にとんでもない目に合わされるので気をつけましょうという典型的な作品が、この『ブラザーズ・グリム』という作品ではないだろうか。今でも読み応えのある、せっかくのエピソードの宝庫であるはずのグリム…

実は新刊が出ていた『映画検定公式問題集vol.2』メチャメチャ難しいですよ、これ。

本屋に飛び込むと目に映った一冊の見覚えのあるタイトル。やっぱりそうだ、その名もズバリ『映画検定公式問題集vol.2』。今回はオレンジ色に塗られておりまして、どうせなら「赤本」にでもしてほしかったと思いました。 前回の試験で、二級に合格したの…

『年間ベスト10企画』について思うこと。ベストは毎年10本もないでしょ?

もうすぐ年の瀬を迎える今頃から12月になると、映画雑誌は毎年恒例で「年間ベスト10」などと称して、お抱えのライター陣や有名人の映画ファンから彼らが観た映画年間ベスト10を列挙してもらい、それらの集計を掲載することが多い。楽な企画ではあるが…

『ハリウッド恐怖生物大全』(2004)映画史上に欠かせないパニック映画の主役たち。

ハリウッドのみならず、古今東西各国の映画には身近な様々な生物たちが恐怖の対象として描かれてきました。わが国でも化け猫に代表されるように猫に対する恐怖映画が多く作られてきました。身近なペットである犬、猫、鳥だけではなく、昆虫などを含めると特…

『マタンゴ』(1963)男女七人キノコ物語。ゾンビ映画やモラル的な寓話としても鑑賞可能。

人間性とは何か?自然に適応するとはどういうことか?生存するために必要な行為である「食」を制限された時に、人間たちはいかなる行動を取るのか。理性が勝つのか、生命体としての欲望が勝つのか、野性とは何なのか。 置かれた住環境に合理的に適応して行く…

『ある殺し屋』(1967)市川雷蔵の秀作は実は現代劇にある。哀愁漂う無口な殺し屋の魅力。

森一生監督、増村保造脚本、主演に市川雷蔵と来れば、出来上がりが素直な作品であるわけがない。市川雷蔵というと一般には「眠狂四郎」シリーズ、「忍びの者」シリーズ、「大菩薩峠」シリーズなどの時代劇が有名であるために、現代劇のイメージは皆無かもし…

『イワン雷帝 第二部』(1946)スターリン体制に抵抗した革命的映画作家の最後の作品。

かつての巨匠、エイゼンシュテイン監督の最後の作品となってしまったのが、この『イワン雷帝 第二部』です。『戦艦ポチョムキン』を発表して後は世界を代表する映画人になったエイゼンシュテイン監督も、晩年は再三に渡る制作中止とスターリン体制からの弾圧…

『イワン雷帝 第一部』(1944)歴史映画しか撮らせてもらえなかった、かつての巨匠の晩年。

映画史上、とりわけ制作における重要な理論であるモンタージュ理論とその効果的な実践で、社会主義陣営のみならず、全世界の映画界、なかでも制作者全体に多大なる影響を与え、革命を巻き起こしたのはセルゲイ・エイゼンシュテイン監督でした。 彼の代表的作…

『ロシア映画祭 IN OSAKA』に行ってきました。名作揃いでとても濃い一日でした。

何気なくスウェーデンの巨匠、イングマール・ベルイマン監督の『サラバンド』を来年一月から公開してくれる、映画通好みの大阪九条にあるシネ・ヌーヴォの上映作品案内を見ていましたら、なんと一月には28本のベルイマン監督作品を一挙上映してくれるという…

『惑星大怪獣 ネガドン』(2005)世界初のフルCG怪獣映画!人物と怪獣に不満が残るが...

CG全盛といわれて久しい最近の特撮事情ですが、その中でも全ての映像がCGで構成されている唯一の、つまり世界初の怪獣映画こそがこの『惑星大怪獣 ネガドン』です。上映時間が25分という短めの作品ではありますが、ここで描かれる風景、人物、機械類、…

『アンジェラ』(2005)洗練されている21世紀型モノクロ映画。ベタですが、この感覚は好きです。

モノクロの新作映画をほとんど見かけなくなってから、もうずいぶん経ちます。最近の有名なモノクロ作品というと、洋画では『シン・シティ』、邦画では『ユリイカ』『サムライ・フィクション』まで遡らねばならないほど思い出せません。 そのなかでリュック・べ…

『スネーク・アイズ』(1998)ブライアン・デ・パルマ監督の個性を見るには良いサンプルです。

ブライアン・デ・パルマ監督作品というと、常にそれを支持する人と酷評する人とが真っ二つに分かれる珍しい作品が多い。『ミッドナイト・クロス』『殺しのドレス』『ミッション・イン・ポッシブル』『カリートの道』などは絶賛されたが、『ファム・ファタール』『…

『ブラック・ダリア』(2006)パート2 ジェームズ・エルロイ原作の暗黒のLA四部作の第一作目。

そして今日、劇場に足を運びました。いつものように一番後ろの真ん中近くの席を取り、ノワールの世界へ浸り込む前にいろいろと演出や音楽、そしてアングルやカット割りを予想していました。原作を読んだ後に観に行くときの楽しみは自分が想像していた演出と…

『ブラック・ダリア』(2006)パート1 エルロイ原作の話題作について観る前に思っていたこと。

フィルム・ノワール・ファンにとっては今年公開される洋画の中でもっとも期待の大きな作品がこの『ブラック・ダリア』ではないだろうか。ジェームズ・エルロイ原作による暗黒のLA四部作の第一作目の小説をもとに、ブライアン・デ・パルマ監督がどのような手腕を…

『チャイニーズ・ディナー』(2001)堤幸彦監督が放った舞台劇を思わせる実験的作品。請来!

『TRICK』『ケイゾク』『明日の記憶』『恋愛寫真』『2LDK』そしてこの『チャイニーズ・ディナー』と堤幸彦監督作品を列挙していくと彼の雑食性というか興味の対象の幅広さに驚かされます。どの作品にも彼らしい個性が息づいているのも興味深い。好き…

『詩人の血』(1930)偉大なるジャン・コクトーが残した彼の芸術の真髄と映画の可能性。

二十世紀フランス芸術界の至宝であり、詩、映画、演劇、絵画など縦横無尽に活動の場を行き来した天才芸術家ジャン・コクトーが、1930年というサイレント映画とトーキー映画の分岐点とも言える時代の狭間にあって、100万フランの予算とともに自らの芸術…

『ミイラ再生』(1932)ボリス・カーロフの演技が光るラブロマンス・ホラー。

何年か前に製作されてヒットした『ハムナプトラ』はこの作品のリメイク作品であるが、特殊撮影に頼りきりだった『ハムナプトラ』とは違い、この『ミイラ再生』はドラマ部分に重きが置かれている。そのため派手な立ち回りや特撮シーンを期待する人には満足で…

『謎の金塊』(1956)日活映画の底力を見せつける実力派、野口博志監督。

日活映画の隠れたというか忘れられた監督のひとり、野口博志監督の1956年公開作品がこの『謎の金塊』です。この作品では主演に水島道太郎、ヒロインに日高澄子を迎え、金塊強奪を狙う香港のギャング団とロマノフ王朝から金塊を受け継いだ旧関東軍の生き…

『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』(1969)転がる石のように落ちていく第10作目。

『怪獣マーチ』が流れてきた瞬間から目の前が真っ暗になるこの作品、いやさ製品。何でこんなのを世に送り出してしまったのだろうか。ゴジラ、ミニラ、ガバラ、クモンガ、エビラ、大鷲、カマキラス、ゴロザウルス、マンダ、アンギラスと頭数だけはたくさん出…

『ピノキオ』(1940)幻想的かつシャープな映像美と警句を盛り込んだディズニー初期の傑作。

『白雪姫』の大ヒットを受けて、製作された第二作目となる長編アニメ映画の傑作がこの『ピノキオ』です。小さい頃に何度も見てきたこの作品ですが、大人になって見たのはつい最近で、かれこれ30年ぶりくらいでしょうか。 コオロギのジミニー、猫のフィガロ…

『ローラ殺人事件』(1944)フィルム・ノワールの代表的作品。物語の仕掛けが斬新です。

オットー・フレミンジャー監督によって1944年に発表された『ローラ殺人事件』はフィルム・ノワールと呼ばれる一連の作品のなかでは『深夜の告白』『サンセット大通り』『現金に身体を張れ』『疑惑の影』などとともに、このジャンルを代表する作品のひと…

『怪獣総進撃』(1968)キングギドラ敗れる!その衝撃の意味を分かっていたのか?

1965年に製作された『怪獣大戦争』以来、久しぶりに本多猪四郎監督と音楽に伊福部昭を起用し、真面目に製作されたのがこの『怪獣総進撃』でした。そしてこの作品には過去作の総決算のように東宝怪獣達が大挙スクリーンに登場してきます。もともとのタイ…

『大アマゾンの半魚人』(1954)ユニバーサル・モンスター映画の中でも人気の高い作品。

アマゾン奥地で見つけた謎の化石が発端となって、かの地へ探索へ出かけた科学者たちが、未開地の奥にある黒い入り江で未知の怪物に遭遇し、恐怖の体験をするというお話です。この『大アマゾンの半魚人』は数あるユニバーサル・モンスター映画のなかでも屈指…

『ゴジラの息子』(1967)ゴジラよ、ゴジラよ、ゴジラさん。どうしてあなたの息子はミニラなの?

とうとう来るところまで来てしまった感のあるゴジラ映画の第八作目がこの『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』です。思えば遠くへ来たもんだ。水爆実験で復活したゴジラが帝都を暴れ回り、ヒールの大スターとしてデビューしてから12年。 その間、アンギラスをK…

『悪の報酬』(1956)鈴木清順監督の師匠、野口博志監督のフィルムノワール。

日本映画界の最後のアウトロー鈴木清順監督の師匠、野口博志監督のフィルムノワールがこの『悪の報酬』です。いまではまったくの無名に近い野口監督ですが、彼の残した作品のレベルは恐ろしく高い。 犯罪組織、異常な犯罪者、誠実な警察官(水島道太郎)、悪…

『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』(1966)東宝は一体何が撮りたかったんだ?

興行収入を抜きに考えた時、はたしてこの作品にゴジラとモスラが登場しなければいけない必要性を認めることが出来ません。ゴジラとエビラの戦いはまったく噛み合わず、モスラに至っては友情出演程度のものであり、タイトルに出てくるような「決闘」シーンは…

『映画検定一級試験へ向けて。』12/3実施で受験費用は4900円!高い!

キネマ旬報が主催し、結構盛り上がった企画『映画検定』が12月3日に再び実施される。前回の反省を踏まえた二回目の試験がどのような形で行われるのかは興味があります。まず変わったのは実施される場所が前回よりも増えているようなのです。たしか6月の時…

小津安二郎監督幻の作品『突貫小僧』(1929)。消失していたのが1988年に奇跡的に発見。

小津安二郎監督が1929年に製作したサイレント作品である『突貫小僧』はもともとは四巻物でした。おそらくは40分から50分くらいの作品だったのではないでしょうか。ただ現存するのは短縮版の15分バージョンのみということになります。この15分が…

『東京の女』(1933)女優、岡田嘉子の未来を暗示したような作品。彼女はその後、ロシアへ。

小津安二郎監督サイレント時代の1933年度作品。巨匠エルンスト・ルビッチの『百萬圓貰ったら』を劇中劇に挿入するセンスは昭和初期の軍国主義的時代において、ずば抜けて斬新だったのではないでしょうか。 またこのルビッチ監督作品から採りあげた「階段…